KANDAI HEADLINES ~ 関西大学の「今」

日本初の"大学祭"からオンライン学祭まで!学園祭の過去・現在・未来をたどる

文化・スポーツ

 屋台から立ちこめるおいしいにおいや舞台にこだまする学生たちの声。毎年、多くの人で賑わう関西大学学園祭。しかしコロナ禍の今年は、オンラインで学園祭を開催しました。

 時代と共に様々に変化してきた学園祭。実は、日本初の"大学祭"だと言われている関西大学第1回大学祭から、今年のオンライン学園祭の舞台裏まで、学園祭の歩みをたどりながらご紹介します。

日本初の"大学祭"は関大で行われた?!

 そもそも関西大学の学園祭は、いつどのようにして始まったのでしょうか?
その疑問に答えてくれるのは関西大学の年史編纂に携わってきた、博物館事務室(年史編纂室)学芸員の熊博毅さんです。

08_02.jpg
"関大の生き字引"と呼ばれる熊さん

 「関西大学の第1回大学祭は、1926(大正15)年10月23日、24日に行われました。この年、関西大学では、当時東洋一の規模といわれる大運動場が完成しました。今の尚文館から総合図書館にかけて建設されたこの大運動場の開場式とあわせて、初の大学祭が行われたんです。さらに、創立40周年記念式と大学昇格4周年記念式もあわせて開催されました」

 大正時代、今から100年近く前の大学祭とは、一体どんなものだったのでしょうか。

 「1日目には、式典や文化系クラブの展示などが行われました。2日目には新運動場の開場式があり、式の後に記念陸上大運動会が開催されました。1日目の夜中に大雨が降って、本当に運動会ができるのかと心配したようですが、翌朝にはカラッと晴れて、絶好の運動会日和だったそうですよ」

08_03.jpg
第1回大学祭のゲート。盛況な様子がわかる(今の正門あたり)
08_04.jpg
晴れやかな雰囲気が伝わる新しい運動場(今の尚文館と総合図書館の間にある芝生の広場から見たクラブハウス《学生集会場》)

 運動会では、400m走、1500m走といった一般競技の他に、二人三脚やパン食い競争もあり、大いに盛り上がったそうです。さらに「仮装行列も非常に人気があったらしいです」と熊さん。

 高足のピエロを先頭に、「陪審法廷」をイメージさせる予科3年生の仮装。そのあとには書生風俗の変遷を絵巻物風にした予科2年生の行列が続きました。
 1番元気のよい予科1年生70名は、体を黒く塗っての踊りを披露しました。

 まるでハロウィン!なかなか本格的な仮装だったようです。
 「関大前駅のすぐそばに、10数年前まではお風呂屋さんがあったんです。踊りをする時には、学生たちはこのお風呂屋さんに行って、風呂の焚口にある炭を体中に塗りたくったそうです。それで大学祭に行って踊り出た後は、もう一度お風呂屋さんに戻ってきて、体に塗った炭を流したそうです。お風呂屋さんでもらったものはお風呂屋さんに戻して帰って行ったんですね(笑)」

 予科生とは今で言う高校生ぐらい。当時のやんちゃな関大生たちが目に浮かんで思わず笑ってしまいますが、お風呂屋さんにとっては大変な1日になりそうです(笑)。
 式典や展示、運動会、仮装行列と盛りだくさんの内容ですが、同じような大学祭は当時他の大学でも行われていたのでしょうか。

 「他大学のことまではわからないのですが...。でも"大学祭"という名称を初めて使ったのは、この関西大学第1回大学祭だと言われています」

 日本初の"大学祭"は関西大学で行われていたんですね!
 第1回大学祭は大盛況のうちに終了。以降は毎年開催され、市民も楽しみにする関大名物となっていったそうです。

08_05_.jpg
第2回大学祭のポスター

戦後再びよみがえった大学祭

 その後、毎年恒例となった大学祭。しかし戦時下では開催することができなくなってしまいます。

 終戦翌年の1946(昭和21)年、関西大学創立60周年でもあったこの年、体育部中心の体育祭と文化部中心の文化祭をあわせて、創立60周年記念大学祭として復活しました。

 「大学昇格記念日の6月5日に、体育祭が行われました。陸上競技のほか、アメリカンフットボールやラグビー、招待女子校によるホッケーなどの試合も行われたようです。パン食い競争やウナギつかみでは、食糧難の時代だけに選手は特に力が入ったそうですよ」

 関大名物となった仮装行列も復活。さらに構内には、陸上競技部のウイスキー店、ラグビー部の茶店、拳法部の一杯のみ屋といった色とりどりの模擬店が軒を連ねたそうです。今では考えられないですね。

 「戦後になってから模擬店がスタートしたんですね」と熊さん。大学の学園祭といえば、まず模擬店が立ち並ぶ様子が思い浮かびますが、戦後に始まった文化だったんですね。

 一方、文化祭は6月13日、14日の両日にわたって、大阪市大手前の毎日会館で催されました。たくさんの演劇が上演され、当日は前の人の肩越しにステージをのぞかないと見えないほど盛況だったそうです。

08_06_.jpg
なんと宝塚歌劇団から衣装を借りるほど本格的な作品も。
濃い化粧を施し、女装をした男子学生の熱演に場内は大盛り上がり

初めてのオンライン開催

 その後も、脈々と受け継がれてきた大学祭。現在は、関西大学統一学園祭という名称になり、2020年度は第43回として11月1日~4日の4日間にわたり開催されました。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、初のオンライン開催となった2020年度の学園祭。いつもの賑やかな学園祭とは異なり、当日のキャンパスに学生や来場者の姿はありません。一方YouTube上には、午前11時になると同時に動画が何本もアップされ、誰もがどこからでも楽しめる新しい形の学園祭がスタートしました。

