2024年12月10日(火曜)10:40-12:10、関西大学千里山キャンパス第2学舎BIGホール100にて、本学商学部客員教授である荒木直也氏(エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社代表取締役社長)による講演会「『新たな事業モデル』実現をめざして」を開催いたしました。
関西を中心に阪急阪神百貨店や食品スーパー、商業施設など500店舗以上を擁するエイチ・ツー・オー リテイリング株式会社は、(1)インフレ型経済(2)人口減少社会や少子高齢化社会、(3) 生活におけるデジタル化の進展などの三つの環境変化と、一方で進行する消費者市場の二極化に対応すべく、既存の事業に新たな事業を加えて事業モデルの再構築を目指されています。
今後は、成長性が見込まれるインバウンド消費や中国での店舗出店(寧波阪急)などの海外顧客ビジネスへの注力・強化、宅配デリバリーやオンラインサービスなどの顧客サービスビジネスを開発・展開するなど、新たな分野を開拓するにとどまらず、既存の店舗ビジネスとのシナジー効果の享受も期待されています。リアル店舗、デジタルの両方から、さまざまな接点の顧客とのコミュニケーションを重視するコミュニケーションリテラーと自らを位置づけ、本来小売ビジネスが重要視してきた優位性や資源を、新たな分野へ新しい技術を用いて進化させる挑戦ということができるでしょう。
このような事業活動に加え、社会貢献などのサステナビリティ活動として、地域に密着し共生する小売ビジネスの生業を活かし、地域の活性化に取り組まれています。少子高齢化・人口減少に伴い多くの公園が整備されず十分に活用されていない現状に対して、豊中市と連携して千里中央公園を再整備し、新たな地域交流の拠点にしようとする取り組みをされています。また、日々の生活の中で生じている社会課題解決に関しては、地域の産学官のパートナーと立ち上げたプロジェクトが環境省「食品廃棄ゼロエリア創出モデル事業」に採択され、食品の廃棄(フードロス)の削減に取組むなどの活動を進められています。
また、今後の人材確保や開発を見据えて、旧来とは相違する新しい働き方を支援されています。男性の育児参加を推進するため、パートナー子育て休暇を導入されており、2022年度には対象者の72%が同休暇を取得されている一方で、従業員の保育施設「H2Oほいくえん」開設にも取り組まれています。加えて、2022年度から阪急阪神百貨店の全社員を対象に年間1日の有給のボランティア休暇を導入し、社会貢献活動への参画を促進し、意識を醸成することをめざされています。また、2020年から個人事業主型の副業活動を認め、多様な働き方を推進していることが紹介されました。
このように、荒木社長の講演内容から、今後大きく進展する環境変化に対するH2Oリテイリングの方向性を大変よく理解することができました。聴講した学生も、自身の就職活動への示唆だけでなく、今後の新しい企業のあり方に触れる貴重な機会となったでしょう。
文責 商学部教授 岸谷和広