増田家のみかん -いすみ健康マラソン調査(2)-

八田千尋

卒業論文のテーマ「イベントツーリスムの現状と課題 -沿岸部地域の事例―」に関連して、2018年12月1日、2日に千葉県いすみ市で開催された、第11回「いすみ健康マラソン 増田明美杯」の調査を行った。

大会では、初日は児童が走り、2日目が大人の部であった。年に1度の大きなイベントということもあり、会場のふれあい会館には5,000人以上もの参加者であふれかえっていた。 老若男女問わずマラソンに関心があることが分かった。 健康志向の強い中高年齢層の参加者が目立ち、最高齢は80代の方であった。 こうした高齢の方への配慮もしっかりとなされており、各カテゴリーの最高齢参加者への表彰が行われていた。 コースはハーフ、10キロ、5キロ、3キロ、2キロ、1.5キロ、ファミリー1キロ、ウォーキング約5キロと分かれている。


各コースでタイムの上位10位者には地元の特産物や、協賛しているJR東日本提携のホテルの宿泊券などが贈られていた。 また、性別、年代別で受賞が行われており、賞をもらうことに熱意を燃やす方も大勢いた。 イベント会社がこのイベントを牽引しているのではなく、地元の方々や主催者でもある増田明美さんやその周囲の方々によって運営がなされている。 実際に完走した人にはみかんが贈られるが、そのみかんは増田明美さんのお父さんとお母さんが自ら育てたもので、このイベントのために毎回用意されている。

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ご実家にて増田家のみかんを会場に運ぶ準備



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増田家のみかんが2日目の完走者に配られる


早朝から参加者の誘導や挨拶を行っていたのは、増田明美さんの夫である。増田明美さんのご実家で大変貴重なお話も聞くことができた。 運営の裏側や、苦労や工夫、増田さんご自身についても話していただき、このイベントへの熱意が強大なものであると感じた。

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ハーフ11キロ地点でランナーにハイタッチする増田さん



いすみ市は沿岸部であるがゆえに津波、そして地震が発生する可能性が少なからず存在する。 その対策として、道の案内や、施設案内の用紙と並んで避難経路を示した用紙も置かれていた。 1部のみを掲示するのではなく、1枚1枚参加者が手に取れるように工夫がなされていた。 こうした避難経路に関しては、多くの人はあまり関心を持たない。 しかし、あえて個別に設置するのはよい工夫ではないかと感じた。実際に手に取る人は少なくなかった。 こうした工夫を小さな町のイベントで実行している点に感心した。 またマラソンの際に混乱や、事故を防止するように、増田さんをはじめ、司会の方、運営の方で声かけを行い、参加者の整列を行っていて、安全面への配慮が適切であると感じた。

結論 リーダーシップ。地域におけるイベントを軸とした観光政策においては、増田明美さんのようなリーダーシップ、地元の盛り上げ、安全管理が重要であることが、現地における観察と、増田明美さんへのインタビューで確認できた。かつての名選手の名前を冠するマラソン大会には他にもあるが、いすみ健康マラソンにおける増田明美さんのように、全面的に運営に関わっているケースは珍しい。

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みかん畑のあるお家



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いすみの特産物 伊勢海老