関西大学 KANSAI UNIVERSITY

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「性別欄のない履歴書」を提案 世界基準の視点で
「大学SDGs ACTION! AWARDS」ファイナリストに輝く

 2020年2月。関西大学の国際協力学生団体「International Cooperative Volunteer Student Staff:icvss(イクビス)」が、朝日新聞社主催の「大学SDGs ACTION! AWARDS 2020」でファイナリスト賞に輝いた。そこで彼女らが提案したのは、ジェンダー平等を目標にした「性別欄のない履歴書」。このプロジェクトに込められた彼女たちの想いとは――。

私たちはきっと、小さな「ジェンダー問題」を見過ごしている

 icvssは、関大生に国際協力・国際貢献への関心を拡げる活動に取り組む学生団体だ。メンバーの関心は、貧困や教育格差、差別問題などさまざま。その中で、なぜ彼女らは「ジェンダー問題」を選んだのだろうか。

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左から、加納 彩音さん、オンライン参加の井口 真歩さん、山﨑 陽香さん、下町 彩登さん。

[加納]

icvssには、大学内に「国際協力」の理解を広めるという目標があります。だからこそ、大学生にとって身近でわかりやすいテーマに取り組みたいと考えていました。学園祭で応援団の公演をみたのですが、学ラン姿の女性団員がステージに上がった際、「女の子がいる」と驚きの声が上がったことに疑問を感じたんです。その出来事をきっかけに、SDGs(※)の目標の一つでもある「ジェンダー平等」はとても身近な問題であるということに気付きました。

応援団に女性が入ってはいけないという決まりはないのに、珍しいという理由だけで注目される。些細なことかもしれませんが、男性にとっても女性にとっても、もしかすると自分らしい生き方を選びにくい環境なのかもしれない、と感じました。


[山﨑]

それとicvssのメンバー間で、どんな問題に関心があるのかをディスカッションしていた際、ジェンダー問題を挙げる人が多かったこともあります。確かに、日常の中で女性の立場が弱いと感じる場面もあれば、女性だから優遇されていると感じる場面もありました。

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※「SDGs(エスディージーズ)」とは

「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、国際社会共通の目標のこと。2015年9月の国連サミットで採択され、17つの目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットから構成されている。その17の目標の一つに「ジェンダー平等を実現しよう」という項目が設定されている。

活動の中で気付いた、男性側の「意識の薄さ」

 一方で、男性メンバーの下町さんは、ジェンダー問題がテーマに決まった直後は、自分ごととして捉えられなかったと言う。

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[下町]

ジェンダー問題という言葉だけでは、どこか遠い話のような気がしていました。ただ、メンバーと議論を重ねるうちに、「確かにそうだな」と思う部分も多く、やはりジェンダー問題については、男性側の意識が弱いと感じるようになったんです。


 下町さんはジェンダー問題への理解を深めようと、女性の社会進出に関するセミナーへの参加を決心した。


[下町]

ところが、会場で「女性限定のセミナーです」と入場を断られてしまったんです。以前なら「仕方ない」と何も感じなかったかもしれませんが、ジェンダー問題に取り組み始めていたからこそ、少し違和感を覚えました。男女の壁をなくすことが問題解決の糸口だと思っていたからです。そこでようやくジェンダー問題が身近なものであることに気が付きました。

大学生にとって一番身近なジェンダー問題は、"就職活動"だ

 そんなicvssのメンバーたちは、国際部の職員からの紹介がきっかけで「大学SDGs ACTION! AWARDS」を知る。それは全国の大学が参加する大きな大会。注目度も高く、自分たちの活動を学内外に知ってもらうチャンスと考え、エントリーを決めた。

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[山﨑]

大会に向けて情報を集めていると、就職活動においてジェンダーギャップを感じる人が多いことに気が付きました。例えば就職活動の際の服装について。男性はスラックス、女性はスカート、というスタイルがスタンダードのようになっていますが、それに違和感を感じている人も多かったです。


[加納]

就職活動は私たち大学生にとって重要で身近な関心事です。就職活動に関連するジェンダー問題を解決する企画をつくれば、より多くの学生がジェンダー問題に目を向けるきっかけになるのでは、と考えました。

世界との比較で見えた「日本の履歴書」が抱える課題

 就職活動に焦点を当て、調査と協議を重ねるうちに見えてきたのが、「履歴書」の様式だった。


[井口]

