増田家の縄文土器 -いすみ健康マラソン調査(1)-

野原千里

私の卒業論文のテーマは「地域振興型市民マラソン大会の現状と課題」である。これに関する調査をするために、東京駅から特急で約70分の千葉県いすみ市で開催された第11回「いすみ健康マラソン」のマネジメントと安全管理の視察を行なった。

今回、大会の運営の中心を担うスポーツ・ジャーナリストの増田明美さんと木脇祐二さんから、直接お話を聞くことができた。

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スポーツジャーナリスト増田明美さんのご実家でインタビュー。畑を耕している時にお父さまが見つけられた縄文土器。

いすみ健康マラソンは、1984年のロスアンゼルス・オリンピックに出場した増田明美さんの地元であり「身近な田舎」をキャッチフレーズに今年で11回目となる大会である。増田さんは、大会に参加するだけではなく運営の中心となり大会に大きく関わっている。地域を巻き込んだイベントを開催するにあたり「リーダーシップ」を発揮し引っ張っていく者がいることが必要である。

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開会式



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木脇祐二さんにお話を聞く。「初日は小学生の大会で地元を盛り上げ、2日目は全国から集まったランナーをおもてなし」



大会当日は臨時特急が駅に止まり、駅長さんもお出迎えとお見送りをしてくれる。増田さんは各車両に挨拶に回ってきてくださるなど、参加者に至れり尽くせりである。会場までの道のりには参加者を迎える横断幕が掲げられおり、いすみ市全体でランナーを歓迎してくれる。また、スターター、表彰式、ゴールでの出迎えを増田さんが全部の部門で行えるよう大会を2日間に分ける工夫もされている。これは、増田さんが表彰式などに立ち会えるようにするためである。1日目は小学生の部が開催される。これには、親子で大会に参加してもらおうという狙いがある。子供がマラソンを走るとなると必ず親が応援にくる。マラソン大会を開催する目的である「地元を呼びこむ」ための戦略でもある。また、コース上には、開催地が田舎で応援が少ないことから手作りのかかしが並べられていることがこの大会の大きな特徴となっている。東京マラソンや大阪マラソンなどの都市型市民マラソンの形を目指すのではなく田舎で開催されているからこそあえて田舎っぽく実施している。最後尾のランナーの後ろを走るのは、自動車ではなく、農耕トラクターである。このように、地元の人に愛される大会をつくることができ、癒しを求めた都会からの参加者を招き入れている。

大会を運営するにあたり成功のポイントとなるのがボランティアスタッフの協力である。そのため、おいしいお弁当を用意することが大切であると増田さんと木脇さんはおっしゃっていた。頑張ろうと思ってもらうためにはお昼ご飯という楽しみを十分に楽しんでもらうことが大切でありスタッフの方が元気でいることが成功させる秘訣でもあるなと感じた。

今回の視察を得て印象に残っていることが、高校生のスタッフの子が小学生がゴールした後に「おつかれ」「よく頑張ったよ」と声をかけ一人一人にハイタッチをしている姿を見かけたことである。自ら声をかけ高校生が小学生を迎える姿をみると心がとても温かかくなった。

大会期間中の2日間、町は大会で盛り上がり参加者を歓迎するムードが漂い笑顔が多かった。これが、地元を巻き込んだ地域復興型マラソンの形だと実感した。

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小学生の部、表彰式。男女別、学年ごと。今大会から、賞状をまず親に渡し、親から賞状を子どもに渡してもらう工夫がなされた。
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リスク感性は縄文的という教授
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