社会学部DAYS

2017.08.08

「比較する」ことで初めて理解できること

  • 社会システムデザイン専攻

 私が最近取り組んでいるものとして、国際比較研究があります。なぜ私が国際比較を重視しているのかというと、他の国を知ることによって、他の国だけではなく、むしろ私たちが住んでいる日本のこともより深く理解できるようになるからです。たとえば、以前と比べて日本では、単身世帯が増え、親と同居している世帯が減ってきたといわれています。しかしながら、他の先進国と比較してみると、先進国のなかでは、日本は依然として親との同居が多い社会であることがわかります。また、日本の若者が凶悪化しているといわれることもありますが、少年による殺人率を他の国と比較してみると、実は日本の少年は世界のなかでも飛びぬけて殺人率が低く、安全であることがわかります。
 このように、日本のことだけを知っていても、実は日本の特徴を適切に理解することはできません。他の国のことも知り、そして比較することで、初めて日本の特徴がきちんと理解できるのです。このことは一人一人の人間にも当てはまります。自分のことだけを知っていても、実は自分の特徴はよく理解できません。他者のことも良く知り、そのうえで自分と他者を比較することで、自分の特徴――長所や短所――への理解が深まるのです。つまり、他の国や他の人に興味をもつことは、自分たちの国や私たち自身をより深く知ることにもつながるということです。授業やゼミでは、こうした「比較」をとおして初めて理解できることと、その重要性について、少しでもお伝えできればと思っています。

(赤枝 尚樹准教授)