日本の履歴書は定型フォーマットとして、性別欄や証明写真の貼付欄があります。誰もが「当たり前」と思うかもしれませんが、実はアメリカやイギリスでは性別に関する項目どころか、決まったフォーマットがないんです。


[山﨑]

海外と日本で履歴書の形式が違うことに興味を持って調べるうちに、日本はジェンダーに対する意識で世界に後れを取っていることがわかりました。2019年12月に発表された「ジェンダー・ギャップ指数2020」のランキングでは、日本は153カ国中121位という結果でした。


[下町]

自分自身がもともとジェンダー問題に無関心だったこともあり、「当たり前と思っていたこと」がそもそも間違っている、ということがあり得るのだと感じました。そこで、私たちは「性別欄のない履歴書」の作成を決めました。


 icvssでは、性別の他に不要な項目がないか、逆に加えたい項目がないか、自分たちでディスカッションしながら関大生に対してもアンケートを行った。


[下町]

もともと、履歴書のフォーマットはJIS規格で定められたもので、雇用主側の都合で統一された形式です。学生にとって、自分の魅力を最大限に伝えられる履歴書とは一体どんなものなのか。学生目線で考案された履歴書があっても良いと思います。


 学生に対するアンケートでは、性別や証明写真のほか、配偶者の有無、扶養家族、学歴などが不要だという声が集まった。その意見を落とし込み、新しい履歴書のフォーマットを作り上げた。

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10倍の倍率を勝ち抜き、ファイナリスト賞を獲得

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 「性別なんかで判断されたくない!新しい履歴書およびエントリーシートを作ろう!」と銘打ったプロジェクトは、100件以上の応募があった「大学SDGs ACTION! AWARDS」の最終選考12組に残り、プレゼンテーションは山﨑さんが務めた。


[山﨑]

学生目線で作った履歴書、と言ってしまうと、それこそ学生都合のものと捉えられかねません。だからこそ発表の際は諸外国の事例も取り上げながら、国際的・社会的な問題であり、危機意識を持ってほしいということを伝えられるように留意しました。

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 結果は惜しくもグランプリを逃したものの、ファイナリスト賞を獲得。icvssの発表後に山﨑さんの手を取り、「ぜひ実現してほしい」と涙を流された審査員もいたという。社会には同じ意識を持つ人が存在することを実感した瞬間だった。

「自分の中の当たり前を疑う」、ジェンダー観の醸成

 メンバーは今回の活動を通じ、自身の中に「ジェンダー問題への意識」が芽生えたことが、大きな成長だと感じている。


[井口]

このプロジェクトを通じて、これまで何となく感じていた違和感と丁寧に向き合い、確かな問題意識を持てるようになりました。自分の固定観念に対しても「本当にそれは正しいのか」と立ち止まって考えることができるようになったと感じています。


[下町]

「自分の中の常識が正しいとは限らない」ということに気付けたのは、今回の活動に参加した成果です。私は理系の大学院生で、icvssのメンバーになったのは学部を卒業してからです。国際協力は自身の専攻分野との直接的な関係はありません。それでもこうして挑戦できたのは、学生活動が盛んで学びの幅が広い関西大学だからこそだと感じています。


[井口]

関西大学では、SDGsに関連した講演会やセミナーがたびたび開催されていたり、図書館内にSDGs図書コーナーがあったりするのも大きかったですね。自ら手を伸ばせば、学びを深めるチャンスがキャンパスのあちこちにあります。


[加納]

今回作成した「性別欄のない履歴書」は、企業や自治体など、実社会でも活用してもらえるようにいずれは提案したいと考えています。すぐにこの履歴書が採用されなかったとしても、この活動をきっかけにジェンダー問題に目を向ける人が増え、みんなが自分らしく生きることができる社会になっていくことを願っています。


 「性別欄のない履歴書」を、ジェンダー問題へ関心を向けるきっかけにしたい。そう願う彼女らは、引き続き履歴書の更新や普及に取り組み続ける方針だ。日本のジェンダー観は世界的に遅れを取っていることは事実だが、近年は社会問題として捉える声も大きくなっている。icvssの活動もその中の一つとして、ジェンダー観の醸成に貢献することが期待される。

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icvssメンバー(左から)
山﨑 陽香さん/法学部 4年次生
加納 彩音さん/政策創造学部 3年次生
下町 彩登さん/大学院理工学研究科 博士課程前期課程2年次生
オンライン参加:井口 真歩さん/政策創造学部 3年次生


※所属・年次は取材当時のものです。



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