カリキュラム

教員エッセイ

第12回「出会い」のススメ

商学部教授  川上 智子(マネジメント専修)

 2007年9月より2008年3月までの半年間、アメリカ合衆国シアトル市にある州立ワシントン大学ビジネススクールに客員研究員として滞在した。シアトルはエメラルド・シティといわれる山と湖と海に囲まれた美しい街である。イチローのいるマリナーズでも有名だが、マイクロソフト、スターバックス、ボーイングなどの有力企業が多数存在し、ベンチャーやイノベーションを研究する私にとっては絶好の滞在先でもある。

 シアトルでの生活は2回目。前回も同じワシントン大学に滞在した。1度目は単身赴任、2度目は娘を連れての親子留学。1度目は車を持たずバスでの生活、2度目は車の免許を取得し、20年のペーパードライバー歴を返上。1度目はアメリカの研究者と共著で英語論文を発表し始め、2度目の今回は、複数の研究者と5つの国際研究プロジェクトを立ち上げた。短期間の海外生活で達成感を味わうためには、自分に明確な目標を与えることが大切かもしれない。

 とりわけ私が今回心がけたのは、自分から出会いを求めて行動することである。出会いの場はさまざまで、教習所で運転を教えてくれたアメリカ人女性にハロウィン・パーティに招待してもらったこともあれば、ネットで検索し、研究上ぜひ会いたいと思った教授に直接メールを書いて面談を申し込んだこともある。せっかく海外に来ているのだから,億劫がらず、普段以上に積極的に動いてみると、同じ期間でも得られるものは大きく違ってくる。逆に受け身で待っていても、誰も手取り足取り導いてはくれない。海外では独立した個人としての振る舞いが求められる。

 経営学には「弱い結びつき(weak tie)の強み」という理論がある。平たく言えば、家族や親友のような強いつながりよりも、ちょっとした知り合いのような弱い関係にある人の方が大きな助けとなることがあるという話である。一期一会というが、一度できた結びつきは、その時すぐには分からなくても、生涯にわたって細く長く続くかもしれない。何かに困ったときや悩んだときに、このことはあの人なら分かるかもしれないと、気軽に聞ける人が海外にたくさんできるのは人生の宝だ。

 日本での生活では知り合えないような人と出会い、全く違う考え方に触発され、視野が広がることは、海外で暮らす意義の一つである。ただし、海外での生活にはリスクも伴う。自分の身の安全は自分で守るのが海外生活での鉄則。ルールを守りつつ、ちょっとばかりの勇気を出して、自分を一回り大きくしてくれる未知の世界に出会う。これが私流の「出会いのススメ」である。

"A Tiny Ripple" no.63 『在外研究員現地リポート』より

2008年12月22日更新
※役職表記は、掲載当時のものです。

 

☆シアトルの風景☆
シアトルの風景

☆ワシントン大学にて☆
ワシントン大学にて

☆ワシントン大学の風景☆
ワシントン大学の風景

川上 智子准教授は、平成20年度文部科学省「質の高い大学教育推進プログラム」(教育GP)に採択された、商学部の「英語に強いプロアクティブ・リーダーの育成」-産学官連携・高大連携・海外による英語力とプロジェクト実践力の強化プログラム-の取組担当者(代表)です。

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