基幹科目紹介.jpg法学部の1年生は全員,基幹科目を履修します.これから5回に分けて,担当者より授業紹介をいたします.

現代政治論1・2の紹介

坂 本 治 也 教授 

 

 「法学部なのに、『政治』学やるの?法律を学ぶのに、政治なんて勉強する意味ないでしょ?」毎年4月になると、法学部界隈で必ず聞こえてくるつぶやきである。しかし、実際には政治と法律は無関係ではない。それどころか、関係大アリなのである。

 法律を作り、それを執行しているのは、議員や行政官僚といった政治エリートである。また、有権者は政治参加を通じて、議員や行政官僚の行動や意思決定に影響を与える。このような政治の世界のアクター(登場人物)の行動や心理、およびアクターを取り巻く政治制度やアクター間の相互作用の実態を知ることは、法律が出来上がる過程を理解するうえで不可欠な知識といえる。社会を変えるには、法律を変える必要があるが、その法律を変えるためには、政治の世界のしきたりをよく理解しなければならないのである。

 法学部とは、つまるところ「ルールを学ぶ」学部である。法律学は出来上がったルールそのものの構造の理解や解釈が学習の中心となるのに対し、政治学はルール形成に至るプロセスを理解することに主眼が置かれる。ルールはただ決めたら必ず守られる、というものでは決してない。皆が納得するルールが形成され、人々の間で広く遵守されていくためには、ルール決定段階での利害調整や合意形成が何よりも重要となる。政治学では、そのような利害調整や合意形成の技術を学んでいく。法律や規則を杓子定規に振りかざす、頭でっかちな人間にならないためにも、政治学の素養は「ルールを学ぶ」法学部生にとって必須のものといえる。だからこそ、どの大学でも法学部内には政治学の諸科目が必ず配置されているのである。

 現代政治論1・2は、法学部における様々な政治学科目の入門編に相当する科目である。現代政治論1では、政治学の基礎概念や理論を学びつつ、現代日本の政治過程を選挙、マスメディア、政党、官僚、利益団体などの観点から理解する。現代政治論2では、現代政治を枠づける基盤となっている政治思想や政治史の基礎知識や分析枠組み、および国際的な場における政治の実態をとらえるための諸理論について学ぶ。

 政治に関するトピックは一見、身近ではなく、小難しいように思われるかもしれない。しかし、政治とは「ルール決定」「利害調整、合意形成」と考えれば、家庭でも、学校でも、会社でも、地域社会でも、我々はあらゆる場所や局面で政治と関わっていることに気づく。政治に無関心な人はいても、無関係でいられる人はいない。政治の世界の話とは、まさに我々の世界の話のことである。授業を通して、それらに気づいてもらえれば幸いである。

 「法学部生だからこそ、政治学を学ぶことは絶対必要!」現代政治論を1年間通して受講した後、必ずや君はそうつぶやいていることだろう。