KANDAI HEADLINES ~ 関西大学の「今」

学生ならではの企画で勝負!映画に関することは何でもこなす。関西大学映画研究部に迫る!

文化・スポーツ

 映画好きな学生が集まる関西大学映画研究部は、自らが企画立案した映画を自主制作したり、映画の良さを広めたりする文化会のクラブです。「観る、撮る、上映する」を活動の柱に、年3回の自主上映会や学園祭でも上映を企画しているほか、日本三大学生映画祭の一つ「関西学生映画祭」を他大学と協力しながら開催しています。

 今回は、前部長で現在も顧問的立場で部に関わっているパニアグア・カルロスさん(システム理工学部3年生)をはじめ、林家輝さん(文学部2年生)、八木聡美さん(文学部1年生)、塚山ひかるさん(政策創造学部1年生)に、活動内容や学生映画の魅力などについてお話を聞きました。

17_02.jpg
お話を聞かせていただいた塚山さん、八木さん、カルロスさん、林さん(左から)

まずは自分たちで「撮ってみる」ことで身につく映画制作の技術

 "自分たちが企画立案した映画を制作する"というのが、映画研究部の大きな特徴。
 ところで、映画はどうやって作り上げていくのでしょう。

 まずは脚本作り。着想に至るまでが苦労しそうですが、「作文が好きな人ならすぐに書けますよ」とカルロスさん。

 しかし、脚本を絵コンテにするのは難しいので、絵コンテなしで撮影に入ることもしばしばだそう。

 同時に部内で制作スタッフ(カメラ1名、音声1名)を募ります。なんと出演者も部内からキャスティングします。(俳優気分も味わえますね)

 関西大学映画研究部にはとてもよい機材が多くそろっているそうで、例えば、ハイアマチュア向けビデオカメラ、一眼カメラ、三脚、レフ板、ショットガンマイクなどの録音機器、グリーンバックなどを部員なら誰でも使用することができます。専門的な教育を受けているわけではないので技術面ではまだまだですが、「自分たちで使い方を調べてマスターし、先輩から後輩へと受け継いでいます」とカルロスさん。「先輩が撮影講座や編集講座を開いてくれるので、予備知識がなくてもできるようになります」と林さんも力説します。

 そして撮影。まずはロケハンで撮影場所を決め、カメラマン兼監督が出演者の演技指導などを担います。「雨に降られたり、失敗も多いですけど、キャンパス内であれば、撮り直しもできますしね。実際の映画の撮影現場はめっちゃ大変だと思うんですけど、僕たちは楽しむことを大切にしているので、しんどいと思ったらダメ。緩やかな感覚で、撮り終えた後に楽しかったと思えるように、というのが関大映研のポリシーです」(カルロスさん)と学生ならではの取り組み方について熱く語ってくれました。

17_03.jpg
撮影現場はかなり本格的!

 そうして撮影した映像は部室にあるPCで編集します。編集ソフトの使い方も「編集講座」で先輩から後輩へ受け継ぎますが、まずは1本、ゼロから編集してみることで身につくことも多いんです。
 「初めての編集には2週間もかかりました。今だったら1日でできるんですけどね」というカルロスさんの発言に、「おお!」とリスペクトの歓声をあげる1年生部員の八木さんと塚山さんです。

17_04.jpg
編集ソフトの扱い方やテクニックは、先輩から後輩へと脈々と受け継がれていく

 そんな部員たちの思いの詰まった作品は、年3回の上映会と学園祭で上映されます。上映会の音響や映像再生などもオペレーションルームで自分たちが行います。

17_05.jpg
KUシンフォニーホールでの上映会もすべて学生たちで行う

 「学生映画はギャグコメディーが多いですね。時間的には30分以内がちょうどいい長さだと思います」(カルロスさん)。「CGを使わず、全部実写なのも味があって好きです」(林さん)。「業者さんの力を借りず、学生だけで撮るというのが魅力です」(八木さん)。

学生の個性が光る、映画研究部が手掛けたオススメ作品

 このようにして制作された関西大学映画研究部の作品の中から、オススメの作品をいくつか教えてもらいました。

『きょうたろうのくすぶりキャンパス・ライフ第1話「ビバレッジ・リチャレンジ」』

 4年生の小松蒼太さんによる作品でパペットを使ったドタバタ劇。脚本、パペット制作、パペット操作、声の演技もすべて一人で行った意欲作です。関西圏の学生映画団体が実施する上映会「ぼくらとえいが2020」にて京都シネマ賞を受賞。

