阪神・淡路大震災から26年目のKOBEを歩く―神戸市長田区・駒ヶ林地区編―


はじめに

菅ゼミで3月31日に兵庫県神戸市長田区で感染症予防を徹底しながらフィールドワークに行ってきました。長田区には、戦災も、震災も免れた地区が残っており、その一つである「駒ヶ林地区」について、関根・成田・和賀井・和田の4人が、レポートします。以下の地図に示す経路順に紹介します。

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狭い路地

・路地の幅は平均2メートル弱となっている。

・子供達の遊び場や、漁の作業をするなど公私混じった重要な役割を担っていた。

・「ひがっしょ路地」とよばれているこの地域の路地は建物と建物の距離が非常に近いため、火災が起こった際に延焼する可能性がある、避難路の確保が困難である、といった問題が指摘されている。

・一方で、駒ヶ林の入り組んだ細い路地は昔ながらの特徴で残していきたいという地域住民の思いから、道幅を広げるのではなく空地を作るという選択に至っている。

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最近整備されたと思われる路地入り口には「ふれあい小路」と書かれたタイルがあり、外から来た人に街歩きを楽しんでもらうための工夫ではないかと思った。

(参考)神戸市 駒ヶ林住みよいまちづくり構想https://www.city.kobe.lg.jp/documents/23024/komagabayasi_kousou.pdf


そして港の方へ向かい歩いている途中にたくさんの地蔵を見かけました。

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本体の無い地蔵

・道端の地蔵は地域を守る存在として建てられていることが多く昭和初期から神戸の地蔵信仰は盛んであった

・高度経済成長時、長田区には1Hrあたり20の地蔵があった。

・震災後、生存者が地蔵を仮設住宅へ持って行き祀りなおすなどの動きも見られた。

・現在も駒ヶ林には全部で17か所に地蔵がある。

・地蔵の数や現在も残されていて花が供えられていることから、長年この地域が住民に大切されている証拠だと思った。

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双葉地蔵尊:駒ヶ林を代表する名松「ニ葉の松」のそばにあったためこの名前が付いた

(参考)地蔵と都市災害 森栗 茂一  神戸まちづくり研究所/大阪外国語大学http://www.cpij-kansai.jp/commit/publici/lett16/08.html


空地の有効活用

狭い路地を抜けると相反するように大きなスペースが点在していました。

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・まちなか防災空き地」として、住民が整備し、管理している。

・また平常時には地域住民の憩いの場や子供たちの遊び場、芸大生の活動拠点としても活用されている。

・建物火災の延焼を防ぐだけでなく、防災の拠点となったり、コミュニティを強化する役割を担っている。

・災害時には、一時避難場所として活用されている。

・放置された空き地が残っている課題が残されている。

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「まちなか防災空き地」の標識

参考:近代都市計画により消えゆく路地を残せ!ひっがっしょ路地のまちづくり計画 上江洲規子 https://www.homes.co.jp/cont/press/reform/reform_00176/


家屋にも目を向けていると商店街などがリノベーションされていくなかで、長屋や古い排気筒などが、新しく作られていく街並みや道幅が大きくなり綺麗になった道路と、相反するように存在している昔ながらの風景が気になりました。

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残る古風な街並み

長屋の空き家は倒壊する危険性もあるが、駒ヶ林地区では、まちづくりコンサルタントの方々が関わり、内装だけをリノベーションして若い世代に貸し出したりしており、街並みを壊さない努力の表れだと思った。


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駒ヶ林にて再開発地域の遠望

駒ヶ林より、長田中心部の再開発地区を見たこの一枚は、我々に幾ばくかの想像を提起するに至りました。

すなわち震災後の復興建築を遥かに望むことが、この駒ヶ林という土地が震災と隔絶され、再開発の前後を見るうえでの空間的サンプルであること、また一方でこの土地が未だ災害の猛威を受けていない故に、大きな不安要素を抱えている事を、我々に示しているのではないかと思いました。

駒ヶ林という空間は今までもこれからも、重要な役割を果たしていくものであると思います。


まとめ

 駒ヶ林には長屋や狭い路地をはじめとした昔ながらの街並みが残されており、地域住民が地域を大切にしていることがわかりました。

 実際にフィールドワークという形で歩いてみることによってより実感を得られたと思います。

 一方で路地が狭い点や昔ながらの木造建築が多いということは、災害時には危険が多く潜んでいるということでもあります。そこでぼうさい空き地などの対策がこれから充実されていくことが重要であると思います。

 しかし、日本医師会の調査によると2015年において65歳以上の高齢者が住民の33%を占めており、今後誰が問題改善を担っていくのかが大きな課題になるのではないかと思う。