KANDAI
TOPICS日常の出来事

2月26日、千里山キャンパスのKUシンフォニーホールにおいて、本学客員教授の髙谷光信氏による講演会および関西大学グリークラブコンサートを開催し、市民の方も含め多くの人が参加しました。本講演では、ウクライナのチェルニーヒウフィルハーモニー交響楽団で常任指揮者を務める髙谷氏が、ウクライナとの出合いや現地での音楽活動を通して得たもの、ウクライナとロシアの音楽家たちに今何が起きているのか、そして音楽家として願うことを、思いを込めて語りました。
髙谷氏とウクライナとの繋がりは高校時代、首都キーウと姉妹都市である京都市でウクライナの留学生をホームステイに受け入れたことに始まります。その後、大阪音楽大学を卒業し、ウクライナ国立チャイコフスキー記念音楽院へ進学。2003年、同院の卒業演奏会でチャイコフスキー『交響曲第5番』を客演したチェルニーヒウフィルハーモニー交響楽団から、「ぜひうちで指揮をしてほしい」と招かれプロデビューを果たして以来、20年以上にわたって同楽団でタクトを振り続け、仲間と共に音楽を奏でてきました。
ウクライナの人々が、遠い異国から来た髙谷氏を分け隔てなく迎え入れて支えてくれたこと。その懐の深さを髙谷氏は決して忘れることがないと語りました。しかし、コロナ禍を経て軍事侵攻が続く状況下でウクライナに入国することが叶わず、現在は日本でウクライナの現状を伝える講演やチャリティーコンサートの開催、2022年に髙谷氏が中心となって設立した一般社団法人日本ウクライナ音楽協会を通じた支援活動を行うなど、ウクライナ音楽界の復興に向けて力を尽くしています。
また、髙谷氏はキーウでの音楽活動中のエピソードも紹介。プロとしてのキャリアも10年になる頃、ラフマニノフの交響的舞曲のリハーサルで恩師が演奏を中断させ「スラヴ音楽を全然分かっていない!」と髙谷氏を激しく叱責。そして楽団員には「お前たちがスラヴの心をミツ(髙谷氏)に伝え、そしてミツがそれをに日本に持ち帰って種を蒔く、そうすることで俺たちスラヴの魂はずっと残っていくんだ!」と伝える場面があったといいます。
その後のすさまじい演奏は忘れられないものとなり、ウクライナでの音楽活動で"スラヴの魂"を叩き込まれたと語りました。
軍事侵攻の続くウクライナで、楽器を武器に持ち替えて最前線へ赴く仲間から「もうロシア音楽は演奏したくない」というメッセージを受けた髙谷氏は、「戦争が人の魂をむしばんでいる」「スラヴ音楽の素晴らしさを教えてくれたのは彼らだったのに...」と言い尽くせない思いを表しました。
そして「自由を希求するための音楽と戦争とを、同じ土俵に乗せるべきではない」と、不条理な世の中に対する憤りや悲しみを訴えました。
いつかウクライナの街へ戻った音楽家たちが再び演奏できる環境を整えるため、献身的に活動している髙谷氏。「この侵攻を始めたロシアの政治家、軍閥を許すことは絶対にできません。しかし、音楽家として"音楽に国境はない"そう言い続けてきました。音楽は、人々に癒しや慰め、未来への活力などを平等に与えるものです。ウクライナの平和を願って指揮をすることはあっても、ロシアを憎んで指揮をすることはありません」と強い思いを述べ、「このような講演会をする必要がなくなるくらい、平和な世界になってほしいです」と講演を締めくくりました。
講演後には、髙谷氏の指揮のもと関西大学文化会グリークラブがロシア民謡『カチューシャ』、ウクライナ歌謡『私のキーウ』の2曲を歌唱。人びとに平和へのメッセージを届け、会場は大きな拍手に包まれました。
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