KANDAI HEADLINES ~ 関西大学の「今」

入学直後からスタートする充実したキャリア教育 ~VUCA時代に注目されるキャリア形成の力~

学び

/共通教養教育推進委員長 村上泰子 教授(文学部)
/キャリアセンター所長 小林剛 教授(文学部)



 そもそもキャリアとは何か。それは、どのように働くか、すなわち職務上の経歴や経験のみを表すものではなく、学びや遊び、家庭生活、市民活動の充実などを包含して、自分はどのように生きるのかという、生き方そのものを指している。現代は、先の見通しが予測困難なVUCA時代と言われる。価値観や選択肢も広がり、自分が社会でどう生きていくのか絶えず選択が迫られるこの時代において、納得のいく選択や決定ができるよう、近年あらためて注目されるようになってきているのがキャリア教育だ。


 関西大学では「低年次からのキャリアデザイン」をテーマに、正課教育においては、2023年度から大幅にカリキュラムを再編し、共通教養教育科目の中に「キャリア形成科目群」を新設。さらに学生自らがキャリアを考える機会を増やすために、正課外教育の拡充にも取り組んでいる。そのねらいと今後の展望について、共通教養教育推進委員長である村上泰子教授とキャリアセンター所長の小林剛教授に話を聞いた。

入学後すぐに始まる体系的なキャリア教育

 2023年度から新たに設置された「キャリア形成科目群」について、村上委員長は、「キャリア教育科目は20年近く前から設置していましたが、今回、共通教養科目全般の見直しを行うにあたり、キャリア教育の刷新を大きな改革の1つとして実行しました。今回の再編では、低年次からアクティブラーニングの要素をより強め、科目数、クラス数を増やしてカリキュラムを充実させたこと、そして一つの科目群として新たに設置することで、キャリア教育の重要性を学生に理解してもらいたいという意図がありました」と語る。

 その特徴の一つは、大学生になると同時に取り組み始める体系的なキャリア教育プログラムだ。キャリア形成とは何かという知識を提供する講義科目とキャリア形成のスキルを実践で身につける演習科目の両方で、段階的に成長を促す。


 講義科目は、1年次にキャリアを知り、社会や自分を知るところから関心や意欲を高め、2年次にはキャリア形成に対する資質や能力を育むという流れ。一方の演習科目には新しい試みが導入されている。村上委員長は、その内容を次のように話す。

 「企業や自治体、地域など外部機関の協力を仰ぎ、PBL(課題解決型学習)を取り入れることにしました。1年次にグループワークなど段階を踏んで課題解決の基礎的なスキルを修得したうえで、2年次には1つの機関のよりレベルの高い課題と向き合います。実際に社会人との協働を経験する中で、社会をより良くするためのスキルや態度を学び、自信をつけてほしいと思っています。さらにキャリアやPBL、リーダーシップの理論を学ぶ講義科目を設置し、理論と実践を行き来しながら自分のキャリアについてより考えを深められるようにしました」


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 PBLの取り組みは、社会人だけでなく「多様な学部の学生との協働という意味でも重要」であると村上委員長は話す。

「全学部の学生が履修できる共通教養科目では、学部で学ぶ専門科目と違ってさまざまな学部の学生が同じ教室で学ぶことで、他学部生との交流が生まれます。キャリア形成科目群においても文系・理系の垣根を越えてグループでPBLに取り組みながら、自分とは異なるものの見方や価値観を知り、自分自身を客観的に見る力を得られることが非常に大切だと思っています。それが、多様な価値観が存在する社会の中で自分はどう生きていくのかを見出すための基盤になるはずです」


 また、低年次からのキャリア形成科目群の学修が、幅広い教養科目への関心や学部教育への接続を促すことも意図している。社会の仕組みやその課題を知ることで、生きていくためにいかに幅広い知識・教養が必要であるかを理解したり、他学部の学生との協働によって自らの専門の面白みを改めて発見する。「こうした気づきが、自らの成長のために能動的に学ぼうとする意欲を育むことにもつながると思います」と村上委員長は期待を込める。

