性感染症─ 自分自身を大切に─

性感染症のリスクを減らすためにコンドームを使おう

 HIV感染症、梅毒等、性行為によって人から人へうつる感染症を性感染症(STI)といいます。また、性行為以外の原因で感染することもあります。
 性感染症は症状がないことが多く、知らない間に感染していることがあります。性感染症によっては、のちに不妊症、癌になるものもあります。
 例えば、ヒトパピローマウイルス感染症の一部は、子宮頸癌と関係があります。また、性器クラミジア感染症、淋菌感染症にかかっている人が、気がつかないまま放置し、不妊症になることがあります。
 性感染症にかかっているとき、HIVに感染しやすくなります。
 HIV感染症以外の性感染症のために、皮膚、粘膜に炎症や傷があると、健常時の数倍から数百倍、HIVに感染しやすくなります。一方、HIV感染症のため免疫力が落ちている場合、それ以外の性感染症にもかかりやすくなります。
 近年、若年層を中心に梅毒等の性感染症にかかる人が増えています。
特に、若年層ではコアになる人(性的に活発な人)を中心にして、性的ネットワークが放射状に広がっているのではないかと指摘されています。

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 性体験のある16歳の女子高生の17.3%が性器クラミジア感染症であったという報告があります。また、欧米では、コアになるような人ほど、コンドーム使用率が高いですが、日本ではコアになるほど使用率が低いのではないか*1と指摘されています。コンドームなしに、直接又は間接的にでも無防備なコアにつながる人は、感染のリスクが高いといえます。あなたは、「絶対に関係ない!」といえますか?

*1木原正博等「性的ネットワークと性感染症」日本醫事新報 No.4248 7-12頁 2005
 避妊の手段としてもコンドームは効果的
 性感染症から話がそれますが、コンドームはもちろん避妊にも効果的です。避妊せずに膣性交すれば妊娠する可能性があります(射精前に出るカウパー腺液にも精子は含まれるので、射精時にはコンドームを使用していたのに、その前に使用しなかったために妊娠してしまった人もいます)。望まない妊娠をしてしまえば、人工妊娠中絶を選ぶしかないこともあるでしょう。人工妊娠中絶によって胎児の生命は奪われ、母親は心身共に傷つきます。
 コンドーム(男性用)使用のポイント
 性感染症の予防や避妊のためには、コンドームの正しい使用が必要です。
○温度等保存状態に気をつけること。財布に入れておくと、摩擦や体温により劣化します。
○期限を確認すること。
○性交前勃起状態で装着すること。HIV感染者の場合、射精前後に出るカウパー腺液にはHIV が含まれています。
○射精後は、すぐに、精液がこぼれないようにはずすこと。
○ゴムアレルギーの人には、ポリエチレン製コンドームがおすすめです。

性行為中の注意
1 血液を介する性感染症では、感染者である女性との月経中の性交は、血液が混じるので男性が感染する確率は高くなります。男性が感染者である場合には、月経中の女性の膣粘膜は、病原体に対する抵抗力が弱くなっているので、女性は感染し易くなります。なお、月経中も妊娠する可能性は否定できません。
2 肛門性交は、直腸粘膜が傷つきやすい、出血しやすい、面積が広い、吸収機能が高いため、一般に感染のリスクは高くなります。
3 口腔性交は、妊娠の心配がないので多くの人がコンドームを使用しませんが、性感染症の予防のためには、使ってください。特に梅毒、淋菌感染症、性器ヘルペス、性器クラミジア感染症は感染します。HIV感染症の場合は、受け手側に歯周病等で出血があると、感染するリスクは高くなります。口腔性交専用のコンドームもあります。

