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「基礎法学」の紹介

  角田 猛之 教授

  「法学」は古代から存在する学問分野で、とくに神学、医学とならぶ中世以来の三大学問のひとつとして、「人類の知的遺産」ともいうべき分野である。そして この法学はつぎの二つの部門、すなわち「法解釈学」あるいは「実定法学」と「基礎法学」から成り立っている。それはちょうど、三大学問のもうひとつの実学 ――関西大学の学是=「学の実化」!――たる医学において、患者の治療を主として念頭においた、文字通り「ベット=患者に臨む」医学たる「臨床医学」と、 日本人研究者が続けてノーベル賞を授与された、医学生理学もそれに属する「基礎医学」の分類に相当する。

 そして、そのような長い歴史をもつ法学のなかで、さまざまな法律や裁判所の判決を対象とする法解釈学あるいは実定法学がその中心に位置していることはまちがいない。

  しかし法学は、法の解釈や適用を主な課題とする法解釈学・実定法学だけから成り立っているのではないことも明らかだろう。なぜならば、つぎのような部門か らなる「基礎法学」あるいは理論法学も不可欠の要素として存在するからである。すなわち、社会において現に存在する法の実態を主たる対象とする法社会学、 そのような法や法の実態を背後から支えている、法の文化的側面=法文化を主たる対象とする法文化学・比較法文化学、さらには、法の基礎をなす価値や理念、 法の概念や法学の方法の検討といった、法をめぐる理論的あるいは哲学的な検討を課題とする法哲学もある。さらにまた、法や法をめぐる思想の歴史的な成り立 ちを主たる研究課題とする法史学(法制史学)や法思想史、各国の法や法制度を比較し、その相違点と共通点を踏まえてそれらの内容を明らかにする比較法学、 また、法と経済のかかわりを検討課題とする<法と経済>、さらには、立法そのもののあり方(立法の政策的な妥当性やその技術)を検討する立法学(法政策 学)、等々が、基礎法学の不可欠の部門として存在している。

 この「基礎法学」の講義においては、法学の世界への第一歩として、以上のよう な基礎法学の諸部門について1回生のみなさんにもわかりやすく解説していきたい。そして、これらの基礎法学の諸分野の理解を通じて、法学における基礎法学 の独自の地位と重要性、そしてなによりもその研究のおもしろさを理解してもらいたいと考えている。