カリキュラム

教員エッセイ

第5回授業に「参加するプロ」を目指す

商学部教授  髙屋 定美(ファイナンス専修)

 2004年4月に関西大学に赴任してから年月がたち、関大商学部でのゼミも卒業生が巣立っていき、ようやく関大生の学生気質も分かってきました。私のゼミでは、ファイナンス、特に国際金融に関した知識と実情について学ぶことを基本としています。しかし、講義科目と異なり、ゼミナールではゼミ生が積極的に授業に参加することが求められます。このことは、すべてのゼミに共通することでしょうが、前任校も含めて十数年、ゼミ運営に携わって感じるのは、その積極性を引き出すのがなかなかに難しいことです。小中高を含めた長年の学校生活で、ゼミ生は授業を「聴くプロ」ではありますが、必ずしも「参加するプロ」ではないようです。

 「参加するプロ」と私が名付けているのは、自ら問題意識を持ってテーマを探し、それについて積極的に他人と議論ができ、さらには見知らぬ人たちの前でも発表できる学生像を指しています。これはかなり高いハードルかもしれませんが、卒業段階では、それに近づいてもらいたいというのが、指導する立場のものの願いでもあります。

 そこで、私のゼミでは、長崎県立大学と長崎大学との大学対抗ゼミナール討論会を年に一度行っています。これは主に3年次生を対象にしているのですが、一つないしは二つのテーマを数ヶ月下調べした上で賛成と反対にゼミ単位で分かれて、勝敗を決めるディベートといわれる形式で行う討論会です。他大学の大学院生に審判をお願いして、必ず勝敗を決めるものですから、ゼミ生にとっては負けまいという気持ちからか、しだいに下調べの段階から積極的になっていき、ゼミ生仲間との協力が進んだり、リーダーシップをとる学生が現れたりするなど、積極的にコミュニケーションをとるようになっていきます。

 多くのゼミ生は、おそらく民間企業に勤めたり、あるいは自分で起業したりすることになり、いわゆるビジネスの現場で働くことになるでしょう。週刊ダイアモンドによると、学生に対してビジネス界が求めている能力として、積極性、コミュニケーション能力、責任感、協調性、業務への適正などと続いています。無論、ゼミではビジネス界の求めに安易に応ずるわけではありませんが、これらのことは、社会一般に必要とされる能力といえるのではないでしょうか。ただし、これらの能力は一朝一夕に培われるものではないだけに、日頃からゼミでの発表などを通じて少しでも伸びればと思っています。

 また、学内では従来の討論会とは別に、2005年度から新たなゼミナール大会の試みとして、プレゼンテーション大会が行われています。私のゼミもこれに参加し、入賞は逃しましたが、多くの聴衆の前でプレゼンテーションを行う機会を得ることができました。発表するものとそれを裏から支えて資料を作成するものに分かれて、作業を進めましたが、そこでも協調の重要性、ゼミ仲間との連携をどのようにとるかなどを自然と学んでいるようです。

 4年次生になれば、卒論製作が待っています。就職活動と同時並行に、これを進めなければなりませんが、その場合にも3年次で行った討論会での経験、すなわち問題を見つけ調べ、そして解決していく力が一人の作業である卒業制作に、ある程度は活きているようです。

 これからの社会、とくにビジネスを取り巻く環境は、大きくしかも素早く変化しています。そのような状況に企業は迅速に対応せざるをえないでしょうし、企業はそれに対応できる人材を求めています。そのような素養は、この商学部でのゼミナールを通じた経験によって培われるように考え、今後も学生の積極性を引き出せるような「仕掛け」を考えていきたいと思っています。

『葦 №133号』より

2008年02月20日更新
※役職表記は、掲載当時のものです。

教員エッセイ一覧へ戻る

  • Banner
  • Banner
  • Banner
  • Banner
  • Banner
  • Banner
  • Banner
Back to Top