カリキュラム

教員エッセイ

第39回世界最多の店舗をもっている企業は?

商学部教授  崔 相鐵(流通専修)

 生産者と消費者の間に介在する「商人の社会性」を議論の出発点とする流通論を担当している。社会性というタームから想像できるように、この学問はマルクス経済学をルーツとする。当然ながら抽象論的内容を多く含むために、まともに理論枠組みに従うと、受講生らから面白くない講義と烙印づけられる。前任校でも同じ科目名の講義を担当した私の経験談だ。

 本学に着任してから、暫くは受講生らの眉間にしわを寄せるような難しい話は一切せず、なんとなく分かりそうな実際の小売の話から入ることに決めた。初日の講義で、受講生らに「ファストフードや小売を問わず、世界で最も多くの店を持っている企業は?」と問いかける。怪訝とする受講生らに、ならばセブンイレブン、マクドナルドそしてスターバックスの中で一つを選ぶようにと伝える。

 ちょっとちょっかいを出す。「セブンは、現在、北欧3国以外の欧州には出店しないが、マクドとスタバは世界中に出店している。セブンは僅か17カ国展開に留まる」と。その結果は予想通りマクドが1番になる。

 正解は、勿論セブンイレブンだ。それも2位のマックの店舗数(約37,000店)を優に上回る63,000店。隙を突かれた受講生らに、世界中のセブンの店が、1991年の戦後最大の日米逆転劇以来、日本のセブン傘下にあることを伝える。セブンを含めコンビニのことは、受講生らが頻繁に利用するので、興味と安堵の表情が浮かぶ。

 数回は総合量販店、百円ショップ、ドラッグストア、さらにネットショップなど、元々は"Born inAmerica"だったが、間もなく"Reborn in Japan"になる様々な小売業態の話を続ける。楽勝ムードが広がる頃、避けては通れない商人の社会性の議論に入る。

『葦 2017.№168 秋冬号』より

2020年6月29日更新
※役職表記は、掲載当時のものです。

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