パワー・ハラスメント、
アカデミック・ハラスメント

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「『イッキ飲ませ』はやめてほしい」

「 『イッキ飲ませ』はやめてほしい 」

ハラスメントは、相手に不快感や嫌な思いを抱かせたり、脅威を与えたり、学習や働く意欲を失わせる「人権侵害」です。おもに、上下関係、強者と弱者という関係のなかで、弱い立場の人に対して行われがちです。

パワハラ(パワー・ハラスメント)、アカハラ(アカデミック・ハラスメント)という言葉を聞いたことがあるでしょう。

パワハラは、大学生活においてはクラブの先輩・後輩、あるいはコーチ・監督と部員との間で生じやすくなります。 コンパなどで、「イッキ、イッキ!」の掛け声とともにアルコールを無理強いするのは、まさにパワハラに当たります。

「えっ、パワハラ?」「そんな大げさな」と思うかもしれませんが、そこに一番の問題があります。「嫌がらせ」だと自覚せずにやっている。周りもそんなものだと容認している。それが問題なのです。

アカハラは、指導教員と学生間や教員間といった上下関係において起こります。大学教員は、学生に対して単位認定権という絶大な権力を持っています。 この権力が適正に行使されるなら問題はないのですが、これが濫用されると、アカハラになるのです。 教員間でも、一方が指導的立場にある場合、他方に対して権力を持つことになります。

教員やクラブの指導者には学生時代に指導教員から強い叱責を伴う指導を受けてきたり、監督・コーチから暴力的な指導を受けたという経験を持つ人もいます。 そのなかには、自分の経験と同じような指導をする教員や指導者が少なくないといえます。パワハラ、アカハラに当たるという自覚がないのです。

もし、パワハラやアカハラにあっていると感じたら、一人で悩まないことです。 大学には、ハラスメント相談室があります。はじめは匿名でも受け付けてもらえますので、まず相談しましょう。

「一人で悩まないで。まず相談を。」

セクシュアル・ハラスメント

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「セクハラの基準はあいまい?」

「セクハラの基準はあいまい?」

「どこまでがセクハラ(セクシュアル・ハラスメント)で、どこからがセクハラではないのか、その基準があいまいだ」 「まったく同じ内容の性的なジョークをAさんに言っても問題にならなかったのに、Bさんに言ったらセクハラだと抗議された。セクハラの定義は非常に恣意的だ」。 セクハラについては、こうした批判が多くあります。

しかし、性に関する感じ方は、人それぞれで、とても多様です。ある性的ジョークを笑う人もいれば、それをとても不快に感じる人もいるのです。 これは良い悪いの問題ではなく、それぞれの個性なのです。

だから、相手が嫌な思いを抱いたらセクハラとなります。相手が嫌がっているなと感じたら、即やめる。 その場の空気を読み、相手の嫌がることはしない。つまり、セクハラとは相手の嫌がる性的な言動なのです。この定義は、あいまいでも、恣意的でもありません。

そうすると、セクハラはモラルの問題なのでしょうか。そうではありません。セクハラは相手の人格を傷つける人権侵害であり、単なるモラルの問題ではないのです。

セクハラは男性が加害者、女性が被害者というケースが多いとはいえ、女性から男性、同性間での場合もあり得ます。 アカハラ、パワハラ同様、権力関係の下で生じがちです。そこには、男性の中にある女性への見下し意識も含まれます。 男性が女性を対等視せず、場の雰囲気を和ませる存在、性的対象としてしか見ていない場合などです。 つまり、お互いに尊重し合い対等であると考えている関係のもとでは、セクハラは起こらないのです。

性被害を受けた場合、個人的なこととして我慢することはありません。 友達に相談するだけでなく、大学の相談窓口も訪れてください。相談窓口は本人の意向を尊重して相談にあたります。

「相手が嫌がることはしない。」

いじめ、いじり

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「ちょっといじっただけ、本気にするなよ」

「ちょっといじっただけ、本気にするなよ」

「いじめなんて大学生には関係ないよ」。そう思う人も多いかもしれません。文部科学省の調査によると、深刻ないじめが一番多いのは中学1年生で、 学年が上がるにつれて少なくなっています。小学校では良くも悪くも担任の先生が子どもたちの人間関係を調整しており、大きなトラブルになりにくいのに対し、 中学校では子どもたち自身で人間関係のトラブルを解決していかなければならず、それが深刻ないじめという形で現れます。 人間関係を上手に作れるようになるにつれて、いじめも減少していきます。

また、集団の凝集性が強い場合にもいじめは起きやすくなります。 高校でいじめが相対的に少ないのは、こういうことからです。さらに大学ではクラスの枠がありませんので、 いじめは起きにくいでしょう(部活などでは起こりやすいかもしれませんが)。

