大好きな「芸」に挑戦しつづける~お笑い芸人 福田麻貴さん~
関大人
ー心に秘めていたお笑いへの夢を実現ー
/お笑い芸人 福田 麻貴 さん (商学部 2011年卒業)
テレビで目にしない日はないほど大人気の女性お笑い芸人トリオ「3時のヒロイン」。ボケ担当の2人を相手に、ツッコミを担当しているのが福田さんだ。関西大学在学中に念願のお笑いの世界に飛び込み、さまざまな分野でその多才ぶりを遺憾なく発揮する毎日。ようやく一つひとつの仕事に自然体で向き合えるようになったという現在までの道のりをお聞きした。
─関西大学在学中にNSCに入学したきっかけは何ですか。
NSCへの気持ちはずっとありました。中学生の時に兄から「コンビを組んでNSCに行こう」って誘われまして。兄はあまり本気じゃなかったらしく、すぐにあきらめていましたが。高校入学時はNSCに入るかダンス部に入るかで迷い、高校卒業後の進路選択では、大学に行くか映像の学校に行くか、それともNSCに行くかで迷い......。その都度、母には反対されていました(笑)
一方で、2年次の半ば頃から、就職を意識していました。希望は広告業界。でも、NSCもあきらめきれず、3年次になる前にNSCにチャレンジして、アカンかったら就職活動を始めようと思っていました。
─関西大学での経験が今のお仕事に生かされていることはありますか?
私は商学部だったのですが、所属を希望していた演習のクラスに応募する時に、試行錯誤して自分のPR用DVDを作って、選考に合格しました。その時の経験は今の仕事に通じるなと感じます。その後に続く専門演習は、ちょうどNSCの入学と重なってしまったので、あきらめましたが......。
NSCに入学してからは、授業を受けにだけ大学に通った感じなので、大学生らしい学生生活は最初の2年間ぐらいですが、大学では「おもろいが正義」という友人たちとずっと一緒にいて、今もずっと仲良くしています。仕事で関西大学出身のお笑い芸人の方と共演することもあり、今となっては、関西大学への進学も通るべき道だったのかなと感じています。
─いろいろなジャンルで活躍されていますが、それぞれの場面でどのように気持ちを切り替えられていますか。
私は子どもの時から、家にいる時、友達といる時、習い事をしている時とすべて顔が違ったようです。場面ごとに自然と自分が作られていくみたいな感じでした。だから、今も意図的に切り替えてるつもりは全くありませんが、自分の中で仕事ごとに無意識にチューニングしているんでしょうね。時には、ガチガチのお笑いバトルのような番組になると戦闘モードになったり、ニュース番組になると真面目モードになったりとかはありますが。今、この場面に順応しなくちゃという感じですね(笑)
─お仕事で心掛けていることはありますか。
「3時のヒロイン」でテレビに出始めた最初の1、2 年は、3人それぞれが個性を積極的に際立たせようと努力していました。やはり、無名の状態から何もせず自然体で売れるというのは難しいし、テレビに出始めた頃、芸能界で売れるにはある程度プロデュースしない
といけないと思っていました。けれど今はむしろ、自然体で自分の魅力を出せるようにしたいという気持ちの方が強くなりましたね。
ただ、私はお笑い芸人なので、やはり、お笑いをおろそかにしたくないというお笑いへの忠誠心のようなものをいつも感じています。同様に、芝居の時は、共演する俳優の皆さんの中で、「楽しいな」程度の生半可な気持ちだけで挑んではいけないと心掛けています。自分はまだまだ駆け出しだし、どのジャンルでも専門的なレベルで何も極められてないから、各ジャンルとも少しずつでも深く突き詰めていけたらという気持ちです。
─いろいろなお仕事の中で、特に好きなお仕事はありますか。
芸人が歌や芝居をしたら、「芸人が何をしているの?」と言う方もいらっしゃいますが、私は芸人の「芸」ってお笑いだけじゃないと思っています。歌も演技も「芸」の一つ。私は「芸」に関することは何でも好きなんです。
でも、自分のベースがお笑いという意識は1ミリも失っていません。むしろ、お笑い芸人じゃないと思われたら悔しいほど、軸はお笑いにあると思っています。その上で、それ以外のことも、好きだと思えることは何でも挑戦していきたいです。
─魅力的な言葉選びはどのように身に付けたのですか。
