卒業研究発表会 審査員賞受賞!「日本ワインの現状と課題―久住ワイナリーの事例」

執筆者 亀井ゼミ4年 岩尾恭平

2022年度 関西大学 社会安全学部 卒業研究発表会(2023年2月17日)において審査員賞(林能成教授)を受賞しました!

卒業研究のテーマは 「日本ワインの現状と課題 ー久住ワイナリーの事例」 です。 文献研究をした上で、アポをとり、実際に久住ワイナリーに足を運び、経営者・醸造責任者の方に一対一でインタビューしたかいがありました。

発表の動画は以下で見れます。

https://youtu.be/BcECZgUiNDA

以下は卒論の内容です。

・研究の背景と目的

2018年に「果実酒等の製品品質表示基準」(国税庁告示18号)が定められ,ますます日本ワインの生産と消費の拡大が期待される中で生まれる課題について,予備調査を経て,大分県にある久住ワイナリーに着目して調査し提言する.

・事例研究

(1) 久住ワイナリーとは:久住ワイナリーは標高850メートルの冷涼な高原地帯にあり,6ヘクタールのぶどう畑で契約農家には頼らず自社の社員だけでぶどうを栽培している. 2018年に当時の醸造担当者が退職し,ワイン造り未経験の土持浩嗣氏がワインの醸造を担うことになった.暗中模索状態の土持氏の力になったのは同じワイン業界の先輩たちであった.業界第一線を走る醸造家に教えを乞うために土持氏は各地を飛び回り質問をし続けた.一昔前であれば,1人の師匠に弟子入りし,何年も下働きをして技術を学ぶという世界だったはずである.このようにして完成した1年目のワインは3銘柄が2019年の日本ワインコンクールで銅賞を受賞し,2022年には「2019久住シャルドネcatwalk」がワイナリー史上初となる金賞を受賞した.

(2)久住ワイナリーにおけるインタビュー :2022年11月27日に久住ワイナリーを訪問し,土持浩嗣氏にインタビューを行った.

①ぶどう栽培を自社で行うことについて:「強みは収穫時期を自分たちで決めることが可能なため,状態の良いぶどうを醸造に使用でき高品質なワインを造ることができる.その一方で,安定的な収穫量が見込めないことが弱みとしてある.20トン採れる時もあれば,2022年は台風の影響で6~7トンしか収穫できなかった.そのため現在,行政に土地を見つけてもらい,新たに自社畑を増やす計画を立てている」

②日本のワイナリー数が年々増えていることについて:「日本は土地や人件費が高く,ぶどうもまとまった数が収穫できないことに加えて,台風や豪雨などの自然災害のリスクも他国に比べてある.ワイナリー数がこれから増えても上手くやっていけるところは少ないのではないかと思う.また,経験の浅い醸造家が増えることで品質の低い日本ワインが多く流通する懸念もある」

・結論

日本のワイン市場の拡大が期待される中,ぶどうの安定供給における自然災害のリスクや日本ワインの品質低下のリスクがあることが確認できた.今後はワイナリーと行政の連携,適切な法制度の構築が重要になってくる.久住ワイナリーの事例では,今後日本ワインの品質を高め世界に通用するワインを造り上げるには醸造家同士の情報交流が必要不可欠になることが確認できた.そして,日本ワインの品質概念が法的に定まっていない現在,日本ワインコンクールは日本ワインの品質と認知度を高め,消費者が健全なワインを購入する基準になると考えられる.

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