第54回学生は忙しい
商学部教授 佐伯 靖雄(マネジメント専修)
コロナ禍の前後あたりからゼミ生と接していて感じるのは,とにかくいまの学生は忙しいということです。アルバイトやクラブ活動・サークルといった学生定番の予定は当然のこととして,それ以外にも3回生の夏から本格化するインターンシップや,私生活では「推し活」のための地方めぐりなど,とにかくスケジュールでいっぱいなのです。私が大学教員になりたてだった十数年前と較べてもそれは顕著になってきています。
だから困るのは,ゼミ生を集めて課外活動に取り組もうとしても,全員揃ったためしがないということです。当ゼミでは毎年,企業や自治体への訪問を交えた一泊二日程度のゼミ調査合宿をしていますが,あいにく全員揃っての実施というのはこれまで一度もありません。こうした大型の行事ばかりでなく,食事会(飲み会)のような割と手軽なイベントですらまず全員は集まりません。前日,当日になってのドタキャンすら彼ら・彼女らは厭いません。とりわけインターンシップ早期化の影響は大きく,ゼミ生が毎週のゼミよりもそちらを優先してしまうことはもはや珍しくありません。
忙しいことそのものは決して悪いことではありません。限られた時間を有効活用し,工夫して予定を調整するのは社会人にとって必須のスキルだからです。確かにその練習にはなっています。ただ教員の立場から思うのは,学生のころから予定に追いたてられる暮らしばかりなのは少々もったいないなぁということです。社会人になればまとまって休みをとることは難しいですし,(読書でも英語学習でも海外ドラマを観るでも何でもいいのですが)ひとつのことをじっくり楽しむ機会はそうそうありません。学生のうちなら,たとえば3つの用事を2つにして時間を捻出することも(社会人と較べれば)そう難しくはないはずなので,ちょっと立ち止まっていろいろ考える余裕を持って欲しいなと感じます。それが学生ならではの特権なのですから。
『葦 2024.№187 春号』
2024年4月25日更新
※役職表記は、掲載当時のものです。