気仙沼市・菅原市長を表敬訪問 気仙沼調査研修/デシャン教授親子と過ごした3日間(2)

亀井ゼミ 3年 ゼミ長 村田悠人

3.3日目


i. 気仙沼市・菅原市長のリーダー論

 11月1日,研修3日目,グルノーブル大学のデシャン教授と亀井教授と共に, 気仙沼市長の菅原茂氏を表敬訪問した。昨日のオイカワデニム及川秀子会長との日仏公開討論会を終え,今回の企画のきっかけとなったフランスの事業承継事例研究書と日本語訳の冊子が菅原市長に贈呈された。
 菅原市長は,市長に就任された翌年に東日本大震災を経験され,壮大な危機を乗り越えてこられたということもありとても強いオーラを感じた。そんな市長は,真のリーダーとして必要なことは組織をマネジメントする能力がある者でも,皆のモチベーションを上げるキャプテンシーがある者でもなく,それらを網羅的に持つものであると仰っていた。まさしくその通りであると思った。組織管理ができても皆を鼓舞できなければ働きやすいとは言えず,ただその場を盛り上げるだけでも潤滑には回らないだろう。さらにリーダーは明確な目的,いかに変革をもたらすことができるかなどを常に考えていなければならない。キャプテンのような盛り上げ上手な人が多い組織でもリーダーにヴィジョンや展望がなければ素晴らしい組織であるとは言えないということを学んだ。
 そしてデシャン教授が市長は何人を率いているかと尋ねられた時に,市役所に勤めている800人を統率することよりも、60000人の市民全員がより良い暮らしをできるよう考えることこそ市長のすべきことだと仰っていた。全てのリーダーがこのような考え方を常にしていたらどれほど世界は良くなるだろうと思った。

ii. より良い事業承継


 メインテーマの事業承継に関しては,利益を出しているというよりは,親子関係ではない誰かがその会社を継ぎたいと思う会社こそが成功している会社であるとおっしゃっていた。現在,親子間継承が減少しており,従業員や外部の人に継承する形が増えつつある。つまり,家族であるかどうかに関わらず,継承する側がしたいと思える会社が強いというのはまさにその通りであると感じた。

iii. 危機管理とリーダーシップ


 いよいよ私が質問する番が来た。私が自己紹介させていただいた際,社会安全学部という聞き慣れない学部に驚いていらっしゃった。しかし,危機管理とリーダーシップに興味がありそれを掘り下げて研究したいと言うと,いろいろお話下さった。リーダーには常に危機管理が求められ,市長もすごく意識していると言ってくださった。そして,これ以上調べることができないほどに調べ,これ以上できないくらいに対策を練らなければいけないという。しかし,それほどまでに備えたとしても不幸な結果を防ぐことができるのは95%であるという。不確実性が存在しているために完璧に予防することはできない。その5%に当たり,悪い結果に至ってしまったとしてもそれはアンラッキーであり仕方がない。できる限りの備えをしていたためそれは仕方がなく悔しさもない。切り替えて前を向けばいいということだ。しかし,調べが甘かったり備えが不十分であったせいで悪い結果に導いてしまった場合それはミスである。このように,アンラッキーとミスには天地ほどの差があり,リーダーたる者,常に最悪を想定し,より良い方向に導くことが重要であると仰っていた。自分の中ですごく納得することができる説明であった。このように実際に危機を乗り越え,多くの人をより良い方向に導こうと常に考えておられる方の意見を拝聴させていただくことは自分にとってかけがえのない経験となった。
 このような市長と直接お話しする機会を設けて下さった気仙沼市,産業戦略課の皆さんに感謝したい。

写真1
左から菅原市長,デシャン教授,亀井教授,村田
菅原市長の手に気仙沼オイカワデニムの事例が載ったフランスの事業承継事例研究書、亀井教授の手にオイカワデニム製品