香川県研修 高松丸亀商店街・四国こどもとおとなの医療センターについて
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執筆者 ウエサカアサ
亀井ゼミ一同で、香川県へ向かいました。
その日の夜に訪れたのが、「高松丸亀商店街」です。この商店街は、香川県の県庁所在地である高松市の中心部にあります。しかし日本における多くの商店街であるように、この商店街も以前まではシャッター街と呼ばれるものでした。
現在、高松丸亀商店街はショッピングが楽しめる場所となっていました。屋根をガラスで覆われていて、昔からの商店街という形のものと、まるでアウトレットや商業施設の一角のような空間が織り交じっています。私が印象的だったのは、商店街であるにも関わらず百貨店に入っているような高級ブランドが一階に並んでいて、しかもその上の階には近くの住民が訪れるような医療クリニックがあったことです。これは商店街の4階から上にはマンションが整備されていることが理由です。ここに暮らす住民は「玄関を出たらすぐ三越」という街中に暮らすメリットがあるということであり、「まちのシューレ963」という四国特産品を扱うショップの上層階には診療所も設けられていて在宅で高度医療、終末医療を受けることもできるというメリットがあります。この健康・福祉・医療サービスは、高松市の中心市街地であるこの商店街の新たな強みとなっているそうです。このような再開発でこの商店街の通行量は大幅に増加し、空き店舗率はゼロとなっています。
高松丸亀町商店街振興組合が再開発に乗り出したのは1988年で、ドームや建て替え、アーケード制作を行い始めました。その際、城下町時代に短冊状に細分化された土地の上に共同でマンションを建設する必要があり、個々の土地所有権には手をつけずに共同でビルを建て、地権者たちが設立した会社が取得・運営する仕組みを作って解決することで開発は成功しました。
翌日には、「四国こどもとおとなの医療センター」へ向かいました。
この病院はホスピタルアートについて熱心に取り組んでいて、専属のアートディレクターの森合音さんにお話しを伺いながら病院内を案内していただきました。
森さんはホスピタルアートについて対話というコミュニケーションを通じて患者さんや医療スタッフの想いをかたちにしてゆくことと全員参加型の病院づくりを目指しているとおっしゃっていました。看護師の方などの様々なひとの「痛み」を聞き、その声をもとにアートで救うということを行っていて、善通寺が近くにあるその場所で育った土壌や制作のプロセスである「アール・テノワール」も含めて日々成長を続ける病院づくりの取り組みがこの病院のホスピタルアートだとされていました。
私が印象に残ったのは、亡くなられた患者様を霊柩車まで運ぶ通路での青い花の制作のお話です。患者様を送り出すための通路の汚れや暗さに「痛み」を感じていた看護師の方とコミュニケーションをとってヒアリングして、その通路に5分だけいろんなスタッフの方が集まって青い花を描くというプロジェクトを調整し作り出した森さんは、その制作中に患者様だけでなくアートは看護師やスタッフの「痛み」に気づいたというお話をされていました。その青い花を描いているときに泣いていたスタッフの方やその通路を実際通った患者様のご家族のお話を森さんから聞いて、病院でのアートには「ご縁」で関わる全ての人がサイクル状に繋がりを持たせるような力があり、実際いろんな関わる全ての人にとっての癒しへと繋がるのだと改めて感じました。また、「痛み」の原因として話が伝わってこないことが大きいというお話も印象的で、これは医療の現場だけでなくすべてのことにおいて通じることだと感じました。