KANDAI HEADLINES ~ 関西大学の「今」

誠之館から、次代の学生会館へ。
大屋根リングとともに描く新たなキャンパスのかたち

文化・スポーツ

 2029年春、関西大学千里山キャンパスに、学生会館「誠之館群」の建替による新たな学生会館が完成する予定だ。
老朽化した誠之館群を建て替え、学生同士が出会い、学び、挑戦する新たな拠点をつくる―。
 この計画の中で、関西大学が象徴的な存在として受け継ぐことを決めたのが、大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」である。 万博会場で世界中の人々を迎えた木材が、今度は学生たちを迎える空間になる。これは単なる建材の再利用の話ではない。関西大学と大屋根リングとの縁は、万博が開幕するずっと前から続いてきた。

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完成イメージパース

リングの誕生を見守った学生たち

 関西大学と大屋根リングとの関わりは、万博開幕後に始まったものではない。大屋根リングの基本設計を担う東畑建築事務所が設計提案を進めていた頃、 そのプロジェクトに本学建築学科の学生たちも模型制作などで参画していた。後に万博の象徴となる建築物の誕生に、関大生も構想段階から関わっていたのである。
 また、2023年には大学公認学生団体「関大万博部」が発足。「万博のワクワク感を伝えたい」という思いから始まった活動は、当初20人程だったメンバーが140人規模へと発展した。
 学生たちは夢洲会場や千里山キャンパスを舞台に多彩なプロジェクトを展開し、万博を自分たちの手で盛り上げていった。キャンパスで開催した「関大万博フェスタ」では、多くの学生や地域住民が集い、新たな出会いや交流が生まれた。このほか、海外パビリオンでのアテンドなどを含むボランティアには総勢600人以上が参加した。【リンク:万博ボランティアで活躍した学生を特集した記事『大屋根リングの内側で』】
 人と人とがつながり、新たな挑戦が生まれる。その風景は、大屋根リングが象徴した「多様でありながら、ひとつ」という理念とも重なっていた。

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海外パビリオンで働く関大ボランティア

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関大万博部
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作成された模型

未来へ残すべき価値とは何か

 万博閉幕後、大屋根リングの保存・活用をめぐっては社会的な議論が活発に行われた。
 リングは単なる木造建築物ではない。大阪・関西万博という時代を象徴し、多くの人々の記憶を宿した文化的資産でもある。その価値をどのように未来へ伝えていくべきか、さまざまな立場から意見が交わされた。
 そうした中、本学理事長を含む関西7大学のトップらが連名で「大屋根リングのレガシー継承に関する緊急意見書」を公表し、その価値を将来世代へ受け継ぐ必要性を訴えた。 意見書では、大屋根リングを「極めて重要な文化的・歴史的価値を有する建造物」と位置付け、可能な限り保存・活用すべきであると提言している。 単に建築物を残すという視点ではなく、万博が示した理念や社会的意義を後世へ伝えることの重要性を訴えたのである。
 そして今回、関西大学はその思いを言葉だけで終わらせなかった。保存を訴えた大学が、実際にそのレガシーを受け継ぎ、次代へつないでいく。

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大阪・関西万博 大屋根リング(写真提供:共同通信社)

新たな学生会館に息づく、万博のレガシー

 学長は「誠之館は、学生同士が出会い、新たな挑戦や学びを生み出す場」と語る。さらに、万博で育まれた交流や経験を日常のキャンパスへと継承し、次代を担う学生たちの成長と新たな価値創造につなげたいとしている。新しい学生会館は、課外活動団体の拠点であると同時に、学部や所属を超えて学生たちが出会い、交流し、新たな価値を創造する「キャンパス・コア」として生まれ変わる。 そこに活用される大屋根リングの木材は、単なる展示物ではない。学生たちが日々行き交い、語り合い、新たな挑戦を始める空間そのものとなる。
 万博会場で世界中の人々を迎えた木材は、これからはキャンパスで学生たちを迎える。 大阪・関西万博を訪れた人の中には、大屋根リングの下を歩いた記憶を持つ人が大半だろう。強い日差しを避けながら一息ついた人。ベンチに腰掛けて弁当を広げた人。世界各国のパビリオンを巡る途中で足を止め、見知らぬ人たちと同じ景色を眺めた人。 大屋根リングの下には、国籍や世代、言葉や文化の違いを超えて、多くの人々が集い、時間を共有した風景があった。
関西大学が受け継ごうとしているのは、木材だけではない。
その場所に流れていた空気や、人と人とが自然に交わることで生まれた記憶である。
 実際に、この計画の公表後には一般の方から、「完成したら見に行きたい」といった声も寄せられている。新しい学生会館は、学生たちの活動拠点であるだけでなく、地域を含め多くの人々が、あの日の風景や空気感をふと思い起こすことのできる場所になるかもしれない。

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記者会見会場で記者からの質問に答える高橋学長

物語は、これからも続く

 万博のレガシーとは、建物そのものを残すことだけではない。そこに込められた理念や願い、人々の記憶を次の世代へ手渡していくことにこそ意味がある。
 設計段階から模型製作に関わり、万博では学生たちがその理念を広げ、閉幕後には大学がその価値を未来へつなごうとしている。
 万博は期間限定のイベントである。
 しかし、その物語は終わらない。理事長は、「学生だけでなく、万博を訪れた多くの方々にも、その価値を感じていただける場として活かしていきたい」と語っている。
 あの日、多くの人が見上げた木組みの空間は、これから関西大学で新たな出会いと挑戦を見守り続ける。そして未来の学生たちは、その空間の中で知らず知らずのうちに、大屋根リングから受け継がれた「多様でありながら、ひとつ」という理念に触れていくのである。


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新・学生会館完成イメージ