KANDAI HEADLINES ~ 関西大学の「今」

夢は世界時価総額1位のビックカンパニー設立
~AWSとコミュニティー力でDX化を支援~

関大人

/株式会社 Serverless Operations 代表取締役 堀家 隆宏 さん(理工学研究科 2008年 修了)


 大学時代の軽音楽部での活動で得た、継続する力や仲間とのコミュニティーを楽しむことが今の自分につながっているという堀家隆宏さん。プログラミングでものづくりの楽しさを知り、AmazonのクラウドサービスAWS(Amazon Web Services)のコミュニティー活動を通じて、ITクリエイターとして最前線を走り続けている。「世界一の経済大国であるアメリカに行って、世界時価総額1位のビッグカンパニーを作ること」という大きな夢を追いかける。

「モテたい」から始まったプログラマーへの道

 堀家さんは、大学時代の文化会軽音楽部でのバンド活動がキャリアの原点だと振り返る。高校3年生の時、関西大学のパンフレットに載っていた軽音楽部の写真に心を奪われ、関西大学への進学を決めた。軽音楽部ではベースを担当し、日本のスカバンド等のコピーに明け暮れた。それはかけがえのない経験となった。

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音楽活動に夢中だった学生時代

 そもそも理系に進んだのは、物理系の大学教授である父親の強い希望だった。大学院では電気工学科で電磁波関連の研究に取り組み、修士論文の論題は「ガラス表面上十字導線配置による電磁波遮断に関する研究」。研究でのシミュレーションでプログラミングと出会い、その面白さに目覚める。「小学生の頃から工作や物を作るのが好きだった」という気質がエンジニアへの道へ。そして、「インターネットが流行れば、モテるんじゃないか」という不純な動機が決定打となり、卒業後はシステム会社への入社を決めた。

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関西大学卒業式での記念写真(左前方が堀家さん)

 そこではモバイルECサイト開発に携わり、仕事としての本格的なプログラミングの洗礼を受ける。「通勤電車で勉強して、家に帰ってからも自分のパソコンでプログラムを書いたりして、かなりのめり込みましたね」と当時を振り返る。この時期に培ったスキルと自ら進んで学ぶ姿勢が、その後のキャリアを大きく左右することになる。

コミュニティーが育んだ「人脈」

 転機となったのは、Webサイト構築システム(CMS)「WordPress」のオープンソースとの出会いだ。好きだった軽音楽部でのグループ活動に似ていると思い、WordPressの技術者コミュニティーにも積極的に参加。追加機能やプラグインを自作したり、発表したりする活動に没頭した。それは、自身の技術力の向上だけでなく、後の起業につながる重要な人脈を形成する場となった。
 元々持っていた起業への思いから2011年にフリーランスとして一度独立したが、「めちゃくちゃ失敗しました。仕事もなく貯金も尽きて、精神的に狂いそうでした」と苦笑いする。しかし、コミュニティーで知り合った経営者に拾われる形で、東京へ活躍の場を移す。そこでWebメディア関連のプロジェクトやマネジメントに携わり、AWSと出会う。当時、急増するWebトラフィックやサーバーダウンに対応できるAWSに可能性を感じた。
 そして堀家さんは、AWSが提供する約200種類のサービスの中でも「サーバーレス」というカテゴリーのコミュニティーに参加した。サーバーレスとは、サーバー構築の手間なくアプリケーションコードを書くだけで実装できる画期的なサービスで、大きな魅力を感じた堀家さんは、世界中のコミュニティーに積極的に参加するようになった。便利なツールやプロダクトを開発し、オープンソースで公開すると、それがNASAのプロジェクトで使われるなど海外でも人気を博して注目を浴び、2021年に世界中のAWSコミュニティーで多大な貢献をした個人に贈られる「AWSヒーロー」に選出された。これを機にアメリカでのAWS製品発表会に招待されるなど、各国のコミュニティービルダーとの交流を通じて最先端の情報に触れることができている。

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タイ・バンコクで開催された「AWS Community Summit APAC 2022」にAWS Serverless Heroとして参加

 AWSヒーローとしての活躍だけでなく、堀家さんは2018年に株式会社Serverless Operationsを設立し、起業家としての道を歩み始める。現在、事業の中心は、日本企業のDX推進において重要な「内製化支援」。日本ではシステム開発を外部に委託する文化が根強いが、それによって生じるトラブルや課題を多く見てきた堀家さんは、企業が自社内にエンジニアを抱え、内製化を進めることの重要性を強く感じている。「各業界におけるDX推進の流れもあり、外注せずに自社で開発するというトレンドや需要に合致しています」と、今後のビジネスの可能性に期待を寄せる。

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DX総合展「日経クロステックNEXT 東京 2024」に出展

頑固さと継続力、そして未来への挑戦

 堀家さんは自分自身を「良い意味でも悪い意味でも頑固で継続的だと思います」と分析する。最初は溶け込めなかったという軽音楽部での経験や、本当に必要なときにしか研究室には行かないという姿勢を貫いたことも、忍耐強さと頑固に頑張る姿勢として、今につながっているのではと振り返る。
 「自分で会社を経営してみると、エンジニア時代とは考える視点がまったく違うことに気づきました」と、経営者としての新たな視点を得た堀家さんは、IT業界の中心地であるアメリカで時価総額1位の会社を作ることを目標としている。そのための第一歩として、アメリカへの移住と、ニューヨークにあるコーネル大学への入学を目指している。

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 関西大学の後輩たちに向けて、堀家さんは「関西大学にはいろいろな種類、いろいろな性格の人がいて、そこに身を投じると毎日が刺激的です。そんな自由な環境の中で、自分の信念や筋を持ちながら、刺激を受けて楽しんでください。人の幅が大きくなると思います」とメッセージを送る。また、起業を目指す学生には「今の時代は、作ったアプリがSNSでバズって人気になることもあるし、昔より資金的なハードルも下がっているので、とにかく行動あるのみです。失敗を繰り返して学んでほしい」と背中を押す。学生時代に培った「継続する力」とコミュニティーでの「実践と発信」、何よりも「楽しむこと」。自らの力で未来を切り拓く堀家さんらしいアドバイスだ。


出典:関西大学ニューズレター『Reed』82号(2025年9月25日発行)
堀家 隆宏 ─ ほりけ たかひろ
1984年京都府生まれ。2006年関西大学システム理工学部卒業、2008年関西大学理工学研究科修了。文化会軽音楽部出身。卒業後、株式会社神戸デジタル・ラボに入社。その後、株式会社デジタルキューブで6年間勤務。2018年株式会社Serverless Operationsを設立。代表取締役兼ソフトエンジニアとして活躍し、2021年にAWS(Amazon Web Services)コミュニティーに貢献した個人に贈られる「AWSヒーロー」に選出された。