確かに「いじめ」は少ないかもしれませんが、大学生によくみられるのは、 「いじり」ではないでしょうか。大学には、多様な価値観、社会的背景を持った学生が集まってきます。 それを自分の価値観から優劣で判断して、馬鹿にしたり、からかったりしていることはないでしょうか。 相手が嫌がっても「ちょっといじっただけ、本気にするなよ」といじられた側が悪いかのような雰囲気が生まれることもあります。 いじられたほうは、その場の雰囲気から抗議もできず、 グループ内で損な役回りを背負いがちです。逃げ場がない分、 「いじり」は「いじめ」よりたちが悪いともいえます。

大学で、自分とは違う考え方、感じ方を持った人と出会えるのですから、 その出会いを大切にしてほしいと思います。 自分のこれまでの狭い価値観にとらわれるのではなく、 多様な生き方を尊重し、違いを認め合える人間関係をつくれたら、 だれもが安心した大学生活を送ることができ、一人ひとりの世界も広がっていくでしょう。

「自分の価値観だけで判断せず、
違いを認め合おう。」

ストーカー行為

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「『いつ会える?』のLINEが毎日きて…」

「『いつ会える?』の
      LINEが毎日きて…」

LINEを特定の人に連続して送っていませんか?これはストーカー行為にあたるかもしれません。 「えっ!?」と意外に思う人もいるのではないでしょうか。明らかに拒まれたり、長期間返信がなかったりするのに連続してメッセージ送信を行うことは、 ストーカー規制法の規制対象行為です。近年のSNSを利用したストーカーは、次の2つに大別できます。

 ①カップルが別れたとき プレゼントした物やお金を返してほしいと何度も連絡するなど。

 ②つきまとい つきまとったり、待ち伏せしたり、押し掛けたりするなど。

自分の言うことを相手は聞いてくれるべきだとの思い込みが強い人ほど、ストーカーになりやすいといえます。 相手には相手の感情がある、ということが認められないのです。カップルになると、そうなってしまう人もいます。自立できていないのです。

「ひょっとして」と思い当たる人は、自分の行為を振り返ってみましょう。 自分で気づくことが第一です。そして、「人の気持ちを尊重する」ことを学んでください。 それが基本です。逆に、ストーカー被害に遭っているときは、ためらわずに大学の相談窓口や警察に相談しましょう。 被害者は、女性に限るわけではなく、男性もなり得ます。 危険を感じたら、すぐ相談してください。なお、被害状況は記録しておきましょう。

相手が知り合いの場合は、「ストーカー行為はやめてください。 次に同じことをしたら、警察に言います」と、拒否の意思をはっきり伝えることが大事です。 それによって、「そんなに怖い思いをさせていたのだ」と相手が気づくこともあります。

大学は、いろいろな人と出会える場です。豊かな人間関係を築き、 多くの本を読んで人間性を高めていってください。 そして、加害者にも被害者にもならない、お互い自立した関係を築いていきましょう。

「人間性を高め、
自立した人になろう。」

デートDV

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「それってデートDVでは?」

「それって
      デートDVでは?」

相手のことは何もかも知っていたい。自分の思いどおりにしたい。 恋愛をしていれば、よくある気持ちです。 しかし、大切な人を支配することは「デートDV(ドメスティック・バイオレンス)」です。

デートDVは、恋人同士で起きる暴力を指す言葉で、たとえば次のような行為が該当します。

 ①殴る、蹴る、物を投げるなどの
「身体的暴行」

 ②無理やりおごらせるなどの
「経済的圧迫」

 ③性的行為の強要、避妊しないなどの
「性的強要」

 ④暴言や長期間無視するなどの
「心理的攻撃」

 ⑤交友関係や行き先、電話、LINE・メール等を監視したりするなどの
「行動の制限」

DVのサイクルにはまると、被害者は「自己」を喪失して、 「逃げる」「別れる」気力さえ失ってしまいます。

なぜ、デートDVが起こるのでしょうか? 個人的な要因としては、①自己肯定感の低い人 ②固定的な男女観の人 ③暴力を容認する人が加害を起こしがちです。 二人の関係性の点では、「力」が不均等なカップルで起こりやすくなります。

デートDVを受けているのに、気づかないこともあります。適切な知識を身に付け、相手を「怖い」「辛い」と思ったら、 これはデートDVかもしれないという発想が重要です。

対等でない恋愛関係は、デートDVです。お互いを尊重しながら、 自分の気持ちを言葉で伝え合い、対等で心地よい関係を一緒に築いていきましょう。

もし、友達から被害の相談を受けたら、「二次被害」に遭わせないよう気をつけてください。 相談したのに、「それは愛されている証拠」「我慢すれば」などと言われると、いっそう傷つきます。

相談されたら、まず話を聴きましょう。相談者を責めてはいけません。当人の望む解決方法を尊重し、 精神的に支えてあげたうえで、しかるべき相談窓口への相談を勧めるとよいでしょう。

「お互いを尊重し、対等な関係を。」

情報BOX

それってデートレイプかも!
…そんな経験ありませんか?