今、振り返ると、子どもの頃から新しい言葉を覚えては使いたいタイプでした。国語が好きだったので知らない漢字に興味を持ったり、車窓から見える看板を読んでみたり......。読書も好きで、関大への行き帰りの電車に乗っている30分はいつも本を読んでいました。
実は、言葉で勝負してみようと思っていた時期がありました。私がかつて所属していたアイドルユニット「つぼみ」(2019年「つぼみ大革命」に改名)で活動していた時、作家さんに「めっちゃワードがおもろいから、お前はワードで行け」って言われたことがあって......。当時アイドルだったのに、お笑い専門劇場5upよしもと(2014年閉館)に引き抜かれそうになったんですが、大阪でお笑い一本でやるのが怖くて、上京しました(笑)。そうしたら、東京で同期の芸人に「女がワードで勝負するな」って言われたんです。ちょっと賢い言葉を使っただけなんですが、少し恥ずかしくなってしまってやめました。でも、自然に私の言葉が伝わっているのであれば嬉しいです。
─ストレスや緊張を感じられることはありますか。
今は自分自身にとって楽しいことしかしていないので、本当にストレスフリーです。テレビのバラエティ番組でも、ある程度、関係が構築された共演者の方々とお笑いをするのは自分の魅力が出せるチャンスでもあるので楽しさしかありません。
緊張は、ある意味、良いストレスとも言えます。生ぬるいばかりでなく、たまにはそういう緊張にも晒されるべきだと思っています。先輩、特に男性芸人と共演させていただく時はいまだに緊張しますね......。先日、一日中、街を貸し切って大喜利をするというテレビ番組の収録があったのですが、あれは相当な緊張の連続でした(笑)。
─福田さんはとてもエネルギッシュな印象を受けますが、その源は何ですか。
芸人として売れないと人生を巻き返せない状況にあった私は、まさに「退路を断つ」覚悟で芸人の世界に飛び込みましたので、そんな印象を受けられるのかもしれません。恐らく、恵まれた境遇にある人が頑張るエネルギーよりも、生きるために必死に頑張っている人の方が力強いエネルギーがあると思います。今日を生きることすら必死という人のエネルギーってとても大きいし、そもそも人間にはみな平等にそのエネルギーがあるはずなんです。だから、そのエネルギーをどのように引き出すかが大事なのかなと。挑戦への覚悟だったり、仕事への責任感だったり、仲間や家族に対する愛情だったり......。そういった複合的なものがエネルギーの源なのかもしれません。
─相方ゆめっちさんの休養で何か変化はありましたか。
以前は「3人で団結して何としてでもビッグになりたい!」と頑張っていましたが、相方の1人ゆめっちが体調不良で休養して、必ずしもそこに固執しなくてもいいのかなと思い始めました。みんな一筋縄ではいかない性格だし(笑)、個々の好きなことも微妙に異なっていますので、今はそれぞれがやりたいことを伸ばせたらいいんじゃないかな。そして、改めて3人で集まった時に、もっと大きな力になればいいなと思っています。
私自身も、以前はそれぞれの生かし方ばかりを考えていましたが、今はいい意味で自分のことしか考えないようになりましたね。相方の休養によって、自分自身のことをもっと考えるべきだったと気付けたので、そういった意味では相方にも自分にもターニングポイントになったのかもしれません。
─今後の方向性を教えてください。
「3時のヒロイン」としてテレビに出始めた頃は、芸人として生き残らないといけないという気持ちが強くて。まずはとにかく名前を覚えてもらうために、3人でいろいろな策を講じました。例えば、賞レースの決勝で披露するネタを決める時に、ある意味インパクト勝負のネタを用意して、優勝を逃したとしても、バズるほど強く印象に残せるようなネタを出して、「あのネタの人だ」と記憶してもらうための策ですよね。でも、これは売れるためだけにとった策なので、何か特別な策とかは全然ありません。
今は「3時のヒロイン」を皆さんに知ってもらえるようになってきたので、今後は一つひとつの仕事を丁寧にやっていくことですね。
─今後の抱負や関大生にメッセージをお願いします。
役に限らず芝居は何でも挑戦したいですし、自分がもともと所属していた「つぼみ」は愛着もあるので、脚本を提供し続けたいですし......。お笑いに限らず、いろいろ可能性を試してみたいですね。
今、在学中の皆さんはいろいろ乗り越えて関大生になったと思います。つまり、関西大学には「頑張る器」がある人しかいないはず! その器を武器にこれからも頑張っていきましょう!