第56回Z世代/デジタルネイティブ世代
商学部准教授 北山 弘樹(会計専修)

昭和世代の当方にとっては、生まれてからスマートフォンなりSNSに慣れ親しんできた学生さんから色々と助けて貰えて有難いことが多い。ライングループの作り方を手解きして貰ったり、ゼミコンパの、場所の希望調査から出席確認までちゃっちゃとネット上で幹事さんが仕切ってくれたり、発表に備えて問題意識別に小グループにいつの間にか別れて自主研究を対面とZoomを併せて進めて最終的にパワーポイント発表資料を統合完成させていたり。さすがデジタルネイティブ世代と舌を巻く。
しかし、時に、ポケベル普及以前の教室風景を懐かしく思い出すこともある。それは、学生さんの知的指向性をやや見誤ったまま熱弁?を奮ってしまう時である。学生さんは皆、10人の話しを聞き分けた聖徳太子の末裔で有り、耳だけは学論的議論に傾けてくれているのは、承知している。ただ、座席の学生さんは、肉体の一部と化したスマホに視線が注がれ、その指先は目まぐるしく情報の収集選別に勤しんでおられる。うーむ(悩)。
でも、やはり、生きることの意味の一つに他者との出会いによる人生の複雑化豊饒化があるならば、その為の空間と時間を提供するのが関大の存在意義の一つであろう。そこで、教員の話しはそこそこにして、学生さん同士で隣の席の初見の方(毎回無作為に座席が決定)とのペアワークの時間を取るよう精々努めている。自分と全く異なる経験知見を有する他人との、刺激的で知的な会話をアナログ的に楽しんで頂きたいとの思いからである。
話題が多少課題の経営学関係から離れて雑談になったとしてもご愛敬である。傍から、学生さん同士の、時に丁々発止、大体は静かなしかし他者との交感的だろう話し合いの様子を拝見できると、Z世代と昭和世代との精神的連帯の可能性有りと確信もできる。哀しく嬉しい、当方関大生活終盤の、掛け替えの無い日々の一齣です。
『葦 2024.№189 秋冬号』
2025年01月24日更新
※役職表記は、掲載当時のものです。