女性の方へ
 女性性器は妊娠しやすくするために、精液をためる構造になっています。そのため性感染症は男性から女性への感染率が高いことが多いです。また、女性の性器は膣、子宮、卵管を通じて、おなかの中につながっていきます。病原体もこの道をとおり、おなかの中へ侵入することもあります。性器クラミジア感染症、淋菌感染症等のため、卵管に病気がおよぶと、不妊症や、妊娠したときに子宮外妊娠になることもあります。性感染症によっては、胎児に影響するものもあります。
 パートナーが性感染症の予防のためにコンドームを使うことが念頭にない場合でも、あなたのことを本気で考えてくれるのであれば、望まない妊娠を防ぐためにコンドームを使ってくれるはずです。もし、コンドームの使用についてパートナーに言い出しにくかったとしても、これはとても大切なことなので、2人でじっくりと時間をかけて話し合いましょう。あたり前のことですが、ピルでは性感染症を防げません。女性用コンドームも発売されています。なお、荻野(オギノ)式は避妊法ではありません。膣外射精では確実な避妊を一切期待できません。
 自分たちの性感染症の予防や避妊方法が正しいのかどうか、パートナー任せにしないでお互いに勉強してください。自分の身体は自分で守るようにしましょう。

HIV感染症

 HIV感染症とは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染して起こる病気です。HIVに感染すると、身体を病気から守る免疫システムが攻撃されます。HIVに感染したのち治療を受けなければ、自覚症状のないまま潜伏期を経て、やがてエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)を発症するといわれています。
 なお、HIV感染者は、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高いといわれています。

 感染経路 血液(浸出液にも注意!) 精液 膣分泌液 母乳
 少しでも心配なことがあった人は、原則として3カ月以上たってから検査を受けてください。万一感染していた場合でも、早期に治療を開始し、薬を適切に飲み続けられれば、生涯エイズを発症しないのではないかと言われています。たとえエイズを発症したとしても、合併症の予防・治療は進歩しています。また、治療によって体内のウイルス量を持続的に抑制すれば、性的パートナーへの感染を防止できるとされています。HIV感染症は、今では慢性疾患の一つです。
 こんなことには要注意!!
○スポーツ時等の出血の手当てや、血液がついた物の処理には注意しましょう。
○消毒していない針をもちいての、ピアス、入れ墨、脱毛は危険です(肝炎にかかる危険もあります)。
○酔っぱらって理性を失ったときの性行為には、特に注意しましょう。
○流行地域での輸血用血液は、HIVが混入している可能性があります。先進国でも、HIVの混入した血液を完全に除けるわけではありません。また、海外では医療器具の消毒が不十分な病院もあるかもしれません。
○薬物乱用はもってのほかですが、特に注射の回し打ちは危険です(薬物乱用防止ページ参照)。

Note 1  薬害エイズ事件
 主として血友病の方に、1983年3月に米国が加熱凝固因子製剤(感染の心配なし)を認可してから我が国が認可する1985年7月までの2年4カ月の間に、HIVが混入した血液製剤(凝固因子製剤)の注射が行われ、多くの方がHIV感染症となりました。本件は、裁判所が国(厚生省〈現厚生労働省〉)と製薬会社の責任を認めたうえで、和解勧告が1995年に出され、翌年3月に、原告、被告の双方が和解案を受け入れました。

 HIV感染症に関する正しい知識をもって、エイズ患者や感染者に対する誤解や偏見をなくしましょう。
 完璧な治療法が確立されているとまではいえない現在、患者、感染者にとっては周りの人たちの理解と励ましが、たいへん重要です。偏見は誤った知識から生まれるといわれています。正しい知識を身につけ、共生できる社会を作っていくことが、新たなHIV感染を防ぐことにつながります。

 関西大学保健管理センターでは、本学の学生のために、HIV感染症を含め健康に関する相談に応じています。また、次の機関等でも相談を受け付けています。

相談機関 時間帯 電話番号
吹田市保健所 平日のみ 9:00~17:30 06-6339-2227
高槻市保健所 平日のみ 8:45~17:15 072-661-9332
堺保健センター 平日のみ 9:00~17:15 072-238-0123
エイズ予防財団 平日のみ 10:00~13:00
14:00~17:00
0120-177-812
携帯電話の場合
03-5259-1815

