社会学部NEWS

2022.02.28

応用心理測定研究会「第5回研究会と最終講義」

 関西大学大学院心理学研究科の清水和秋ゼミでの学位修得者を中心として、2017年10月21日から研究会としての集まりを続けてきました。その後、学部のゼミを卒業し、他の大学院で社会人として研鑽を続けている者たちなども加え、2022年2月19日に、第5回研究会として、感染対策を立てながら対面とZoomで次の発表が行われました。

清水和秋(関西大学社会学部)「因子分析とともに50年(関西大学社会学部専攻最終講義)」、白藤康成(京都産業大学)「実践共同体におけるビジョン・アクションプラン導入に関する一考察」、佐名隆徳(千葉県中央児童相談所)「心理的虐待の加害者への介入方法による虐待再発率の差異」、小高 恵(太成学院大学)「親子関係の時系列研究の意義と課題」、山田 忍(和歌山県立医科大学大学院保健看護学研究科)「乳がん患者への「慈悲とマインドフルネス瞑想」の介入効果」、宮田延実(人間環境大学看護学部)「新型コロナウィルス感染症対策による休業中における小学生の早寝早起きに関する研究」、西川一二(京都大学大学院教育学研究科)「Gritの2成分の個人差と高校3年間の全国模試の得点推移との関連」、三保紀裕(京都先端科学大学経済経営学部)「日本の大学生を対象にしたTransition理論の構築に向けて」

 この研究会の名前には、Raymond B. Cattell先生と辻岡美延先生が大切にされてきた心理測定の方法的研究と応用的研究の融合という意味を込めています。『最終講義』では、1970年4月の社会学部入学の頃に遡りながら、そして、大学院時代に追究した因子分析と尺度構成・信頼性・妥当性についての現代的な課題と斜交因子分析の文脈の下でのFACTORMAX法、因子間相関を固定した斜交因子得点推定法を紹介しました。1986年に在外学術研究員としてPennsylvania State Universityで行った構造方程式モデリングを応用したキャリア不決断尺度の因子的不変性に関する共同研究を紹介し、潜在曲線モデル、潜在差得点モデル、特性・状態区分モデルについて、欧米での研究者間での方法論的議論の流れとこれらの方法を適用した研究例などを紹介しました。最後に、特性・状態区分モデルに構造平均モデルを導入することの意義を議論しながら、特性と状態の2次元(図、参照)のように心理学的変数を布置させることができることを紹介し、特性だけを対象としてきた心理学研究法から特性と状態とを共存させた方法論へと展開することの必要性について言及しました。これに引き続いて、研究会参加者による応用的な立場からの7つの発表と活発な議論が行われました。なお、次回は京都先端科学大学で開催される予定です。

※「心理学的変数を特性度(横軸)と状態度(縦軸)によって2次元に布置させた図」    出所:清水 和秋・三保 紀裕・西川 一二 (2021). 特性・状態の因子の平均を推定する区分モデル― 複数観測の縦断データの方法論と応用から― 関西大学社会学部紀要, 53(1), 69-140.

(清水 和秋 教授)