気仙沼とフランスをつないで 気仙沼調査研修/デシャン教授親子と過ごした3日間(1)

亀井ゼミ 3年 ゼミ長 村田悠人

1. 1日目 2022年10月30日


i. 初めて肌で触れたフランス語

10月30日,研修の一日目は東京だった。その日の夜はグルノーブル大学から来られた・ベランジェール・デシャン教授とそのご子息との夕食会兼意見交換会だった。会場となった店の経営者がフランスに店を出すことを計画しておられ、日仏談義に花が咲いていた。
フランス語での会話が飛び交い,困惑しながらも内では高揚していた。映画でフランス語の会話を見ることは多かったが,生のフランス語は初めてだったため以前に増して美しい言語であると感じた。フランス語は絶対に習得したい言語であると改めて思った。

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2. 2日目 10月31日


i. 日仏対面と公開討論会

10月31日,研修2日目早朝から気仙沼に向かった。その電車の中でデシャン教授のご子息であるファントン君と会話が弾み,自分とは全く違う世界に住む人と仲良くなれたと感じすごく嬉しかった。デシャン教授も私には英語で気さくにお話しくださった。
そして迎えた「事業承継を考える日仏公開討論会・気仙沼とフランスをつないで」で、亀井教授,デシャン教授,そして9月の調査の際に温かく多くを教えてくださって、もはや身近であるとすら感じるほどのオイカワデニム及川秀子さんがご対面された。
事業承継という題目に対して、亀井教授自身が司会と通訳(仏→日、日→仏)をしながら、日仏共同で講演するというのは凄まじいことであり筆舌に尽くしがたいと感じた。講演会は、亀井教授とデシャン教授が2020年にフランスで出版された事業承継の事例研究書の中で、オイカワデニムの事例を共同執筆したことがきっかけとなり、実現した。企画と運営を担ったのは斎藤一寿さんをはじめとする気仙沼市の産業戦略課の方々だ。会場となった気仙沼市役所ワンテン庁舎の大ホールには50人の人が集まった。及川秀子さんの人望と、気仙沼市、産業戦略課の皆さんの努力の賜物だと感じた。
司会の亀井教授が最初にフランス語のプチ講座から公開討論会を始めたので、会場は笑いに包まれ、及川さんをはじめ参加者の方々の間で「サバ~?(元気?)」「ウイ、サバ(うん、元気だよ)」が流行り言葉のようになっていた。終了後は、熱心な質問が多く出ていた。

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ii. 事業承継

デシャン教授がオイカワデニムの事例をフランスの本で扱われた理由は2つある。一つ目は,女性が経営者として企業経営を引き継ぎ,それを「繋いでいる」からである。二つ目は,オイカワデニムの壮大な物語を知り感動したからである。デシャン教授は,その本に日本の,高齢化や政府の政策,女性経営者,事業承継について最初に述べ,オイカワデニムと及川秀子さんについて綴っている。
そして3つの設問を通して経営学の授業で学生たちに普及しているという。そしてデシャン教授は及川秀子さんに,どのように息子さんに事業を継承したのかとご質問された。及川さんは,震災後から意識して経営を改善,社訓も「丹精・高品質を届ける」から「地産・地消」へと変更し,「認めきる・信じきる・任せきる」の信念で経営を遠くから見つめると決意したとおっしゃった。今では,従業員の方々が働きやすいように動いているそうだ。
続いてデシャン教授は,どのように知識・ノウハウを伝えたかとご質問された。及川さんは,全ての人を尊敬し,信頼し,期待しなさいと伝えたという。ここで,オイカワデニムの事例では,社長を継いだ息子の洋さんには利益を出すということよりもより良い世界にしたいという想い,そして常にそれが正しいか自問自答できる力がある。秀子さんは息子に事業を承継し人として優れた経営者になってもらうために,尊敬や信頼など人として重要なことを伝え,それをしっかり信じて任せきるという意識をお持ちである。事業承継の素晴らしい一例であると感じた。承継する側も託す側も同じ熱量で互いを信じ合っていて,これほどまで綺麗に承継できることは稀だろうが,このような事例を学ぶことはすごく刺激を受けられる。

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左から亀井教授,デシャン教授,及川秀子さん

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