山崎ゼミ 2024年 北海道フィールド調査報告

北海道胆振東部地震の教訓:厚真町の復興とその挑戦

2018年96日、北海道胆振東部地震が発生し、多くの地域で甚大な被害をもたらしました。その中でも、厚真町では土砂災害が最大の課題となりました。この町で見た復興の姿と残された課題について、実地調査を基に振り返ります。

土砂災害がもたらした壊滅的な被害

地震当時、厚真町の吉野地区を訪れた際、土砂災害の深刻さに言葉を失いました。家屋が無事だったのは、わずか1軒のみ。災害の規模を目の当たりにし、その恐ろしさを実感しました。現在、町内では砂防ダムの建設や山の斜面の補強が進んでいますが、未だ手付かずの山林も多く、完全な復興には時間が必要です。

災害対応の成功事例

厚真町の自治体は、地震発生直後から迅速かつ的確な対応を行いました。「人命の安全確保」と「業務の継続」を優先し、避難所の運営では驚くほどの効率性を見せました。避難所が過密になる可能性を想定し、帯広市に協力を依頼。さらには、キャンピングカーを寄付する民間事業者の協力もあり、災害関連死を1人に抑えることができたのです。この迅速な対応力は、他の自治体にも学ぶべき点が多いと感じました。

仮設住宅と復興への壁

復興を進める中で、国から「特定非常災害」に指定されなかったことが、厚真町にとって大きな障壁となりました。この指定がないことで、仮設住宅の供与期間延長が認められず、被災者は早急に新しい住居を見つける必要がありました。他の震災と比較すると、被災者への負担が重かったことは否めません。

人々の帰還と地域コミュニティの力

それでも厚真町では、町民の自己再建率が高く、町外転居率が低いという成果が見られました。その理由の一つは、自治体が復興の目標を明確に掲げ、住民の生活再建をサポートしたことです。もう一つは、地域交流センターでのイベントや集会を通じて、住民同士のつながりを深めたことです。これらの取り組みが、町の人口減少を防ぎ、地域の活性化につながりました。

厚真町から学ぶこと

厚真町の復興は、災害対応のモデルケースとして多くの教訓を与えてくれます。被災地の早期復興には、自治体の迅速な対応とともに、住民同士の支え合いが不可欠です。そして、復興の課題に直面した際も、それを克服するための柔軟な姿勢が必要です。厚真町の事例は、私たちに「地域の力」の大切さを教えてくれました。

震災の爪痕は深いですが、復興への道のりには希望があります。厚真町の挑戦は、これからの災害対応や復興の在り方にとって良いお手本となるでしょう。

(執筆:山崎ゼミ三回生 饗庭迪弥)

※このブログは、2024918日(水)に北海道厚真町を訪問した際に得られた知見をもとに作成をしました。厚真町役場の方々には多大な協力をして頂きました。ここに感謝の意を表します。

写真1
写真1
写真1
写真1
写真1