デート中にセックスを強要された、という経験はありませんか?レイプというと、 「見知らぬ人からいきなり」と思いがちですが、 内閣府の調査によると顔見知りによるケースが多いのです。

恋人同士だと、つき合っているのだから当然という意識が働くかもしれません。 セックスは男がリードすべきだという考えもあり、相手が嫌がっているのに気付かず強引に、という場合もあるでしょう。

また、アルコールやドラッグを飲ませて抵抗力を奪いセックスするという性暴力の被害が増えてきています。 相手が抵抗できない状態で性行為やわいせつな行為を行うことは、犯罪です。 刑法の処罰の対象になり得ます。

恋人とは精神的にも、肉体的にもつながっていたい。だからセックスしたい、 と思うのは自然な気持ちです。でも、一方的に押し付けては、 大切な人の気持ちを踏みにじることになります。お互いに相手の気持ちを尊重し、 合意のうえで行うようにしましょう。そのような意識をみんなで持つことが大事です。

「ブラック企業」に要注意! アルバイトを
始める前に労働条件を確認しよう

「ブラック企業」とは、どんな会社を指すのでしょうか。 実は、「ブラック企業」の定義は正式にはなく、厚生労働省は「『若者の使い捨て』が疑われる企業等」と称しています。 その一般的な特徴として挙げられているのは、次の3点です。

  • 労働者に対して極端な長時間労働やノルマを課す
  • 賃金不払い残業やパワハラが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
  • このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う

「ブラック企業」では、学生アルバイトをめぐる次のようなトラブルも多発し、大きな社会問題となっています。

  • 採用時に合意した以上のシフトを入れる
  • 急なシフト変更を命じる
  • 試験の準備期間や試験期間にシフトを入れる
  • 「人手が足りない」といって学生を休ませない
  • 退職を申し出た学生に、「ノルマ」や「罰金」を理由に辞めさせない

アルバイトを始めるときは、最初に労働条件を確認することが大切です。 アルバイトにも、「労働基準法」が適用されます。同法では、使用者(会社)は労働者に労働条件を明示することを義務づけ、 「労働契約書」などの書面を渡して示すことになっています。

使用者は一方的にアルバイトを解雇することはできません。少なくとも30日前に予告することが義務づけられています。 また、一定の条件を満たせば、残業手当や有給休暇があるのです。 もし、仕事中にけがをすれば、1日だけのアルバイトでも労災保険が使えます。

労働条件や突然の解雇などで困ったときは、最寄りの労働基準監督署に相談しましょう。

(出典:厚生労働省「労働条件に関する総合情報サイト」)

関連資料紹介

それ、パワハラです何がアウトで、何がセーフか

笹山 尚人 著/光文社2012年

企業で急増する「パワハラ問題」への対策は、 現在、日本社会で喫緊の課題となっています。
数多くの労働事件に携わってきた弁護士が、 豊富な実例に基づき、その実態、法的な視点、具体的対策などに触れ、 今後の企業のあり方を考える1冊です。

ここからセクハラ! アウトがわからない男、もう我慢しない女

牟田 和恵 著/集英社2018年

何がセクハラで、何がセクハラでないのか。 漫画で具体的な例を挙げて、加害者の勘違いや差別意識を浮き彫りにするとともに、 対策についてもふれられています。 どこからがセクハラになるのか、 その線引きを認識することの必要性を促す本です。

いじめとは何か 教室の問題、社会の問題

森田 洋司 著/中公新書2010年

国際調査をはじめ様ざまないじめ研究を通して、 いじめとは何かを実証的に探究した書。 いじめは、「加害者」と「被害者」の二者の関係ではなく、 その周りの「観衆」「傍観者」を含めた構造でとらえるべきであることや、 「傍観者」のなかからいかに「仲裁者」を生み出していくか等、 いじめを止められる重要な視点を提供してくれています。

ストーカー 「普通の人」がなぜ豹変するのか

小早川 明子 著/中央公論新社2017年

SNSの普及で、素性を知らない相手へのストーキングやリベンジポルノなどの卑劣な行為が急増しています。 「交際相手と別れるときに注意すべき点は?」 「ストーカーからの贈り物はどうすべきか?」 「警察にはいつ行けばいいか?」 「加害者は治療で変わるか?」等、 500人以上の加害者と対峙してきたカウンセラーが解説。

デートDV情報発信プラットホーム 『NotAlone』(ナタロン)

デートDVが気になったら、まずはこのページを開いてみることをお勧めします。 若者たちが投稿したデートDV経験の具体例、 被害に遭ったらどうすればよいのか、全国の相談窓口情報、 デートDVに関する調査結果、参考図書などの情報が満載です。

運営:NPO法人デートDV防止全国ネットワーク

ブラックバイトに騙されるな!

大内 裕和 著/集英社クリエイティブ2016年

まだ社会経験の浅い学生を都合のいい労働力として、 過酷な条件で働かせる「ブラックバイト」。 その実態を明らかにし、解決策までを提示しています。 ブラックバイトの巧妙な手口とは? やめたくてもやめられないバイトから抜け出す方法、 身を守る方法とは? 学生たちから直接相談を受け、早くからブラックバイトの問題提起を行ってきた第一人者による決定版。

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