08_07.jpg
YouTubeチャンネルで動画を配信。団体によってはInstagramでの情報発信も行った

 学園祭実行委員長を務めた松原直哉さん(経済学部3年)が、今年の学園祭に込めた思いを語ってくれました。

08_08.jpg
学園祭実行委員長を務めた松原直哉さん(経済学部3年)が、今年の学園祭に込めた思いを語ってくれました。

 「今年の学園祭のタイトルは、『Re Action』です。新型コロナウイルスの影響で自粛が続く単調な日々の中に、一つの『リアクション』を作り出すことで、以前の日常を思い出してほしいという思いを込めました。また、Reは再びという意味があり、『Re Action』と表記することで『再び行動を起こす』という意味も持ちます。学園祭を通じて、何かしよう!挑戦しよう!という活力が生まれ、日常を取り戻すきっかけになればという願いも込めました」

08_09_.jpg
Re Actionのビジュアル。風船が空に舞って、楽しい雰囲気を思い出させてくれますね

 オンラインでの開催は、どのようにして決定したのでしょうか。

 「もともと僕たち実行委員は、政府のガイドラインに合わせた5000人規模の学園祭を対面で成功させるために、準備を進めていました。でも7月半ばから感染者数が増えてくる中で、何度か大学側との話し合いを行い、8月末にはオンラインでの開催を決定しました」

 日々状況が変化するコロナ禍において、学園祭の計画もその都度変更していく必要があったと言います。

 「オンライン開催を決定した当初は、ライブ配信とオンデマンド配信を予定していました。でも、10月末にクラスターが発生したこともあって、ライブ配信のために中央体育館に大人数が集まってしまうというリスクを避けるために、すべてオンデマンド配信のみに切り替えました」

 先が読めないなか、いろいろな試行錯誤があったんですね...。最終的には、4日間にわたって約90の動画をアップロードするという形で開催された今年の学園祭。中でも、関西大学出身のお笑い芸人、ジャルジャルの福徳秀介さんに、学園祭実行委員がリモートでインタビューを行うという企画は、再生回数が最も多かったそうです。

08_10.jpg
【対談企画】ジャルジャル福徳さんが関大に!?学園祭実行委員会がお話を伺いました!!!!~関西大学第43回統一学園祭~

 「福徳さんの企画については友達から『今年の学祭はジャルジャルが出てるんや』と連絡が来たりして、観てくれている人がいるんだなと実感しました。他にも、ダンスサークル『漢舞(かんまえ)』の演舞や、社会学部のファッションショー企画も、たくさんの人が見てくださったようです」

08_11.jpg
関西大学学生チーム''漢舞'' 「舞動画」~関西大学第43回統一学園祭~

 福徳さんの動画では、学生時代のジャルジャルの2人が、学園祭当日もいつも通りネタ合わせをしていたというエピソードが登場し、「図書館入口の左側のガラス張りのところでネタ合わせをいつもしてたんですけど、学祭の日、あそこは人が多くなって、なんかやりにくいなあと思ってました」と元関大生ならではのインタビューになっていたのが印象的でした。 漢舞の演舞は、画面越しでも迫力満点!映像だと様々な角度から演舞を見ることができ、対面にはない違った魅力がありました。

 もう一つ、筆者の印象に残ったのは、関西大学と同志社大学の学園祭実行委員が対談するという企画。他大学とのコラボレーションが新鮮でした。また、今回の企画をきっかけに、今後も関西の大学が協力し合っていきたいと語っていたのも心に残りました。今から来年の学園祭が楽しみです。

08_12.jpg
統一学園祭実行委員会統一企画構成委員会庶務局「史上初!!ここでしか聞けない!関大×同志社委員長対談」~関西大学第43回統一学園祭~

 4日間の学園祭を終えた時、いつもとは違った感覚だったという松原さん。

 「いつもなら4日間ずっと大学にいて、最終日にはみんなで締めくくるんですけど、今年はそれができなかったので、全てを終えて、僕自身も『ほんまに終わったんかな?』っていう不思議な感覚でした。やっぱり例年とは違う雰囲気の学園祭だったと思います」

 初のオンライン開催を終えて、今後に向けての手ごたえも感じたと語ります。

 「初めての試みで不安もありましたが、オンラインでも学園祭はできるということを発見できたのは良かったです。来年対面で今まで通りの学園祭ができたとしても、遠方で来場できない方もいらっしゃると思うので、そういう方たちに向けてライブ配信や動画の枠を設けたら、今までよりもさらにグレードアップした学園祭ができるんじゃないかなって思います」

 最後に、「ずっと続いてきたこの学園祭を絶やさず、来年以降も開催してほしいという思いが1番強い。より良いものを作って、来場者の皆さんを笑顔にできる学園祭にしてほしい」と後輩に向けてメッセージを語ってくれました。

 実は、松原さんのお姉さんも関西大学の卒業生で、学園祭実行委員として活動していたそうです。姉の影響を受けて実行委員を始めたというお話を聞いて、こうして次の世代、また次の世代へと着実に受け継がれてきていることを改めて実感しました。

 学園祭の歴史を振り返ってみて感じたのは、どんな時代でも自分たちなりの形で精いっぱい楽しもうとする学生たちの思いの強さ、たくましさです。  来年以降は、対面とオンラインを掛け合わせた、新たな形の学園祭が生まれていくのかもしれません。伝統を継ぎながら進化し続ける、これからの学園祭が楽しみです。