人種差別・ヘイトスピーチ

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「ヘイトスピーチは言葉の暴力だ」

「ヘイトスピーチは言葉の暴力だ」

「○○人は△△だ……」「□□は╳╳しろ……」。路上やインターネットで誹謗中傷、攻撃する言葉などのヘイトスピーチ、あるいはネットを閲覧する人に偏見を生み、増長・拡大させようとするフェイクニュースなど、誰もが一度は目にしたことがあるはずです。

ヘイトスピーチで近年、特に社会問題となっているのは、人種差別や民族差別と結びついた憎悪表現です。世界には、人種差別、宗教差別、マイノリティや難民差別など、いたるところに差別が存在しています。

なぜ、このような差別はなくならないのでしょうか。人は「自己」(自分たち)と「他者」(彼ら)を区別し境界線を引くことによって、帰属集団のアイデンティティを確認する傾向があります。その「違い」にレッテルを貼り、ストレスを受けた時、それは他者に対する攻撃や排除の道具となりがちです。

国連の人種差別撤廃条約は、人種差別を扇動する活動は法律で処罰すべき犯罪だと宣言、条約締結国の人権状況に関して人種差別撤廃委員会が勧告を行います。日本にもヘイトスピーチの対処に関して勧告が出されました。2016年にヘイトスピーチ解消法が制定され、国や地方公共団体が不当な差別的言動の解消に向けて取り組むことが定められました。

ヘイトスピーチは言葉による暴力であり、受けた人は心に深い傷を負います。そのような差別表現を目にしたら、理不尽な差別は受け入れないという毅然とした態度を取ってください。ヘイトの対象になっている人たちが置かれている状況、歴史、現在何が起きているのかを学び、理解してください。人々が憎悪を煽り立てる言葉に扇動され、取り返しのつかない悲劇を引き起こした例は、近い過去にもあります。人種差別やヘイトスピーチから生まれるものはヘイトスパイラルでしかありません。ヘイトが支配する社会では誰もが幸せにはならないのです。今、私たち、一人ひとりの立ち位置が問われています。

「ヘイトスピーチや
フェイクニュースにはNOと言おう。」

在日韓国・朝鮮人問題

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「 在日コリアンも私たちと同じ日本の市民なのに……」

「在日コリアンも私たちと同じ日本の市民なのに……」

在日コリアンとは、主に降伏文書調印(1945年9月2日)以前に日本に移り住んだ朝鮮半島出身者、およびその子孫のことで、いろいろな事情で戦後期に日本に移住してきた人々も含まれます(いわゆるニューカマーは含みません)。

韓国併合(1910年)により日本国籍所持者とされた朝鮮民族は、戦後の日本国憲法施行前日の外国人登録令(1947年5月2日)施行により、「当分の間外国人とみなす」とされました。外国人登録令の「国籍」欄には「朝鮮半島出身者」として「朝鮮」と記載されました。その後、「韓国」国籍への書き換えだけが認められました。1952年にはサンフランシスコ講和条約の発効に伴い、在日コリアンは国籍選択の意向を聞かれないまま「外国人」とされ、「国籍」欄記載が「朝鮮」の人は無国籍のままです(朝鮮民主主義人民共和国の国籍ではありません)。

戦後、在日コリアンは日本国憲法の枠外に置かれ、ながらく国民健康保険や国民年金にさえ加入できませんでした。植民地時代には「日本国民」として苦労を重ねたのに、戦後日本は在日コリアンをいろいろな権益から排除してきたのです。

今では在日コリアンのほとんどが日本で生まれ育ち、日本語を第一言語として暮らしています。そのため、在日コリアンも日本の地に愛着を抱き、今後とも日本社会で生きていく人々です。にも関わらず、一部の心無い人々が「ここは俺たち日本人の土地だ」「文句があるなら日本から出ていけ」などと、在日コリアンに対して排他的な罵声を浴びせかけています。

このような非情な言葉は、在日コリアンの心をひどく傷つけてきました。在日コリアンも日本の社会を構成する立派な市民です。異なる民族の人々の人間的尊厳を傷つけず、市民的権利を侵害しないようにしてこそ、日本を多民族・多文化共生社会に発展させることができるのではないでしょうか。

「在日コリアンの歴史を知り、
共に生きる社会を。」

部落差別

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「『あそこは部落』ってネットに書き込みがあったよ」

「」

「部落問題」を知っていますか?「部落って何?」と思う人のほうが多いのではないでしょうか。

江戸時代に、武士・農民・町民とは別の身分とされた人たちが住んでいた地区出身、あるいは在住しているというだけで、いまも偏見や差別が存在します。これは、日本特有の人権問題です。

長い歴史のなかで、このような差別撤廃に向けての活動が続けられています。その成果として、現在は表立った差別は少なくなりました。

しかし、目に見えない形で部落差別は残っています。それは、結婚や土地など利害がからんだときに明らかになることがあります。「結婚や、その土地に住むと自分も部落とみなされるかもしれない」という「みなされる差別」を避けるのです。

SNSでの悪意ある書き込みも社会問題となっています。あなたは、「あの地区は怖い」という書き込みを見たら、どうしますか?気になって検索するのではないでしょうか。そして、上位の情報を信じてしまいませんか。ベストアンサーに選ばれているのは、実は悪意ある情報の場合もあるのです。

このような状況を踏まえて、部落差別解消法が2016年12月に施行されました。「部落差別は許されないものである」と初めて明文化された法律です。

部落差別は決して過去の問題ではありません。また、隠すべきものでもありません。根強く残っている現実を知り、「なぜそんなことがおこるのか。なぜいまも残り続けているのだろう?」と考え、学んでいくことが大切です。

