法学部学部長からの挨拶
学部長からの挨拶
法学部を志望するみなさまへ

皆さんが法学部生になったら、周囲の人から『弁護士になるの?』と聞かれることがあるでしょう。そこで『いえいえ、政治学を勉強しているんです』と答えると、今度は『政治家にでもなるの?』といった質問が返ってくるかもしれません。関西法律学校(1886年設立)をルーツにもつ本学部には、法律・政治・行政の分野で活躍する卒業生が少なくありません。そのため、このような『法学部生あるある』は、単なるステレオタイプとは言い切れないのです。。
しかし、私たちが真に目指しているのは、社会の問題解決に資する市民を育てることです。なぜなら、どのような道を選ぶにせよ、誰もが社会の一員として責任を持つからです。社会には、多様な価値観や利益を持つ人々が生活を営んでいます。しかし残念ながら、価値観や立場の違いによって生じる争いや対立で苦しむ人もいれば、経済的・社会的な理由から疎外され、排除される人もいるのです(若者が社会の周縁に追いやられているということはないでしょうか)。
現代社会は、グローバル化や情報化の進展、気候変動の影響などによっていろいろな問題を抱えており、その様相は絶えず変化しています。しかし、そうした多くの問題は、社会の構造に根ざしているため、技術者が機械の部品を交換するようには解決できないのです。だからこそ、社会をより良いものにするために、対話を通じて課題を見つけ、協力して社会の分断を乗り越え、つながりを築ける市民が求められているのです。本学部の使命は、こうした未来を紡ぎ出すことのできる知識や思考力を備えた法学部生を社会に送り出すことなのです。
本学部のカリキュラムは、法学と政治学の2つの学問体系を学ぶ機会を提供しています。どちらも専門性が高く、知識の習得には時間がかかります(これはイメージ通りでしょう)。しかし、法と政治が社会の問題をどう解決できるのかを学ぶことは、単なる知識の習得ではなく、実際の社会で役立つ力を身につけることにつながります。法律は、私たちが安心して生活できるようにルールを定め、権利を守るものです。政治は、多くの意見を調整し、社会全体の方向性を決める役割を担います。これらを学ぶことで、社会の課題を的確に分析し、解決策を考え、人々と協力して実行する力が養われます。こうした知識や能力こそが、分断を乗り越え、より良い未来を築くために不可欠なのです。
この千里山の地で、みなさんとともに法と政治を学び、これからの社会について語り合えることを楽しみにしています。
法学部長 石橋 章市朗