いつもワクワクすることを大切に
関大人
思い悩んだ時こそチャンス
川崎重工業株式会社 梶谷 圭太 さん(経済学部 2016年 卒業)
「人の懐に入るのがうまいとよく言われます」。屈託 なく笑う梶谷圭太さんは、いま日々やりがいを感じている。大手だからこそのスケールの大きな仕事。そんな夢を叶えるまでには、自身の才能やキャラクターだけでは計れない、努力の軌跡があった。
小学校から熱中していたサッカー。「母に『高校でサッカーを続けるなら私学がいいんじゃない』と勧められて」、強豪の関西大学第一高等学校へ。80人以上を擁する部にあって、試合には出たり出られなかったり。2年連続で全国大会に出場したものの、自分たちの代では途絶えた。「悔しかったですね。でも、充実した3年間でした。部の『真面目に謙虚に』という教えは今も息づいています」。
関西大学に入学後、サッカーは体育会ではなく、サークルを選んだ。「大学では部活動以外のことも経験したいという思いがありました」。まず、アルバイトで自身が所属していたキッズスクールの指導者になった。「指導者に興味があったのと、当時の恩返しがしたくて、私の方からお願いしました」。週2回の練習や土日の試合、合宿にも付き添い、気付けば「大学4年間ずっと続けていました(笑)」。
サークルもアルバイトも楽しかった。ただ、2年次に差し掛かった頃、「今しかない大学生活を自分は本当に満喫しているといえるのか」という思いが頭をよぎった。「勉強して、サッカーをして、アルバイトをして。友人と過ごす日々はもちろん楽しいが、毎日が同じ繰り返しでいいのか」と自問した。そして一つの答えを出す。「そうだ! 留学しよう!」。大学の認定留学制度を利用して2年次生の10月から半年間オーストラリアへ。「英語に自信はないけれど、とにかくたくさん友達をつくろうと意気込んで行きました」。
アデレードという町で英語を学びながら、臆することなく人に声をかけた。その時に力を発揮したのはサッカーだ。「街中でボールを蹴っている人たちに『混ぜてよ』と言って輪に入っていきました」。そんなある日、加わったチームでの初戦、2ゴール1アシストの活躍を果たし、そのままチームに所属することになった。
留学期間も終盤に差し掛かった頃、「このままこのチームに残らないかと誘われたんです」。心は揺れたが、ゼミの先生の「圭太はサッカー選手になるために留学したの?」という言葉に帰国を選択。オーストラリア、ブラジル、カザフスタンなど、今なお交流のある外国の友達との絆をたくさん抱えて、日本に帰ってきた。
帰国すると、就職活動を意識する3年次になろうとする頃だったが、梶谷さんは学内の国際インターンシップの募集ポスターを見て、「ダメ元」で応募した。結果は合格。「40日間ロサンゼルスに行って、広告会社で働きました」。フリーペーパー制作に携わり、店舗の取材などを経験した。上司からの指示や締め切りなど、アルバイトやサッカーとは種類の異なるプレッシャーを体感できたのは財産になった。
日本に戻ると、就職活動は本格化していた。大学のキャリアセンターの職員に相談しながら、スケールの大きなモノづくりに挑める会社を中心にエントリーしていった。川崎重工業に惹かれたのは、キャリアセンター主催の就職セミナーがきっかけ。「担当者の方が、本当に楽しそうに自社の仕事について話してくれた」。カワサキ=バイクメーカーほどの知識しかなかったが、世界中のインフラをつくる会社だと知り、ワクワクした。
「内定は、アレのおかげかもしれません」。川崎重工業が当時初めて実施した2泊3日のインターンシップ。周りは優秀そうな学生ばかりのなか、「ここで目立って、爪あとを残す」と決めていた。誰かれなく積極的に話しかけ、課題では誰よりも駆け回った。全日程を終えての報告会では、皆がマイクを手に発表するなか、「僕、声が大きいのでマイクなくても聞こえますよね!」の第一声で会場を沸かせた。終始笑いを織り交ぜたプレゼンは関係者の目を引き、話題になったという。
あれから9年が経過し、梶谷さんは川崎重工業の営業部門で環境プラント、特にごみ焼却施設の建設に携わっている。今や単にごみを燃やすだけではなく、地域への電力供給や環境情報発信の場となっているごみ焼却施設。建設だけではなく維持管理運営まで担うため、その地域に付加価値をもたらす施設への提案を行い実現してきた。「良い提案をするためにその地域にひたすら通い続け、地域の幅広い業種のステークホルダーを巻き込みながら仕事を進めていきます」。大げさではなく地域の情報を徹底的に収集し、自治体に向けて自社商材とサービスの特長をアピール。数百億円規模の環境プラントの施工を実現させてきた。「これまでは上司や先輩のサポート役でしたが、今後は自分が主担当となり
プロジェクトを進めていきたいです」。
仕事の傍ら、梶谷さんは母校・関西大学のある活動に参加している。関大の卒業生で構成される「関西大学キャリアアドバイザーネットワーク(KU-CAN)※」に登録し、OBとして現役関大生のキャリア支援に携わっているのだ。「キャリアセンターからの依
頼を受けて、KU-CANができる以前から、OBOG懇談会などで学生に向けて自社の魅力や働くことについてお話をさせてもらっています。私自身もこのような機会のおかげで今ここにいる人間なので」。やりがいや生きがいに出合えたチャンスに感謝し、「恩返しをしている」と話す。後輩たちに伝えたいのは「視野を広げること」。「知っている会社から選択するのではなく、いろいろな会社を見て、知る機会を増やしてほしいですね」。サッカー、留学、インターンシップ。さまざまな活動と体験を通じて自らの視野と可能性を広げてきた梶谷さんならではの金言だ。
※関西大学の卒業生から構成されるキャリア支援ネットワーク組織。キャリアセンターと卒業生との連携により、現役学生へ持続性のある充実した独自支援体制を構築すべく、現在約60人のメンバーが在籍している.