東芝不適切会計について

執筆者:藁谷 豪

前の文章に続きゼミで発表した内容について紹介します。

まず、東芝についてですが事業内容は電子部品、原子炉、重電機、軍事機器、鉄道車両など、企業間取引による重工業分野です。本社所在地は東京都港区芝浦、設立は1904年。純利益は連結で1146億33百万円の赤字となっており、従業員数は12万5648人となっています。
 さて、今回の事例の経緯についてですがまず内部通報を受けて証券取引等監視委員会が実施した検査で不正会計が発覚。弁護士・公認会計士からなる第三者委員会が設置され、調査し、報告書が公開される。有価証券報告書を本来の期限より2か月遅れて提出。当初1200億円と見込まれていた当期純利益が378億円の当期純損失に。粉飾決算を見逃したとして監査法人が新日本監査法人からあらた監査法人に。米国で集団訴訟され、日本国内からも複数の損害賠償請求が起こされました。
 要するにこの事例粉飾決算が行われたんですが、まず粉飾決算とは本来の業績より成績を良く見せるということです。 それではなぜ粉飾決算が行われたのか原因としては経営トップらの関与を含めた組織的な関与で当期利益の嵩上げや費用・損失計上の先送り、工事損失引当金の計上の承認を拒否したり先延ばししたこと。「チャレンジ」と称して設定した修繕改善の目標値への達成を強く迫る、これ例としてはある会社の赤字見込み額が248億円であるのに3日間で120億円の改善を強く求めた等です。あとは上司の意向に逆らえない企業風土、不適切な会計処理が、外部からは発見しにくく、巧妙に行われたこと、各カンパニーの内部統制が機能していなかったことが挙げられます。ちなみになんですが、4事業年度連続赤字の場合上場が取り消される可能性があり、そうなると結果的に株価が下落し、資金調達が難しくなります。こういったことも要因として挙げられます。
 次に先ほどの第三者委員会による報告書の内容について説明します。
まず1つ目、インフラ事業における工事進行基準です。工事進行基準とは数年かかる工事に用いられる会計処理で工事の進捗度を見積りそれにに合わせて収益と原価を割り振る方法なんですが、見積はおもうままに設定できるため、東芝は本来なら受注時点で赤字が確定しているのに損失引当金を計上せず、利益を水増ししていました。
2つ目は映像事業の経費計上で主にテレビ事業で、取引先に請求書の発行などを遅らせてもらい、広告費や物流費を翌四半期に先送りにしたり、グループ間の未実現利益が消去されない例外を利用し、東芝から海外現地法人へ販売する製品価格を、期末に増額させていたこともあったとされます。
3つ目は半導体事業部の在庫評価でこれは損失を認識していたにもかかわらず、在庫の廃棄まで評価損を計上しませんでした。売れ残っている在庫はだいたい決算ごとにその時期ならばどれぐらいで売れるかを測り、本来との価格との差額を益もしくは損として計上するんですが、東芝の場合在庫の評価額が損だったのに計上しませんでした。するとどういったことが起こるかというと、本来ならば財務諸表において減らされるはずの利益がそのままになっており、結果的に利益の水増しに繋がりました。 また、北九州工場が閉鎖される際には、製品を造りだめしたところ、需要予測を誤ったために在庫が滞留し、後になって廃棄処理をしていました。これも損失を隠し、先延ばしにするというものでした。
4つ目最後ははパソコン事業の部品取引です。東芝グループは仕入れたパソコン部品について、台湾のODM(組立会社)に有償支給し、その際の値段を調達価格の4~8倍で売っていました。これぞくにいう外注加工というんですが、構造としてはまず東芝が部品を仕入れます。次にODMに仕入れた部品を売って加工してもらい、加工してもらった部品をもう一度東芝が買い取るという仕組みになっているんですが東芝はODMに部品を売る際に値段を高額に設定したため、普通ならばそんなに利益の出ないところで大幅な利益が出てしまい、営業利益が売上高を上回る異常値を示しました。
ここでなぜ監査法人が不正会計を見抜けなかったかですが、要因の一つとしては監査法人が提供された会計基準に照らし合わせ監査するのが役割で不正を見抜くことが仕事ではないという業界全体の風潮があり、世間の期待とギャップが存在していたとにあります。
監査委員会による内部統制が機能していなかったことも原因です。
最後にこの事例ののち再発防止に向けて様々な改革が行われました。経営陣の責任の自覚、経営トップの意識改革、「チャレンジ」の廃止、企業風土の改革、強力な内部統制部門の設立、今回機能していなかった取締役会、監査委員会による内部統制の強化、社外取締役の増員及び構成員の見直し等です。
以上がプレゼンの内容でした。
参考文献「決断力にみるリスクマネジメント 」(ミネルヴァ書房、2017年)