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環境省環境研究総合推進費 公開シンポジウム「われわれは巨大地震にどう備えどう向き合うべきか。」を開催しました。

グランフロント大阪・ナレッジキャピタルで2月24日、関西大学・徳島大学地域創生センター共催による公開シンポジウム「われわれは巨大地震にどう備えどう向き合うべきか。」を開催しました。

日本に甚大な被害を及ぼすとして、近い将来における発生が想定されている南海トラフ地震。そのリスクを前に、我々は何をすべきで、また何ができるのか。本シンポジウムでは震災に強いまちづくり、とりわけ早期復興をめざす上で、一つの重要ファクターとなる災害廃棄物の処理に焦点をあてて、総合的な観点から巨大地震に対してのサステイナブル(持続可能)な対策について議論を交わしました。なお本シンポジウムは、環境省環境研究総合推進費による研究プロジェクト「巨大地震による震災廃棄物に関わる社会リスクをふまえたサステイナブルな適応策評価」の一環として、活動開始から2年間の成果報告を兼ねて開催しているものです。

まず基調講演として、徳島大学大学院理工学研究部の山中英生教授が「南海トラフ地震に向けた徳島での事前防災の取り組み」をテーマに登壇しました。山中教授は、政策目標の根幹にある「安全・安心」を強調しながら、沿岸集落・都市圏それぞれの地域特性を踏まえた津波防災まちづくりの動向を解説。特に土地利用ないしは住まいのあり方について論じ、沿岸集落の事例では「(安全な)高台を開拓し、集落をまるごと移転する政策の実現はすぐには難しい。地域を次代につなげていくために、まずは高台にある土地を活用して、若者に住んでもらうことが大切」と、実際に現地で展開している土地利用計画を説明しました。さらに災害時の支援や生活再建の短縮につなげられるよう、たとえ浸水域だとしても子ども(若者)の近くに親が居住する"リスク分散型近居"の仕組みを提唱し、現実的なリスク回避(減少)の方策を示しました。

続いて事例・研究報告として、公益財団法人国際エメックスセンター専務理事の築谷尚嗣氏と本学環境都市工学部の北詰恵一教授が順に登壇しました。築谷氏は災害廃棄物処理の工程について、阪神・淡路大震災を事例に解説。広域的な連携強化や仮置場・搬送ルートの確保の必要性など、経験から得られた教訓を挙げるとともに、処理のスピード化に向けて実際にそれら教訓がどう生かされているのか、その活用状況を説明しました。また北詰教授は、多様な社会リスクを踏まえたサステイナブルな政策について、本プロジェクトの研究の全体像や現時点での成果を報告。各地域に即したレジリエント政策のあり方や、災害対策において関連しあうさまざまな計画の体系を示しました。

その後、鹿島環境エンジニアリング株式会社特別顧問の塚田高明氏を加えて、環境都市工学部の盛岡通教授をモデレータにパネルディスカッションを実施し、南海トラフ地震に向けた地域の取り組みについて意見を交換しました。東日本大震災時の災害廃棄物処理について、石巻ブロック(石巻市・東松島市・女川町)の事例報告を行った塚田氏は、「ものを片付けるところから復興が始まる。スピード感をもって着手しなければならない」と、その処理の重要性を強調。運行・搬出入管理システム(GPSで道路状況や通行規制等をリアルタイムに集約し、ドライバーに直接指示できる仕組み)を構築し、現地に導入した実績を紹介するなど、作業の円滑化につながる具体的な取組みを示しました。

また山中氏は、「非常時にどう動くのかをあらかじめ話し合っておくなど、住民同士の相互連携が不可欠」と主張。「対策を講じることができ、現場の指揮を執れるような経験知・専門知を兼ね備えた人材(技術者コミュニティ)をしっかりと形成しておくべき」と意見すると、北詰教授も「あくまで主体となるのは市民や救助を行う人たち」と、防災の担い手となる人たちの事前のコミュニティづくりの必要性を説きました。一方で築谷氏は、各自治体の近年の組織縮小による弱体化を指摘し、業者を有効活用するなどの外部連携の強化を課題に挙げました。

盛岡教授から、「想定外の事態における連携は難しいもの。さまざまな障害を乗り越えて連携体制を築き上げるにはどうすれば?」と話題を振られると、北詰教授は「既存の計画に捉われすぎず、時代とともに変化するコミュニティの実状に応じた方策を講じていかなければならない」と現実を冷静に俯瞰し、「同じ課題を持つ自治体や課題を補完しあえる関係の自治体のペアリングを行うことで、日頃から市町村をまたいだ取組みを行うべき」と、レジリエント政策において有効となる、平時と災害時の双方に活用できるシステムづくりの必要性を提唱しました。

最後に盛岡教授がパネリストの意見をまとめたうえで、「災害時には不測の事態が必ず起こる。環境省も各地で災害廃棄物処理に関する図上演習プログラムを開催し、技術者コミュニティの育成(形成)や情報発信に取り組んでいる。想定外の思わぬ事態に直面した際のどきまぎした精神状態の中で、対応策を考えるといった実践的な演習は必ず必要」と提言。自治体関係者らが多く詰め掛けた聴講者に対して、同研究に対する意見や応援を呼びかけるとともに、今後も官民学が一体となって対応策を議論していくことを確認し、本シンポジウムは盛況の内に閉会しました。

  • 公開シンポジウム山中英生教授(徳島大学大学院理工学研究部)
  • 公開シンポジウム築谷尚嗣氏(公益財団法人国際エメックスセンター専務理事)
  • 公開シンポジウム北詰恵一教授(関西大学環境都市工学部)
  • 公開シンポジウム塚田高明氏(鹿島環境エンジニアリング株式会社特別顧問)
  • 公開シンポジウム
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