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法学部が学術講演会「患者講義をつうじて考えるB型肝炎問題をめぐる法と政策形成」を開催しました。

千里山キャンパスで16日、法学部が学術講演会「患者講義をつうじて考えるB型肝炎問題をめぐる法と政策形成」を開催しました。聴講した約300人の学生らは、B型肝炎患者が抱える問題の深刻さをはじめ、法的・政策的な問題解決の可能性やその限界について考えました。

B型肝炎訴訟とは、集団予防接種の注射器の使い回しが原因で発生した感染被害について、国の法的責任を問う裁判。感染のリスクを黙認しながら、1948年以降40年にもわたって続けられた国の政策によって、その被害は45万人にも及ぶとされています。本講演で講師を務めたのは、その被害者の一人であるB型肝炎訴訟大阪原告団代表の小池真紀子氏。小池氏はB型肝炎に苦しんだ自身の経験を語るとともに、「身体的な症状」や差別・偏見といった「心のいたみ」を学生らに伝えました。

発症してからの先の見えない長い戦い。いつになったらこの苦しみから解放されるのか。「自分が自分でなくなり、死ぬことも考えた」と打ち明けた小池氏。裁判では、国からの「謝罪」「救済」「社会づくり」を目的として、過ちを認め、全被害者の早期の救済と今後の安心な生活が保証される社会の実現を求めました。先行訴訟から数えると実に23年間に及ぶ長い裁判。膨大な数の被害者全員への損害賠償には2兆円が必要と、財政難ゆえ増税政策を打ち立てようとする国の姿勢に対して、小池氏ら原告団は憤りを覚える一方で、世間からの批判も受け、肩身の狭い思いを強いられました。そうして「全員救済のためには、国民の理解と協力が必要」と結束した原告団は数々の活動を実施。なかでも小池氏が印象に残っているのは、オレンジサポーター(被害者支援団体)として大学生たちが街頭活動を行い、多くの国民に訴えかけてくれたことだとつづけました。

2011年6月、ついに国が加害者としての法的責任を認め、正式な謝罪とともに救済策を提示する基本合意が成立。まだまだ課題は残しながらも、ようやく一つの光を得た小池氏は、「諦めず頑張ってきてよかった。なにより治療薬の研究開発を約束してくれたことが嬉しかった」と、当時の思いを語りました。そして残している課題にも触れながら、「肝炎について正確な知識を持ってもらい、患者への差別や偏見をなくしたい。また二度と被害者が出ないように再発防止にも努め、安心して暮らせる社会を作りたい」と訴えました。

政策形成という大きな役割を果たした同訴訟。通常、裁判所による判決の強制力は提訴原告のみにか適用されないという限界があります。しかし同訴訟はその限界を超え、救済対象を原告のみならず未提訴の同じ予防接種被害者、さらには証拠などの問題で裁判できない肝炎患者にも広げ、全ての被害者を対象とした救済・支援を実現させました。小池氏と並んで登壇した弁護士の長野真一郎氏(B型肝炎訴訟大阪弁護団代表)は、訴訟の経緯や立法措置に向けた政策的なプロセスを解説するとともに、「全ての人が感染被害を受ける可能性があったこと。他人事ではないということを認識し、この問題について考えてほしい」と話しました。




  • 法学部学術講演会小池真紀子氏

  • 法学部学術講演会長野真一郎氏

  • 法学部学術講演会