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第32回「織田作之助賞」受賞記念 作家・三浦しをん氏による講演会を開催しました。

千里山キャンパスで4日、第32回「織田作之助賞」受賞記念・関西大学文学部特別講演会を開催しました。 当日は、小説『あの家に暮らす四人の女』(中央公論新社)で同賞を受賞した三浦しをん氏が、「締め切りという言葉がなくなる日」というユニークなテーマで1時間、文学部の柏木治教授と対談しました。会場の千里ホールは市民と学生計約400人であふれ、映像中継による臨時の聴講教室を用意したほどでした。

「織田作之助賞」は、大阪市・大阪文学振興会・関西大学・パソナグループ・毎日新聞社の主催で、一心寺・ルーブル書店協賛、三田文学会の特別協力で運営されています。
講演会では、まず三浦さんが普段から原稿の締め切りを守れない日常をぼやいたうえで、「この苦しみについて語りたい」と話し始めました。やがて矛先は編集者に向かい「彼らもいつもサバを読んでいて、中には(締め切りを)1ヶ月も早める人もいる」と説明。「実際はどれくらいの余裕があるのかを読むのに、すべての精神力を使いきってしまう」と冗談交じりに言うと、すかさず柏木教授も「実は私も今日が締め切りなのに、40枚の原稿がまだ完成していません」とぼやき返しました。

このあたりから三浦氏の語りはギア・アップし、柏木教授の巧みな合いの手をはさみながら、話題は小説作法から日常生活、両親、料理と多岐にわたりました。まず締め切りを守れない事情について「登場人物の役づくりに時間がかかり、そのために書き始めるのが遅れてしまう」と吐露。しかしいったん書き始めると没頭し、「冬はドテラ、夏はアッパッパ(ゆったりしたホームウエア)姿で、基本、風呂にも入らず書き続ける」と明かしました。

作品の構成については「長編の場合、事前に大雑把な骨組みは考えるが、自分の構成案に付箋を付けてさらに細かく考えるようなことはしない。そこまでやるとそれで満足してしまうような気がするので」と話す三浦氏は、さらに「(作家の頭の中で)登場人物が勝手に動き出し、寝ている間も物語が進んでいる、というようなケースは私の場合はない」とつづけました。

そして対談は、執筆のための入念な取材の話へ。たとえば林業の取材では、「学者や林野庁の役人に取材し、さらに三重の森林組合を訪ねて地元の人と実際に山に入る。そしておじさんたちの飲み会に紛れ込み、記憶を失うまで飲む」というエピソードが紹介されました。また、父母の性格をユーモラスに語りながら「母方はチョー長生きの筋なので、私も長生きしそう。そのためお酒を飲んで体は動かさないという、適度に不健康な暮らしになっている」という三浦氏に、柏木教授が「ワインなら2本くらい?」と突っ込むと「それくらい全然大丈夫」と笑い飛ばしました。

最後は意外にもたこ焼きの話題に。会場の人たちにまず「自宅にたこ焼き器がある人は?」と切り出すと、学生も含め半数がさっと手を上げました。三浦さんは「さすが大阪」と言いながら「ひとつ教えてください」と尋ねました。「たこ焼きの粉を溶かした液は、"とろみがなく限りなく水に近いほうがいい?""じっくり時間をかけて焼くのが正解?"プロのみなさん教えてください」。すかさず会場のあちこちで大きく顔をうなづかせる聴衆を前に、三浦さんは「やったー。これでOKなんですね。ウンウン」と満足そうでした。講演会のあと著書のサイン会も行われ、並んだ80人のうち半数は学生でした。




  • 三浦しをん氏講演会

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