文学研究科

博士課程前期課程(国語国文学専修)

国語国文学専修では、上代から現代までの各時代の日本の文学と言語を対象とした研究を行う。研究分野は、上代・中古文学、中世文学、近世文学、近代文学、国語学に分かれ、各分野の演習科目において、それぞれの研究課題に取り組んでいる。さらに、国語国文学専修の教員、修了生、在学生等によって構成される国文学会において、年2回の研究発表会の開催や学会誌『国文学』の刊行を行うなど、分野を超えた研究交流の活動も盛んに行っている。

上代文学

奈良時代以前の文学作品として、『万葉集』、『古事記』、『日本書紀』、『風土記』などが挙げられる。これらの作品は全て漢字で書かれており、ひらがなやカタカナのない時代の日本文学として位置づけられる。中でも『万葉集』は漢字で記された日本語として他に類を見ない大量の作品が収められており、日本語が文字化された初期の段階として、また、言語が文字を獲得した初期の段階として、注目され続けている。本分野では、いわゆる訓詁注釈を授業の中心に置きながらも、各自の問題意識や方法論に則って、表現に即した読解力を身に付けることを目指している。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 村田 右富実教授

    研究テーマ:日本上代文学

    『万葉集』を中心に上代韻文学を研究している。文学研究の側面からだけではなく、隣接学門である国語学、歴史学、考古学や、少し離れたところでは統計学からのアプローチも重視しつつ、人間にとって韻文とは何かを考察している。

中古文学

平安時代の文学作品には、『源氏物語』『伊勢物語』『枕草子』『古今和歌集』など、日本の古典文学の中でもよく知られた重要な作品が多いが、その本当の姿を知ることは、それほど容易ではない。本分野では、さまざまな講義科目によって原典にもとづいた作品研究の方法を身につけ、演習科目における各自の発表を通して、言葉を大切にした読解を身につけることをめざしている。しっかりした根拠にもとづいた確実な読みによって、それまで見えてこなかった平安文学の本当の姿が、思いがけない形であらわれてくる、そんな研究の喜びを、それぞれがそれぞれのスタイルで、力をあわせて追求している。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 岸本 理恵教授

    研究テーマ:平安時代の和歌文学、文献書誌学

    平安・鎌倉時代の写本や古筆切を中心に、写本のあり方や平安時代の作品がいかに伝えられてきたかを研究している。また、初期歌合を中心に和歌の変遷を分析し和歌の注釈もおこなっている。

  • 松本 大教授

    研究テーマ:中古文学作品の享受に関する研究

    平安期成立の文学作品における、注釈書・享受史の研究を行っている。主に、南北朝期から室町時代に作成された、『源氏物語』や『伊勢物語』の古注釈書を対象とする。作品の内容読解だけではなく、享受の様相をも踏まえながら、多角的な作品分析を行っている。

中世文学

院政期以降、文芸の担い手は様々な階層に広がっていった。様々な階層に生きる中世びとたちは、自ら知識を求め、新しい時代を築いていった。この時代に作成されたテクストには、そういった人びとの息吹きが伝えられている。私たちはテクストを読解することで、過去の日本人と対話し、彼らの築いた文化や、彼らの心を追体験できる。「日本文化の諸相」「日本人の精神史」の明確化とは、グローバル化が進められる現代社会において、一人一人が認識するべき課題である。学生たちは、現代社会をより良く生きるために過去を学び、その成果を世界に発信できる日本人であるために、海外で日本を学ぶ同世代と共同するビデオカンファレンスや研究集会を開催している。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 大島 薫教授

    研究テーマ:日本文化史 Japanese popular culture

    「日本の古典文学」は、作品が形成された時代、そして作品を読み継いだ人々の知的営為を復元することにより、さらなる解釈が可能になる。現存する種々のテクストを題材に、日本文化の諸相や、日本人のアイディンティを明らかにしたい。

