文学研究科

博士課程前期課程(哲学専修)

哲学専修は、哲学・哲学史、哲学・倫理学、比較宗教学の3つの専修科目をもち、それぞれの専門領域で、演習科目と各種の講義科目を開講している。各分野の古典や重要文献を読みこなす研究、学問横断的に現代的なトピックを考察する学際的な研究、フィールドワークを含む研究など、大学院生の関心に応じて多様な授業が提供されている。他大学の大学院生も含めた読書会・研究会なども組織されている。

哲学・哲学史研究

古代ギリシアに始まり現代に至るまで西洋哲学の中で論じられてきた事柄(世界、人間存在、真理、自己、他者など)を、歴史的変遷を顧みながら考察する。演習では、原典を精読しながら個々の問題について討議する。あわせて、学位論文作成のための指導をする。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 薄井 尚樹教授

    研究テーマ:現代哲学、心の哲学

    ドナルド・デイヴィドソンの哲学を出発点に、経験的研究の知見をふまえつつ、他者理解にかんする研究をすすめてきた。またそれとともに、現在は、潜在バイアスをめぐる哲学的な諸問題、とりわけ潜在バイアスから生じる行動の道徳的責任のありかたに関心がある。

  • 三村 尚彦教授

    研究テーマ:身体現象学と体験過程理論

    フッサール現象学における身体論を研究するとともに、臨床心理学者で哲学者のジェンドリンが提唱したフォーカシング指向心理療法、体験過程理論を取りこんだ現象学の可能性について考察している。

哲学・倫理学研究

倫理について自明のことを根源から問い直す哲学的考察を行うのが倫理学である。善・正義・義務・幸福など古代から現代にいたる伝統的問題について考察を深めるとともに、生命倫理学や環境倫理学をはじめとする応用倫理学を参照して現代固有の具体的問題を探究する。演習では、それぞれの学生の研究テーマに沿った指導をあわせて行う。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 品川 哲彦教授

    研究テーマ:①倫理学、②応用倫理学、③現代哲学

    現象学の研究から出発し、応用倫理学を介して(主に近現代の)倫理学全般に研究を広げてきた。とくに倫理理論の基礎づけ問題にとりくみ、正義・責任・ケア概念の解明を進めている。

  • 中澤 務教授

    研究テーマ:西洋古代哲学、倫理学

    ①ソクラテス以前の自然哲学、ソクラテス・プラトン・アリストテレス、ヘレニズム期の哲学など、古代ギリシアの哲学および倫理学全般を研究している。

    ②西洋の倫理学の問題全般を、現代の応用倫理学を含め、研究している。

  • 平出 喜代恵准教授

    研究テーマ:倫理学、カント、生命倫理学

    カントの道徳哲学をその宗教論との緊密な関係のなかで解釈。とくに「人間の尊厳」概念とその根拠である「人間性」概念に関心がある。これらの概念に基づいて、現代の具体的な倫理的問題の研究にも取り組んでいる。

比較宗教学研究

キリスト教・仏教・イスラームの世界3大宗教をはじめとして、世界中の多種多様な宗教を多彩な方法で研究することができる。各宗教がもつ聖典や教義の比較思想的研究や文献学的研究に留まらず、宗教儀礼や教団に関する実証的研究、聖地調査などフィールドワークを中心とした宗教人類学的研究、宗教学の諸理論や方法論の研究を行うことも可能である。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 酒井 真道教授

    研究テーマ:知識論を中心とした7世紀以降のインド仏教思想史の解明

    宗教と哲学とが表裏一体の関係にあった中世インドでは、あらゆる宗教、宗派において、解脱に至る一つの道として正しい知識が探求された。本研究では、7世紀以降の仏教知識論の思想史を仏教徒と非仏教徒との間の論争を解明することを通じて明らかにする。

  • 宮本 要太郎教授

    研究テーマ:①無縁社会における宗教の可能性 ②宗教の物語論的構造

    • ①「無縁社会」と呼ばれる今日の日本社会において、宗教がいかなる「貢献」をなしうるのかを、社会活動に従事している宗教者と共同で研究中。
    • ②聖徳太子伝や新宗教の教祖伝などの解釈を通じて、神話=歴史的な多様な物語の救済論的構造を探究する。
  • 小杉 麻李亜准教授

    研究テーマ:日常の中の聖典クルアーン、ムスリム社会の地域間比較、聖典の比較研究

    • 現代のイスラーム圏の日常で、聖典クルアーンが朗誦やグッズ、慣用句などの多様な形態で展開している実態を調査してきた。どこまでが文化でどこまでが宗教なのかや、人類学的な神話分析の立場から、聖典の中の物語と、外の土地の結びつきについても考察している。
  • 水野 友晴准教授

    研究テーマ:日本哲学や宗教の比較思想的研究と現代世界への貢献の可能性の研究

    日本の哲学や宗教をグローバルな視点から捉え直す。日本の哲学や宗教は、日本固有の精神性や宗教性と、海外からもたらされた思想とが融合し、また、その時々の事件や出来事に対応することで、磨かれ、成長してきた。それは世界の人々と共有すべき貴重な思想的遺産である。