KANDAI HEADLINES ~ 関西大学の「今」

方言や旧字の不思議に魅せられて
~ドイツからの留学生~

学び

日本語の多様性や歴史的変遷を探る

/文学部 3年次生 グランズナ・ルチア さん ※学年は取材時


 「日本人でも分からない日本語を勉強したい!」。今では店名な どでしか見なくなった、昔の平仮名である変体仮名をはじめ、江戸時代の遊びで文字を組み合わせて絵を作る文字絵など『狂字図句絵』にも興味を持つルチアさん。日本語を学ぶきっかけは、YouTubeで見つけた人気の TV番組「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」だった。

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日本語との出会い

 「"誰か来て"と"ダレカキテ"。カタカナを使うと印象が変わります。それは個性を表し、アルファベットでは表現できません。日本語は雰囲気が大事で、会話も言い方によって怒っていたり馬鹿にしたりと、ニュアンスの変化が面白いです」。国語学を専攻 し、大好きな方言や変体仮名を勉強中のルチアさん。"いる"と"おる"の違い、同じ書物でも時代によって字体が違うが明確なルールはないなど、日本語ネイティブでも「?」となる日本語の不思議について、話題は尽きない。

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絵文字などの古い文字を紹介するルチアさん

 「私には日本の生活が合っています。前世は日本人だったのかなと思っています」。子どもの頃から少し日本人を思わせるような行動が見られた。例えば、ドイツには自分に非がないのに謝罪する文化はないが、ルチアさんはバスが遅れて授業に遅刻すると「ごめんなさい」と謝っていたとか。ドイツ人の友達から「日本人みたい」と言われ、気になって日本のことを調べてみると、生活観や言語、漢字、平仮名など、興味が湧くことばかり。さらに、12歳の時、YouTubeで「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」を見つけ、夢中になった。「ツッコミぐらいしか理解できなかったけど、行動を見ているだけでもめちゃくちゃ楽しかった。会話も理解できたらもっと楽しめるんじゃないかと思い、独学で日本語の勉強を始めました」。

応援してくれる両親がいる

 ドイツの教育システムは進路選択の時期が早い。 12歳で大学入学を前提としたカリキュラムの学校へ進学したものの、日本への思いは募るばかり。「いつか日本へ行くためには日本語の勉強が大切。ドイツのカリキュラムで学び続けることは自分の目的に合わない」と、14歳で全授業が英語で行われるドイツのインターナショナルスクールへ転校し、さらに独学で日本語の勉強をし続けた。両親は「日本について学びたいというルチアを応援したい」と見守ってくれた。

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ルチアさんの両親。日本で学びたいと強い気持ちを持ったルチアさんをサポートしてくれてる

 2019年、ルチアさんは母親と共に東京や関西の大学のオープンキャンパスを巡った。「関大に入った瞬間、応援団やチアリーダーのにぎやかな音が聞こえ、私も母も絶対にここがいい!と」。故郷の町と吹田市が似ていたのも決め手となった。「どちらの町も方言で話すと距離が近くなる。異国なのに懐かしさも感じました」。

将来の活躍の場は日本で

 AO入試で合格し、念願の日本での生活が始まったが、入学したのはコロナ禍の2020年。「私が来日したのは3月16日。18日に入国が制限され、ギリギリでした。日本に来ることに迷いはありませんでしたが、ずっとオンライン授業で悲しかった。でも、今は友達もたくさんいるからオッケーです」。世界中が混乱していた時期であり、来日がかなわなかった留学生もいる。両親には会えないが、お互い元気なのだからと前向きにとらえる。

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「第5回三大学留学生日本語スピーチコンテスト」で銀賞受賞、団体の部で優勝

 今後は、他言語が中間言語に与える影響を検証したいそう。例えば、日本語ネイティブが、学習することにより、英語をうまく使うことができる。英語が上達するにつれて、母語である日本語に影響があるのではとルチアさんは考えている。「私のドイツ語はちょっとおかしいと言われるのは、いつも日本語を使っているからかも知れません」。将来は研究者になり、日本で活躍するのが夢。「今の日本語が100年、200年後、どう変化しているかな?」。ルチアさんの日本語探究はまだ始まったばかり。

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出典:関西大学ニューズレター『Reed』72号(4月1日発行)

グランズナ・ルチア・セラフィナ ─ LUCIA SERAFINA GLANZNER
2000年ドイツ・アインハウゼン生まれ。16歳で初来日し、軽井沢のサマースクールで2週間を過ごす。17歳で通信制の東京インターハイスクールに入学し、2020年に関西大学文学部へ入学。名前のグランズナはドイツ語で"光に成る"という意味。将来は日本で活躍したいという希望も込めて漢字名(光成・瑠千亜・セラフィナ)を使う。