神経発達障害

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「分かってもらえない辛さを知ってほしい」

「分かってもらえない辛さを知ってほしい」

授業に集中できないほど教室のざわつきを辛く感じる、約束を忘れて信用されなくなった、口頭での説明が理解しづらい、読み書きの誤りが多い……。

こうした例は、努力や我慢が足りないと捉えられがちです。誰しも弱みと強みがあり、弱みを克服する努力や強みで弱みを補う、 強みを生かせる選択をする、などをしつつ過ごしています。 しかし、弱みが障害によるものであると、周囲の理解なしには対処が難しい場合もあります。 特に神経発達症では、何に困っているのか理解されにくく、誤解を招いたり、心に負担を抱えていたりします。

神経発達症には、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症などがあります。 また、これらの症状を複数抱えていることもあり、個人差がみられます。 各障害の原因は明らかにされていませんが、高次脳機能の発達に偏りや遅れ、歪みが生じ、 生活上のつまずきを引き起こします。高次脳機能とは、読み・書き・計算などのスキルの運用、 物事を状況に応じて効率よく効果的に対処する遂行力、 記憶力や社会性など、人がより良く生きていく上で重要となる様ざまな機能をいいます。

「合理的配慮」という言葉を耳にする機会も増えてきたのではないでしょうか。 学校や職場、公的機関など、障害のある人のあらゆる生活場面に求められる支援のことです。 授業への参加しやすさ、働きやすさ、情報入手のしやすさなどが挙げられ、物理的環境の整備のみでなく、 社会の認識や配慮の在り方に対しても求められるものです。

症状には個人差があるので、必要な合理的配慮も人それぞれです。身近に気にかけている人がいれば、 どのような状況・内容の時につまずきやすく、どんな時に対応できているのか、 分析的に捉えると、その人に必要な合理的配慮の形が見えてきます。まずは、 知ろうとすることが大きな助けになるはずです。

「個人差のある症状。
サポートが必要な時もある。」

うつに対する誤解と理解

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「頑張れない僕はやはりダメな人間なんだ…」

「頑張れない僕はやはりダメな人間なんだ…」

大学に行く気になれない、課題に取り組む意欲が湧かない、 気が滅入る、全てがダメに思えてくる。 程度の差こそあれ、皆さんも一度はそんな状態になったことはありませんか。 これはいわゆる「うつ状態」と呼ばれるものです。

典型的なうつ状態(うつ病)になると、気持ちが沈み何をしても喜びや楽しさが感じられず、 食欲もなく、眠れず、急に不安に襲われたり、 疲れやすく気力も出ず、自分が無価値で悪い人間のように思えて集中力もなくなり、 自殺を考えることもあります。 几帳面で真面目で責任感が強い人に多く、憔悴していく姿には周囲の人も心配になるでしょう。

一方、大学や職場ではうつ状態でも、その場を離れたら一転して元気になり、 旅行やスポーツもできて食欲や睡眠にも問題がない、褒められたら素直に喜ぶ、 という場合もあります(非定型うつ病:俗称・新型うつ病)。 人の目を過度に気にして、些細な一言も批判されていると受け止めやすく、 深く傷つきやすい人に多いのですが、 この場合は周囲からは甘えや怠けと誤解され、非難されがちになります。

うつ状態といっても、表れ方には幅があります。 原因も、体質や遺伝などの生物的要因、性格や考え方などの心理的要因、 環境や状況などの社会的要因が複雑に絡み合い、治療法も人によって異なります。

以上を踏まえて、「うつかもしれない」と相談された時には、 安易な決めつけはもちろん、善意であっても安直に「頑張れ」と言うのは控えましょう。 本人からすると、既に頑張り尽くしたのに、まだ足りないと責められたように感じて、 孤独感を深めるかもしれません。まずは親身に最後まで話を聞きましょう。 非難されずに話を聞いてもらえるだけで、孤独感も和らぐかもしれません。その上で、 必要そうであれば、専門家の助けが得られる学生相談・支援センターやクリニックを勧めてみましょう。

