KANDAI HEADLINES ~ 関西大学の「今」

大阪マラソンが繋ぐ親子の絆 ~関大生と父の挑戦物語~

文化・スポーツ

 関西大学は2011年の第1回大会から大阪マラソンに協賛している。2026年の第14回大会は、教職員と学生合わせて40人が特別ランナーとして出場する。ランナーにも家族にも、沿道で声援を送る人々にも、それぞれの物語がある。大阪マラソンを目前に控え、関大ランナーに選ばれた学生に大会への思いを語ってもらった。
 第1回は、大阪マラソンへの出場をきっかけに、父との会話や一緒に過ごす時間が増えたというシステム理工学部 機械工学科1年次生の荒木孝太(19)さん。親子で挑む出場までの歩みを聞いた。

父は筋金入りのランナー

 荒木孝太さんは、柔らかな空気をまとった理系男子だ。父・優(ゆたか)さん(50)も、名前の印象通り穏やかな表情で家族を見守る、寡黙な父を思わせる。二人が肩を並べると佇まいもシルエットもよく似ている。

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荒木孝太さん(右)と、父・優さん

 2017年以降、毎年のように大阪マラソンに参加しているという優さん。日課は、夜9時に就寝し、翌朝4時に起きて実家近くの服部緑地内のコースを10km走る。これを週5日、黙々と続けている。ランニング歴は11年。筋金入りの健康ランナーだ。

父が走り始めた理由と、息子が見た背中

 優さんは40歳を迎える頃、健康診断の結果が気になったことを機に走り始めた。「高校生のとき、父親をがんで亡くしています。そのせいか、健康には敏感なのかもしれません」。
 孝太さんは、毎年マラソン大会に出場する優さんの背中を見て育った。そんな孝太さんも幼い頃から走ることは嫌いではなかったという。小学生の頃は、家族でキャンプに行くなど、父ともよく遊んだ記憶があると孝太さん。もともと好奇心旺盛で、虹の仕組みや(水蒸気が水に変わる)結露のことなど、気になることはすぐに父へ質問する子どもだった。物知りな父は、いつもわかりやすく答えてくれた。

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幼い頃の思い出を振り返る孝太さん(右)

 6年生のときには、父に誘われて兵庫・波賀トレイルラン(5km)の親子ペア部門に出場した。練習もできないまま本番に挑み、山の起伏に体力を奪われ、後半は父に背中を押されながらなんとか完走した。結果は20組中の2位。表彰された嬉しさは今も忘れていない。

すれ違いの日々と父の母校で始まる新たな挑戦

 中学・高校の6年間、孝太さんは、吹奏楽部でトランペットの練習に日々打ち込んだ。塾通いが始まると帰宅時間も遅くなった。その一方優さんは、早寝早起きの毎日。反抗期というわけではなかったが、すれ違いの生活で父と接する時間が減り、自然と会話も少なくなった。優さんにとっては、息子が成長していく姿をただ静かに見守るしかない時期だったのかもしれない。寂しくないと言えば嘘になるが、走る日課は欠かさず続けた。

 その後、父の母校でもある関西大学に進学した孝太さんは、大阪マラソンに在学生向けの関大ランナー枠があることを知った。時間に少し余裕ができたこともあり、父の背中を追うかのように応募を決めた。

 孝太さんの大阪マラソン出場が決まったときの気持ちを優さんに尋ねると、「やっぱりうれしかったですね」と照れくさそう。「私もいつかは孝太と同じ大会で走りたいと思っていましたが、走ることが習慣化していないとマラソン大会に出るような機会はなかなかないですよね。10年後くらいまでには・・・と思っていましたが、こんなに早くにチャンスがやってきてとてもうれしかったです」。

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父・優さんは、親子で大阪マラソン出場が決まったことに目を細める

 長くぎこちなかった親子の距離が縮まった瞬間だった。
 本番まで残り2か月を切った。本格的な練習はこれからだが、休みの日には父と一緒に走る機会も増えた。ペース配分や練習の仕方など、優さんはまさに最高の教材だ。マラソングッズをそろえるため、一緒に買い物にも出掛けた。

父の背中を追う挑戦、その先にあるもの

 孝太さんに、大阪マラソンの目標を聞いてみた。「まずは、けがなく完走したい」。
 優さんは、フルマラソンを3時間以内で走り切る「サブ3(スリー)」ランナーだ。孝太さんにとって走ることに関してはまだまだ父の背中は遠い。それでも完走し、走ることの楽しさを体感できたら、親子の心の距離はさらに近づくはずだ。

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(上)二人の母校である関西大学 千里山キャンパスでランニング
(下)大阪マラソンを走り抜く、孝太さんのランニングシューズ

 小学校6年のときに、親子で参加したトレイルランで父に背中を押してもらったように、いつかは父の背中を押すときがくるかもしれない。走ることが好きなDNAは、確実に引き継がれている。