近世文学

ジャンルが広範囲に拡がった近世文学のなかで、俳諧・小説を中心とした授業を開設し、さらに文化全般を見通した研究を行っている。俳諧では芭蕉や蕪村など、小説では浮世草子や読本および軍談実録などを採り上げ、眼光紙背に徹す「読み」をめざす。また、江戸時代は出版文化の時代でもあるので、本研究科独自のユニークな講義科目として「近世版本書誌学」も用意している。演習では、それらの「読み」に基づいて、俳諧・小説ばかりでなく、各人の研究テーマに応じた多様な研究対象を深く考究する。自分自身の興味を大切にして、この多様にして豊穣な近世文学作品に積極的に対峙してほしい。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 山本 卓教授

    研究テーマ:①近世小説研究、とくに浮世草子、読本、実録研究 ②「忠臣蔵」伝説研究 ③近世出版文化研究

    近世小説(浮世草子・談義本・読本)にみえる舌耕(話芸)性の問題、書本(実録写本)を種本とする浮世草子・読本などの出版された小説、そして近世出版文化を研究してきたが、近年は赤穂浪士(「忠臣蔵」)伝説の生成とその展開に注目している。

近代文学

明治期から大正・昭和、さらに今日にいたるまでの近現代の作家・作品を研究対象とする。樋口一葉・夏目漱石から現在活躍中の宮本輝・吉本ばなな・村上春樹らの作家まで取り上げる。大阪出身の作家たちや大阪を描いた作品、女性文学・戦後文学および大衆文学や戦争文学といった分野領域をも多角的に対象とし、作品の読みに重点をおく。文献調査など書誌学の分野をも重視する。論文のテーマも谷崎潤一郎・芥川龍之介・室生犀星・宮澤賢治・武田泰淳・織田作之助・坂口安吾・川端康成・安部公房など、多岐にわたっている。文学研究にとってなにが大事か、また、その研究方法はいかにして可能なのか、文学研究を実践するなかで学んでいく。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 関 肇教授

    研究テーマ:近代文学、明治・大正期の文学の研究

    尾崎紅葉・徳冨蘆花・村井弦斉・菊池幽芳・夏目漱石など、明治・大正期の新聞小説を中心とする研究を行う。新聞メディアと文学、およびそれを享受する読者との関係について、同時代の歴史的・社会的な問題を視野に入れながら実証的に検討する。

  • 増田 周子教授

    研究テーマ:日本近現代文学、比較文学

    大正、昭和文学研究、および日本近現代文学を諸外国との関係の中でとらえる研究を行っている。宇野浩二、芥川龍之介、織田作之助、火野葦平、西条八十、大阪のカフェと文芸運動、関西の出版・文壇研究などの論文がある。

国語学

日本語の構造の体系的な分析と実社会における運用およびその通時的な変遷について研究する。日本語の通時的研究においては、上代から現代にいたる各種の文献を対象として研究する。また、現代の日本語に関しては、いわゆる標準語だけでなく、地域方言や社会方言も研究対象とし、質問調査、談話調査、コーパス調査等、さまざまな調査法によって収集した言語データを分析対象とする。研究アプローチは対象ごとに異なってくるが、どの分野においても実際のデータに基づいた実証的な研究を行うことが求められる。教員同席で行う研究構想発表会を週1回開催しているほか、院生による自主的な勉強会も行い、研究成果を検討する機会を多く設けている。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 乾 善彦教授

    研究テーマ:日本語の文字論と表記史

    本来、中国語を書きあらわす文字である漢字を用いて、日本語を表記するようになったところから出発して、現在の漢字仮名交じり文が成立するまでの日本語表記の歴史。各時代の文字・表記意識や漢字・仮名とことばとの基本的な関係を、多様な資料を駆使して考える。

  • 日高 水穂教授

    研究テーマ:現代日本語文法の記述的研究、方言文法の対照研究

    日本語諸方言の文法の特徴を対照させ、その地理的分布のあり方から、言語変化のメカニズムを解明する研究を行っている。言語変化に関わる言語の内的な特徴とともに、言語の社会的な機能にも注目している。最近は談話展開の地域差に関心を持っている。

  • 森 勇太教授

    研究テーマ:日本語文法史(敬語・待遇表現)、歴史語用論

    日本語文法史、特に敬語や待遇表現の歴史を研究している。待遇に関わる日本語の諸要素が、多様な発話行為の中でどのように運用されているかに興味を持っている。さまざまな時代や方言の特徴を対照し、言語変化のあり方を総合的に研究したいと考えている。