「決めつけはダメ。
落ち込み方も人それぞれ。」

ジェンダー問題

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「『男だから』『女だから』と制約しないで」

「『男だから』『女だから』と制約しないで」

「男だから○○すべき」「女だから△△すべき」と言われたり、思ったりしたことはありませんか。

ここで、デート費用の負担について昨今の学生事情を見てみましょう。 「割り勘」あるいは「代わりばんこ」と考えている人は、 女子学生が圧倒的に多かったのです。男子学生は、「男が払うべき」派が多数でした。

日本にはジェンダー差別がまだまだ残っているとはいえ、 社会は変わりつつあります。女性の管理職が増えてきていることや男性の育児休業などは、 その一例です。いま、社会は過渡期にあります。「男だから」「女だから」 というだけで枠内に閉じ込められ、やりたいことに制限がかかるのなら、社会を変えていきましょう。

「男だから」「女だから」と、自分も他人もしばらないことが大事です。

では、どうすれば、そういう考え方から解放されるのでしょうか。

小さい頃から、男の子と女の子とでは育てられ方が違うと思います。 男の子の多くは、「社会に出て勝ち抜ける人になりなさい」と育てられてきたのではないでしょうか。 それが知らず知らずのうちに、プレッシャーになっていることがあります。 そのことを自覚しましょう。

女の子は、「やさしくなりなさい」と育てられた結果、 我慢して抑圧された気持ちで生きているかもしれません。

そういったプレッシャーから自由になり、性別に関係なく自分のやりたいことをやっていいのだ、 ということに気づいてほしいと思います。

これからは、あなたたちに性別の規範がかかっています。 もちろん、「らしく」を阻害するわけではありません。 そこに潜む問題点を見つめ、自分自身の意識を、そして社会を変えていきましょう。

「性別にとらわれず、
やりたいことをやろう。」

セクシュアル・マイノリテイ

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「『普通』の押しつけが、人を苦しめることもある」

「『普通』の押しつけが、人を苦しめることもある」

学生時代は、周囲の人と同じでいたい、仲間外れになりたくない、 という気持ちを強く持つ時かもしれません。 多くの性的マイノリティの人たちにとって、 学生時代は自分のジェンダー・アイデンティティや好きになる人の性別を理由に、 周りから「普通じゃない」と言われたり、 いじめや暴力を受ける可能性に気づく辛い時代でもあります。

日本では誰でも生まれた時に男女一方の性別を与えられ、 何らかの形で「性的」な存在として生きていきます。 その形は人それぞれで、多様です。 しかし、日本社会では長く「異性愛」と「シスジェンダー」 (生まれた時に与えられた性別に違和感がない人)が 「当たり前」「普通」とされ、それ以外の生き方やアイデンティティ、 自己表現の仕方は「変なもの」「おかしいもの」として差別されてきました。

その差別は、社会環境や法律などにも反映されています。 戸籍上の性別が男女2つしかなく、しかも変更が難しいこと、 結婚する権利が同性カップルには認められていないことなどです。 日常生活でも、みんなが異性愛者、シスジェンダーであるという前提で話をしたり、 商品や施設、ルールが作られたりすることで、 性的「マイノリティ」の人たちが居場所のなさを感じることが多くあります。

カミングアウトは、とても勇気のいることです。 もし、カミングアウトを受けたら、その友人に信頼されているのです。 「話してくれてありがとう」と伝えられるといいですね。 しかし、ここで大切なのは、カミングアウト=そのことを他の人に話してもいいわけではない、 ということです。 本人の許可なく周囲の人に性的マイノリティであると告げれば(「アウティング」する)、 本人が辛い思いをすることもあるので、絶対にやめましょう。

「LGBTQ」や「性的マイノリティ」という言葉自体は、 社会で広く知られるようになってきました。 その言葉と一緒に、多様な性の生き方が当たり前にある社会が広がってほしいと思います。