『Carlo's game』

 カルロスさんが1年生の時に企画、監督、撮影、音声を務めました。ピクサーの映画『ゲーリーじいさんのチェス』(原題『Geri's Game』)のオマージュ作品。「僕の初めての作品。脚本もなく、『Geri's Game』を見ながら撮影しました。他の作品の要素も入れた映画好きならではのマニアックさもあります。誰に聞いてもどこにどんな要素が隠れているのか分からなかったと言われるんですけどね(笑)」(カルロスさん)。


  まったくの素人から始めてここまでできるものか?と感心しますが、「構図も物語もまずは好きな映画のパロディーを作ることで基本的な技術が身につき、次の作品につながります。編集で色なども変えられるので、細かいことは気にしない!」というカルロスさんの発言に「私も挑戦してみたい」(八木さん)、「私も撮影に参加したい」(塚山さん)とやる気満々の1年生のお2人です。

 コロナ禍以前は、最低でも1人1本、年間数十作品を制作していた映画研究部ですが、コロナ禍になった2020年度に制作した作品はわずか5本。人を集めての上映会も出来ない中、過去作品も含めたオンライン上映会を開催しました。映画の上映だけではなく、監督と出演者の座談会の様子もライブ配信。「当日は予想以上に多くの方が見てくれて、1000再生くらいありました。(2022年1月現在)」

『関西大学映画研究部自主製作映画オンライン上映会』

また自主制作映画のほか、大学内の団体から「活動紹介動画を制作して欲しい」との依頼も受けているそうで、このような活動を通じて、他団体とのつながりについても教えてくれました。

10回目を迎えた「関西学生映画祭」を主催した意義

 2009年、関西学院大学映像制作団体LimeLighの企画によって発足した「関西学生映画祭」は、2011年、関西大学映画研究部に引き継がれ、2012年11月、関西大学KUシンフォニーホールで第1回大会が開催されました。そして、第2回大会以降は大阪・十三にあるミニシアター「シアターセブン」に会場を移し、「学生の学生による学生のための映画祭」をキャッチフレーズに毎年11月に開催されてきました。「関西学生映画祭」は今や「東京学生映画祭」「京都国際学生映画祭」と並ぶ日本三大学生映画祭の一つとなりました。

 「『関西学生映画祭』は、スポンサーがついていないので、学生たちだけで運営しています。他の学生映画祭に比べると規模は小さいものの、本当に自分たちがやりたいこと、作りたい作品を上映できるのが特長です。関西大学のほか、京都大学、立命館大学、佛教大学など、約10大学が参加しています」とカルロスさん。 ところが、2020年に開催するはずだった第9回大会は、新型コロナウィルス感染症の影響によってやむなく中止に追い込まれました。

 「映画祭はもちろん、上映会もできない状況が続き、学生映画を作っている全国の仲間から『なんとか今年は開催して欲しい』という声が多く寄せられたんです。これは、第1回大会を開催した関大が率先してやるしかないと思いました」と意を決したカルロスさんは自らが実行委員長となり、関西大学映画研究部が宣伝活動から当日の受付・誘導などの実務を請け負うことになりました。すると、全国から過去最多の129作品もの応募が!

 会場はもちろん、十三のシアターセブン。「コロナ禍で苦境に立たされている映画館を応援したいという気持ちもありました」。

 当日は会場上映のみならずYouTubeでもライブ配信もしました。

17_06.jpg
第10回関西学生映画祭「観客賞」受賞者たちとの記念の一枚

 「関西学生映画祭は監督と観客との交流の場でもあるのですが、気軽に交流できない状況でしたので、事前に撮影をしていた監督とのトークセッションの様子を当日に上映しました」とカルロスさん。
 当日は受付や誘導係として参加した、林さん、八木さん、塚山さんも「いい経験になった」と口をそろえます。
また第10回大会は、メディア向けにプレスリリースを配信。国内最大規模の動画配信サービス・U-NEXTでオンデマンド配信されたほか、ケーブルテレビの取材も受けました。

J:COM特集番組

 「今後は規模を大きくして年2回開催にしたり、ワークショップなどもできればいいと思います」と後輩たちに思いを託すカルロスさん。
「学生ならではの新しい発想で、商業映画にはない型を作りたい」(林さん)、「クオリティーにかかわらず、学生同士で協力して一つの物を作るということは人生においてもよい経験になると思います」(八木さん)、「学生ならではの斬新さで作った作品は、荒さやシンプルさが逆にグッとくる。そういう作品を作りたいです」(塚山さん)と熱い思いを引き継いだ後輩のみなさんの今後の活躍に期待が高まります。

 映画好きなら自分だけのお気に入りを見つける感覚で、学生映画に目を向けてみるのも楽しいかもしれませんね。関西大学映画研究部の奮闘をこれからも応援してます!


※感染防止対策を講じて取材撮影をしております