今も残る差別の解消のために活動している方々はたくさんいます。また、学内や各自治体にも学べる場所はあります。部落出身の人と直接出会い、話を聞き、自分自身の問題としてとらえ、「差別をしない、させない」という意識で行動していきましょう。

「差別をしない・させない。」

被災者差別

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「放射能に汚染されるのは怖い」

「」

2011年3月11日、東日本大震災が発生、巨大津波が東北地方太平洋沿岸部を襲いました。福島第一原子力発電所では安全上必要な機能が失われて、高濃度の汚染水が流出、放射性物質が大気中に放出されるという大事故が起きました。

放射線量が高い区域に住む人たちは立ち退きを指示され、区域外へ、あるいは福島県外へと避難。その避難先で車に落書きされたり、「放射能に汚染されているから来るな」「福島へ帰れ」などと言われたりし、傷ついた人は少なくありません。

なぜ、このような心ない言動をしてしまうのでしょうか。

その要因として、次の三つが考えられます。

①放射能や放射性物質に関する科学的知識のなさ。日本で初めての事態が起きて、放射能は恐ろしいという考え方から差別が固定化。

②低線量放射線被曝では、害があるのかどうかが分からないというあいまいさ。どちらが正しいとも断定できないという不安から生じる差別意識。

③あいまいなものはあいまいなままで、という考え方は、社会では受け入れられません。物事を単純化し、白か黒かはっきりさせようとします。SNSでは極端な意見でも「いいね」が多いと、それが正しいことになります。そうすることから生じる偏見。

メディアも含めて、社会に流されている情報をうのみにしないことが肝心です。物事をきちんと見ようとしないことが偏見を生み、それが拡散することによって見ず知らずの人を傷つけ差別につながっていく危険性が潜んでいることに気づきましょう。

放射能問題にしても、現実をまず知る。そして、その問題に対して自分で問いを立てて考えていく。その繰り返しによって物事の本質に近づいていき、根拠のない差別意識は起こらなくなります。大学は、その学びの場です。人それぞれの置かれている立場を想像する力を育てましょう。

「情報に踊らされず、
自分で考える力を。」

情報BOX

在留外国人数は増加傾向
2020年には289万人になりました

在留外国人は年々増えてきており、2020年末時点の在留外国人数(3カ月以下の短期滞在者を含めない)は約289万人となっています。ただコロナ禍で、前年に比べ約4万6千人減少しました。国・地域の数も約200に及び、実に多種多様な人たちが日本に住んでいるのです。在留資格も、従来の「永住者」「特別永住者」「留学」「技能実習」「技術・人文知識・国際業務」などに加え、「介護」が2018年9月に新設されました。

このうち「特別永住者」とは、第二次世界大戦での日本の降服文書調印の日(1945年9月2日)以前から引き続き日本国内(内地)に居住している朝鮮人・台湾人およびその子孫のことです。

では、外国人にとって日本は住みやすいでしょうか。法務省の「外国人住民調査報告書」(2016年度)によると、「外国人だから」という理由だけで次のような差別を受けた経験のある人が少なくありません。

  • 外国人であることを理由に入居を断られた…… 約40%
  • 外国人であることを理由に就職を断られた…… 約25%
  • 日本人より賃金が低い…………………………… 約20%

この他、お店やレストランへの入店を断られたり、侮辱されたり、インターネットで差別的な書き込みを見て不快な思いをしています。

これらの回答のなかには、「日本で生まれ、育ち、心のよりどころも故郷も日本。なのに、目に見えない差別の圧迫を感じることがある」との声を寄せた在日韓国人の人もいます。

このような外国人に対する差別や偏見をなくすために、国や地方公共団体は様ざまな取り組みをし、外国人のための人権相談窓口も設けています。

しかし、最も大切なことは、私たち一人ひとりの意識改革ではないでしょうか。文化や生活習慣の違いを認め、お互いを尊重するという気持ちが大事です。

関連資料紹介

ヘイト・スピーチとは何か

師岡 康子 著/岩波新書2013年

ヘイトスピーチに関わる事件とその背景、諸外国での法的対処、日本での表現の自由とヘイトスピーチの法規制をめぐる議論などが紹介され、差別のない社会をめざして法制度構築に向けた提案がなされています。弁護士である著者による本書は、法と人権をベースにしたヘイトスピーチ理解のための入門書といえます。

在日朝鮮人
歴史と現在

水野 直樹、文 京洙 共著/
岩波新書2015年

「在日朝鮮人をめぐる諸問題への理解を深めるのに少しでも役立てば」(まえがき)との願いから刊行された本書は、在日朝鮮人をめぐる歴史から現代の問題までカバー。近代朝鮮史研究者の水野直樹(京大名誉教授)、政治学者の文京洙(立命館大教授)による共著で、その記述は学術的にも十分に信頼できます。

見なされる差別
なぜ、部落を避けるのか

奥田 均 著/解放出版社2007年

これまでの部落差別をはじめとする差別の解消の取り組みを経て、今の差別は見えにくくなっています。そんな今の部落差別の状況(「部落出身者と見なされたくない」から部落問題を避ける、という差別の現実)をわかりやすくまとめてある本です。

しあわせになるための「福島差別」論

池田 香代子 ほか 著/
かもがわ出版2018年

福島をめぐる様ざまな差別を踏まえて、当事者や活動している人たちが何をどのように見ているのか、どうすればいいのかが示唆されています。原発事故以降、福島の人々に対して関わってきた多岐にわたる16人の論者が、福島について考えた本という意味で参考になります。

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