「多様な性の生き方が
当たり前にある社会。」

エイズ・HIVに対する
偏見と差別

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「HIVに感染したかも…でも検査は怖い」

「HIVに感染したかも…でも検査は怖い」

エイズ(後天性免疫不全症候群)は、HIV(ヒト免疫不全症候群)に感染した人が、 一定の潜伏期間を経て発症する病気です。HIVに感染すると、 身体の免疫システムが徐々に低下し、通常ではかからないような感染症など様ざまな症状を発症します。 この状態をエイズといいます。

かつては「死の病」と恐れられていましたが、現在では医療技術も進展し、 副作用の少ない治療薬も開発されています。 HIVに感染していることが分かれば薬を飲み続けることにより、 エイズ発症は防げます。糖尿病などと同じような慢性病の一つになっているのです。

HIVの感染力は弱く、また感染経路も「血液感染」「性感染」「母子感染」の三つに限られています。 HIV感染のほとんどが性感染ですが、コンドームを正しく使用すれば、 HIV感染者と性行為をしても感染することはありません。

欧米諸国では21世紀に入って新規感染者が大幅に減少しているのに比べ、 日本では減っていません。「無関心」が、感染を広げます。 正しい知識を身につけることが、自分自身をそして大切な人を守ることにつながるのです。

もし、「感染しているかも」と不安になったときは検査を受けましょう。 保健所で、匿名も可能です。 ただし、抗体ができるのに約1か月かかりますので、2か月ほど後に受けるとよいでしょう。 不安で検査に行くのが怖いかもしれません。 しかし、検査することによって、周りに感染させないことが第一です。

もし、友達や恋人からHIV感染者であることを告げられたら、 「言ってくれてありがとう」とまず伝えましょう。 「気にしないから」と言われると、逆に「分かってもらえてない」と傷つく場合があります。 「相談してくれてありがとう。何かできることがあれば言って」と、 受け止める側の態度が大事です。

「言ってくれて、ありがとう。」

情報BOX

障害のありか

自治体などの公用語として「障がい者」と、ひらがな表記を用いるところが多くなってきました。どうも「害」の字が、ひっかかるようですが、「障害」という言葉自体に罪はなく、問題は、その「ありか」をめぐってのことと思われます。

「障害」とは、辞書によると「さわり、さまたげ、じゃま」という意味で、確かに、これらの「ありか」を「(当事)者」という個人だけに押し付けるのはフェアではありません。似たような言葉に「障壁(バリア)」がありますが、これは、周囲の環境に問題があることを意味し、これらを取り除くことを「バリアフリー」といいます。さらに、進んで最初からバリアのない設計をする合理的な「ユニバーサル・デザイン」という考え方も生まれました。

このように、「障害のありか」は、時代とともに治療やリハビリといった医療中心の「個人モデル」から制度や環境の整備に目を向ける「社会モデル」へと大転換していったのです。その背景には、障害者たちの当事者運動が、障害の有無にかかわらずだれもが住みやすい共生社会づくりを「市民権(シティズンシップ)の問題」として問うてきた歴史があります。

国連ではこの「社会モデル」の考え方に立った「障害者の権利に関する条約」が2006年に採択され、日本でも「障害者差別解消法」がようやく2013年に成立しました。しかし、障害者が暮らしやすい社会づくりはまだまだです。なぜなら街をデザインする人、ビルを建てる人、教育現場で働く人、企業で働く人のほとんどが健常者だからです。障害者運動に「私たち抜きに私たちのことを決めないで」というスローガンがあるように、これから持続可能な社会をデザインしていくには、障害当事者の参画が不可欠でしょう。みんなで、「社会にある障害」をなくしていく時代の到来です。

自分は「男性でも女性でもない」
X ジェンダーの人たちの気持ち

人は、男性か女性のどちらかであるとされています。 あなたは自分の性別に違和感をもったことはありませんか。「男あるいは女として育ってきたけれど、 気持ちはしっくりこない」と日頃感じている人もいるのではないでしょうか。