ジョブシャドウイングを活用した先駆的プログラム

 一方、キャリアセンターが主体となって進める正課外教育においても、低年次のキャリア教育の充実をテーマに、各種セミナーや支援プログラム、個別相談などさまざまなサポートを行ってきた。2022年度には、1・2年次生に限定したキャリア形成を支援するWEBツール「関大版 ハタチのトビラ」を開設。それぞれに応じた生き方・働き方の情報、学びから実践への行動を促すツール、OB・OGが学びや課外活動、就職活動のポイントについて語る動画など幅広いコンテンツを用意し、予測することが難しい将来に対する学生の不安の解消し、挑戦意欲を引き出すことにより、大学生活の充実に繋げる。


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 2023年度からは、さらに新たに「産学連携型ジョブシャドウイングプログラム」の提供を開始。「ジョブシャドウイング」とはキャリア教育手法の一つで、学生が社会人の仕事の1日に同行し、どのような仕事をしているかを観察し、質問することでキャリア観を育むもの。第一弾では、パナソニックグループの全面協力のもと、人事、営業、研究部門の社員一人ずつの1日に学生が密着した。

 「ジョブシャドウイングはインターンシップと似ていますが、仕事を体験するのではなく、社員が仕事をしている姿を観察し、気になったことを掘り下げて質問することで、仕事の内容や必要な考え方について理解を深めるところが違います。企業側が提供する業務体験が多いインターンシップに対して、普段通りの仕事ぶりや職場の雰囲気を見聞きすることができ、働くことをリアルに感じられる点が大きなメリットです」(小林所長)


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 さらに小林所長は、仕事の楽しさを知るきっかけにもなると期待を込める。 「学生の中には、営業職は厳しい仕事といった固定観念や、現場を知らないことからくる仕事への不安や恐れを抱いている人が割と多い。ジョブシャドウイングでは、社員が、どんな仕事なのか、その仕事にはどんな資質や能力が必要なのかを教えてくれます。実際の職場のコミュニケーションを体感することができる。それを通じて思い込みを修正し、働くことに興味をもってほしいと思います」


 学生のジョブシャドウイングの様子は要点を絞って動画化し、Webツール「関大版 ハタチのトビラ」で公開している。今後、ジョブシャドウイングの受け入れ先を増やし、多様な業種・職種での仕事ぶりがわかるようにコンテンツを充実させていく計画。BtoBをはじめ学生にはわかりにくい業態の企業にも学生が目を向けていくきっかけになれば、という期待もある。

キャリア教育は学び続ける人生の第一歩

 正課教育と正課外教育とが車の両輪となり、大学に入学した時点から、自分のキャリアを自ら選択する力を身につけていくことができるのが、関西大学のキャリア教育。今後のキャリア教育について、村上委員長は「キャリアを考える時に、自分が何を大事にしていくのか、それはどんな意義があることなのかを、自分自身で認識できる力はとても大切だと思います。そのための土台となる知識を共通教養科目の中から幅広く得て、しっかりキャリアを形成していってほしい」と、キャリア形成と学びとのリンクを強調する。

 それを受けて小林所長も、「一生のキャリアをどうつくるのかを考えるキャリア教育は、学部の専門教育にとっても非常に重要です。キャリア教育で社会を見る視野を広げることが幅広い分野の学びに関心を持つことにつながり、その中から自分にとって魅力的な分野を見つけて専門教育で深めていく。この正課教育と、正課外教育が連携することにより学生のキャリア形成を支援していきたい」と語った。



■ジョブシャドウイング制作動画


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「パナソニック 採用人事編」前編
「パナソニック 採用人事編」後編
「パナソニック 営業社員編」前編
「パナソニック 営業社員編」後編
「パナソニック 技術職編(理系社員)」(前編)/(後編)
※本動画については、関西大学内専用サイトでの限定公開となります。