大王製紙の特別背任事例について

執筆者:藁谷 豪

ゼミで発表した内容について紹介します。

まず初めに大王製紙について紹介したいと思います。 現在の大王製紙について事業内容は紙・パルプ・日用品雑貨の製造販売・植林事業となっており、皆さんがよく知っている商品としては「エリエール」が挙げられます。本部所在地は東京都千代田区、設立は1943年、純利益連結で191億9,900万円、従業員数は連結で10,388人となっており、大きな会社となっています。
 この事例の発端としては、この会社、家族経営なんですが、創業家から3代目にあたり当時、大王製紙の代表取締役会長をしていた井川氏が連結子会社計7社から不正に受けた105億円を貸付金に計上すなわち横領したことにあります。 このお金、井川氏が海外での賭博で負けたことによる支払いに使われました。 先に言っておきますがこのことがばれた時点では47億円が返済されていましたがまだ59億円の貸付金額が残っていました。
 次にこの事例がばれて大きく問題になった経緯なんですが2011年に先ほどの井川氏の個人口座に3億円を振り込んだ旨を連結子会社である赤平製紙が関連事業部に報告。その後の調査により代表取締役を兼務していた7社から巨額の不正貸付が行われていた事実が発覚しました。7社の代表取締役としての善管注意義務及び忠実義務に違反、自己の利益を図る目的で本件貸付を指示し、財務上の損害を与えたとして会社法違反容疑、特別背任で起訴され、最終的には逮捕されました。
 さて、横領などの事例は他にもありますがこの事例が特に注目されたのには3つの問題点があります。1つ目は融資が取締役会の決議や貸借契約書を作成することなく実行されたこと、2つ目は経理部、会計監査人の対応が不適切であったことそして社外監査役の対応が不適切であったことです。 1つずつ見ていくと、
 まず問題の一つ目ですが、7社の常勤役員に対して資金の使途を説明しないばかりか他言しないように命じ、取締役会の承認も得ない等必要な手順を省いた融資が繰り返し行われました。 
 問題の二つ目は不適正な会計監査。
 問題の3つ目は社外監査役の機能不全についてです。 監査役はその名の通り取締役の職務執行の監査をする機関で大王製紙には非常勤も含め、計5人の監査役がいましたが財務会計に関して知識を持っている人がいませんでした。そのため先ほどのずさんな会計監査人や経理部から報告を受けるのみとなっていたため、うまく機能しませんでした。なお、このように会社を強く支配しているもののもとでは、社外監査役の活動が非常に重要となりますが、先ほどの5人のうち3人が社外監査役なんですが全員が独立性に問題がありました。内2人はもと井川氏の父親の同級生であるとかうち一人は弁護士で大王製紙と顧問契約を結んでいたり、報酬が900万円と高額であるなどの問題がありました。
 この後、一族の影響力排除を目指す経営陣と井川一族との対立が続いたが、井川一族が大王製紙及び関連会社の株式を譲渡し、その譲渡相手が筆頭株主となり、同族経営は終了しました。 現在の大王製紙の役員一覧にも井川一族の名前があるのは1人だけ、しかも、取締役などではありません。 ちなみに今回の事例で出てきた井川氏2016年に仮釈放をうけ、その後どうしたかというとカジノの次は麻雀こりてませんね。
 以上のプレゼンが内容でした。