お知らせ

「分析」と「解析」

2023.01.16

 私の研究分野は、化学物質の物理学的性質、化学的性質の解析評価であり、新規の機能性材料開発することを目的の一つとしております。先日、共同研究先企業の招待講演を受けた後の雑談で、私にとって興味深いお話をお聞きしました。理工学分野では、日常的にDataの「分析」とか「解析」という言葉を使用して実験ノートや報告書をまとめています。私にとっては、分析と解析は、少し異なる意味として使用している認識がありました。一方、英語論文にするときの表現では、「分析」も「解析」も「analysis」で訳されることについて話題となった。当たり前といえば当たり前ではありますが、日本語では、分析することは、その物事を分解して詳しく知ること、たとえば「化学分析」では目的物質に含まれる化学成分の種類、濃度などを測定して数値化することを分析するとして用いています。一方、解析するとは物事を解き開き、その仕組みを組織的、理論的に明らかにすることであり、たとえば「化学構造解析」では、機器分析で明らかになったいくつか数値(Data)から、物質の化学構造や組織の状態を明らかにすることとして使い分けています。英語論文では「analysis」の表現で十分であることから、この意味の広さ、深さが単純に合理的と考えました。しかし、和訳するときには注意が必要とも思われました。
 近年、情報科学におけるBig Dataなどの活用(分析・解析)が重要な研究課題として取り上げられています。一般的にBig Dataは、膨大な数値(Data)が情報として収集され、さらに、それらのDataは目的にしたがって分析、解析されて有機的に統合され、目的の事象の科学的な理論解明や解析の基礎研究に用いられています。小生は化学物質の「analysis」と付き合って長い年月が過ぎて、今その重要性を再認識した次第であった。

副学長 山本秀樹