文学研究科

博士課程前期課程(地理学専修)

かつての地理学は、地表またはその付近で生起する自然現象や社会現象について、探検など現地調査を通じて、その関係を求めるべく記載する学問であった。その発生は西洋文明に限定されるものではない。現在の地理学はいわば科学性を指向するが、いまなお存在や分布自体にロマンを嗅ぎ取る学問でもある。現教員は自然地理学、都市地理学・経済地理学、歴史地理学・地誌学・地理教育などを専門にしているが、大学院生が求める研究分野を尊重する。

自然地理学研究

自然地理学は、現在または過去数百万年間の自然現象または人間活動を主に地球史の観点から明らかにする学問である。自然地理学の幾つかの分野のうち、担当者は地形学を専門とする。地形は現在の地球内部の活動と大気環境の変動や生物活動の総合値であって、種々の手法で解き明かすことができる。指導可能な研究手法として、GNSS計測、測量、地理情報システム、粒度分析、デジタル顕微鏡計測などがある。もちろん、院生の希望にできるだけ沿うよう指導している。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 黒木 貴一教授

    研究テーマ:野外調査とGIS解析から得る自然環境・災害に関わる応用地形学

    地形・地質を核として自然災害-環境-教育の四者の関係について野外調査とGISを利用しながら岩石、水、空気の移動に伴う姿形を、時間と空間を鍵にスケーラブルに分析します。社会に直結する自然地理学の諸課題を、研究成果により解決できるような問題設定を支援したいと思います。

人文地理学研究

人文地理学は人口地理学、経済地理学、社会地理学、文化地理学、都市地理学・・・など、多様な分野からなり、研究対象やフィールドは柔軟に設定できる。本コースでは、現代の日本・アジア諸国・先進国の社会・経済現象を主たる対象とする。演習では、各自の関心に合わせて、各人の研究発表と討論をもとに研究指導を進めていく。講義では、専任教員、外部講師による多彩な分野にわたる最新の研究成果を学ぶことができる。また、具体的に研究を進めるためには、フィールドワークやデータ解析などの分析手法・技術を身に着けることが肝要となるので、こうした研究方法の習得にも力を入れている。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 土屋 純教授

    研究テーマ:少子高齢化時代の日本における都市社会や流通産業の実態、アジア大都市における流通産業の成長と都市生活の変化

      日本、アジア、欧米諸国における流通産業の成長分析と、都市商業の革新に関する国際比較研究。大都市における都市産業の立地展開とその連関構造についても検討している。

歴史地理学研究

歴史地理学は地域を歴史的に論じる学問で、時間と空間を同時に視野に入れた研究分野である。本コースでは都市・村落・文化・民俗・祭祀・城下町などの研究を主たる対象とする。演習では各自の設定したテーマをもとに他のゼミ生と討議をおこないながら進める。在学中には学会発表を通じて、自らの研究成果を公表する事を推奨している。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 松井 幸一准教授

    研究テーマ:日本の都市・村落の空間構造/アジアの集落に関する研究

      村落がいかに形成され拡大してきたのかを東アジアを対象として研究してる。研究では村落の形成を伝統的な土地の復原からだけでなく、文化・民俗の面から比較・考察し地理情報システム(GIS)を利用した分析もおこっている。

地誌学・地理教育研究

本コースは地誌学(地域研究)と地理教育を中心に専門的な研究に対して幅広く指導するとともに、社会人や現職教員の研修の機会ともなるように配慮する。地誌学では、フィールドワークを重視し、アジア・日本、発展途上国、農業・農村や都市・交通現象を主たる対象とする。環境との関わりを重視し、背景となる地理思想や歴史的発展過程も含め、構造、変化プロセスなどを明らかにし、総合的な地誌の記述と分析をめざす。地理教育では、技術論に矮小化することなく、地理歴史科・社会科専修免許取得を視野に入れて、真の実力を備えた教員養成をめざす。フィールドワークと多面的な文献研究を融合させ、総合学習、国際理解、開発教育、環境問題などの新領域にも適応できるメニューを提供する。

【担任者および研究テーマ(概要)】
  • 野間 晴雄教授

    研究テーマ:アジア農村/都市の歴史生態、もの・技術の文化交渉学、地理教育

    日本を含むモンスーンアジア農村社会の比較研究が中心。農業、土地、技術、行動、食文化を対象にフィールドワークと歴史地理の融合をめざす。都市誌、人間―環境システム、民俗学・人類学との境界領域、歴史GIS、地理教育・地理思想、交通地理にも関心がある。