性の揺れを自覚し、「自分は男でも女でもない」という性自認をもっている人たちは日本ではXジェンダーやノンバイナリーと呼ばれ、次の4つに大別されます。

  • 中性……男性と女性との中間
  • 両性……男性でもあり、女性でもある
  • 無性……男性でもない、女性でもない
  • 不定性…性自認が揺れ動いている

X ジェンダーと自認している人たちは、どの程度いるのでしょうか。

「東京レインボープライド※2017」の来場者アンケート調査(回答数755)によると、性別違和感を持つ来場者(来場者全体の30%強)のうち、18.5%がX ジェンダーと回答しました。X ジェンダーの人たちにとって、男性か女性かの二者択一の世界は生きづらいものです。例えば、書類の性別欄にどう書けばよいか分からない、自分自身のよりどころをなくしそう、など、様ざまな場面で壁にぶつかります。

X ジェンダーに限らず、セクシュアルマイノリティの人たちは生きづらい思いをしています。LGBTQという言葉を聞いたことはあるでしょうか。「Q(Queer 又は Questioning)」は、L(レズビアン)・G(ゲイ)・B(バイセクシュアル)・T(トランスジェンダー)のいずれにも当てはまらない人のことで、X ジェンダーも含まれます。

人の性のあり方は様ざまです。一人ひとり違って当然だということを認識しましょう。

※東京レインボープライドは、性的指向および性自認のいかんにかかわらず、全ての人が、より自分らしく誇りをもって、前向きに楽しく生きることができる社会の実現をめざしているNPO 法人。毎年、世界各地でプライドパレードが開催され、日本では東京代々木公園で行われている。

関連資料紹介

新版 子どもの発達障害事典

原 仁 編/合同出版2019年
新版 子どもの発達障害事典

神経発達症に関し、医療と教育の視点から、 網羅的かつ具体的に解説がなされた実用的な書籍。 「子ども」とはありますが、各神経発達症の基本的な症状やかかわりの視点を理解するのに有用です。

拝啓、アスペルガー先生

奥田 健次 著/飛鳥新社2014年

不登校や保健室登校、親や友達への暴力、 読みが苦手…医者にも学校にも見放された子たちが劇的に変わった! 笑って泣ける、"ありえへん"カウンセリング。 「本当に、奇跡のようです」と、 著者にカウンセリングを受けた子どもたちの親がそう語る、 ドラマよりドラマチックな実話です。

ツレがうつになりまして。

細川 貂々 著/幻冬舎文庫2009年

ドラマ化や映画化もされた「ツレうつ」の原作。 うつ状態がどのように発現し、 それがどんな風に悪化したり改善したりするのか、 共に生活する人間にはそれがどのように映るのか、 どのように回復していくのか。 各エピソードが漫画で描かれているため、 そういった一連の流れや動きがイメージしやすい作品です。

男も女もみんなフェミニストでなきゃ

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 著、
くぼた のぞみ 翻訳/河出書房新社2017年

TEDスピーチを文章化したものなのでボリュームは100ページもなく、 明快な語り口でするすると読めます。 聞き手をリラックスさせる穏やかな話し方からはオープンな人柄が伝わってきます。 これならフェミニズムに抵抗を示していた人たちにも受け入れられるでしょう。 フェミニズムを理解するための最適の1冊。

教養のための
セクシュアリティ・スタディーズ

風間 孝、河口 和也、守 如子、赤枝 香奈子 著/
法律文化社2018年

本書は、性的指向や性自認など、いわゆるLGBTに関わる問題を扱っているだけなく、 恋愛や生殖、HIV/AIDS、性暴力、性産業など、 人間の性という現象と営みの問題を扱ったセクシュアリティ研究への 入門書的テキストです。「LGBT」を超えて性の多様さやそれをめぐる様々な文化、 歴史、社会問題について学ぶには格好のテキストです。

LGBTと家族のコトバ

LGBTER 著/双葉社2018年

国会議員の「生産性がない」発言や、 『新潮45』の記事などで議論を巻き起こしたLGBT問題。 本書は「娘が息子になった家族」や「かつては母だった父」、 「ゲイ3人で同棲するカップル」など、 LGBT当事者とその家族ら15名の赤裸々な半生を掲載。 「家族とは?」「幸せとは?」と問いかける珠玉のインタビュー集。

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