関西大学 KANSAI UNIVERSITY

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  • 教育・研究

直木賞作家・一穂ミチ氏によるホームカミング講演会を実施

 本学社会学部卒業生で、刊行される作品が常に話題を呼び、昨年直木賞を受賞した作家、一穂ミチ氏を招いて創作と読書について聞く「ホームカミング講演会」が14日、千里山キャンパスで開かれました。本講演会は「読書への誘い」授業の一環で行われ、文学部の増田周子教授と文学部文学研究科の学生たちが聞き手を務めました。

 一穂ミチ氏は二次創作を同人誌に発表するなどして創作活動をスタートし、編集者の勧めで2007年にデビュー。コロナ禍を生きる人々の姿を描いた短編集『ツミデミック』(光文社)で第171回直木賞を受賞しました。現在も会社員として働きながら執筆活動をしており、本名や素顔を見せない覆面作家としての姿勢を貫いていることでも知られています。今回は特別にマスク姿で約300人の学生の前で登壇するという、貴重な機会となりました。

 講演は学生との対話形式で進められ、「作品の女性が常に主体性を持っていることに注目しています」「最近の"正解を求める"風潮の中での創作についてどうお考えですか」という学生側のコメントに対して、「登場人物が主体的に選択することは意識しています。失敗したくないという人が多くなっているけれど、どうしてもこぼれ落ちるものがあり、それを書いていきたいです」と回答。盗撮事件の波紋を描いて話題になった、2024年刊行の『恋とか愛とかやさしさなら』(小学館)を称賛する学生には、「(盗撮する登場人物に対して)寄せられる意見が多様で、そういう意味で面白かったですね」と話しました。授業の大きなテーマとなっている「読書と恋愛」について尋ねられると、自身の好きな漫画に出てくる「言葉と経験は同じ量でなければ」という言葉を用いて「相互に響き合うものではないでしょうか」と述べました。また、学生と同じ世代だった頃の読書で印象に残っている書籍について聞かれ、石牟礼道子『苦界浄土』と夏目漱石『硝子戸の中』などを挙げました。

 続いて設けられた質疑応答の時間では会場の学生から質問や意見が出て、活発な授業となりました。
 最後に学生たちへのメッセージを求められた一穂ミチ氏は「今やりたいことは先延ばしせずにやっていくと良いと思います」とアドバイス。吉原幸子さんの詩「あたらしいいのちに」の一節を引用しながら「皆さんが痛みのない若い日々を思って痛みを感じる(未来の)時まで私が作家でいられますように。そして皆さんが痛みを感じるときには誰かの(創作した)物語がそばにありますように」と結び、大きな拍手で講演会が締めくくられました。

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