 HIV検査

 少しでも心配な人は、感染した可能性のある日から原則として3ケ月以降に検査(静脈採血)を受けてください。
 早期発見・早期治療はエイズ発症抑止につながります。検査結果は本人に直接伝えられますので、プライバシーは完全に守られます。
HIV検査・相談マップ www.hivkensa.com/

~無料匿名検査を受けるなら~

実施場所 URL 電話番号
吹田市保健所 www.city.suita.osaka.jp/1000123/1017319/1017321/1017322/1017688.html 06-6339-2227
高槻市保健所 www.city.takatsuki.osaka.jp/soshiki/38/69007.html 072-661-9332
堺保健センター www.city.sakai.lg.jp/kenko/kenko/kansensho/kansensho/kensa/ 072-238-0123
大阪市北区保健福祉センター www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000371513.html 06-6313-9882
chot CAST なんば
大阪市中央区東心斎橋1-7-30
21心斎橋ビル4F
www.smartlifeclinic.com/ 06-4708-5035

*実施日については電話又はHP等でご確認ください。
また、検査は予約制となっている場合がありますので必ず事前にご確認ください。
原則としてすべての保健所で実施されています。

Note 2  友人からHIV感染者であることを告げられたら?
 まずはじっくりと友人の立場にたって話を聞いてあげてください。日常生活では、まずあなたに感染することはありません。理解と励ましをもって今までどおり付き合ってください。

 HIVの検査目的で献血するのは絶対にやめよう!!
 感染後一定の期間は、HIVが血液中に存在してもHIV検査が陰性になるため、その血液を使った人にうつす恐れがあります。なお、献血でのHIV検査結果は、本人には知らされません。

HIV感染症以外の性感染症

 予防方法はHIV感染症と同じです。性行為の際にはコンドームを使用してください。なお、コンドームの予防効果は病原体によって異なります。HIV検査以外の性感染症の検査については、各保健所にご相談ください。

病 名 潜伏期間 症状等
性器クラミジア
感染症
1~3週間 男性...50%ぐらいの人が無症状。尿道から分泌物、排尿痛あり。
女性...70%以上が無症状。おりものが少し増加することがある。
性器ヘルペス 2~10日間 性器に水疱と浅い有痛性の潰瘍。再発することが多い。母子感染もある。
ヒトパピローマ
ウイルス感染症
数週間~8ヶ月間
(良性型)
ヒトパピローマウイルスは100種類以上あり、その中に尖形コンジローマを引き起こす良性型と、子宮頸癌(注)の原因となることがある悪性型がある。尖形コンジローマでは、外性器、肛門等に乳頭状、鶏冠状のいぼができるが、悪性型の感染では自覚症状はない。
* なお、ほとんどの子宮頸癌は、ヒトパピローマウイルス(悪性型)によって発症するといわれている。
梅毒 3週間~6週間 外陰部に無痛性のしこりができ、その後潰瘍となる。放置していても症状は治まるが、治療しないと脳をおかしたり、母子感染をおこす。近年急増している。
淋菌感染症 2~7日間 男性...排尿痛あり。尿道から膿がでる。
女性...自覚症状のないことが多い。
B型肝炎 1~6カ月間 感染力は非常に強く、血液、精液、膣分泌液等を介して感染する。症状は全身倦怠感、黄疸等。成人であれば、たとえ感染してもキャリア(ウイルスが肝臓に住み続ける人)になる人はほとんどいないといわれていたが、キャリア化しやすいタイプ(本来欧米に多く存在)の感染が、国内の若者の間で広がっている。劇症化する頻度は低いが、いったん起こした場合致命率は高い。予防・治療法は日進月歩であり、よくなる、あるいはコントロールできるようになっている。
C型肝炎 2~16週間 性行為による感染は存在するが、ごくわずかと考えられている。症状はB型肝炎に似ているが、感染力は非常に弱い。感染した場合には、6割以上の人がキャリアとなり、未治療の場合数十年かけて高確率で慢性肝炎、肝硬変、肝癌へと進展する。治療法は日進月歩であり、よくなる人の割合が非常に多くなっている。