第1回学術講演会を開催しました(講師:大阪大学社会技術共創研究センター招へい准教授、株式会社電通第6マーケティング局チーフ・リサーチ・ディレクター 朱喜哲氏)
2025年6月5日(木)、大阪大学社会技術共創研究センター招へい准教授、株式会社電通第6マーケティング局チーフ・リサーチ・ディレクター 朱喜哲氏をお招きし、学術講演会を実施しました。
「企業が倫理的であることはできるのか?:データビジネスにおけるELSI(倫理的・法的・社会的課題)対応の実践と理論」をテーマとして講演が行われました。
朱氏は、言語哲学(とくに推論主義)、ネオプラグマティズムがご専門で、アカデミアとビジネスの「協働/協働」に取り組まれております。またここ数年は、「位置情報データ」など新しいテクノロジーの活用に関するお仕事に携わっておられ、この講演でも、具体的な事例をご紹介いただき、参加学生は新しい科学技術を研究開発し、社会実装する際に生じうる、技術的課題を超えた課題(ELSI)についての理解を深めることができました。
政策創造学部では、様々な行事を実施しておりますので、是非ご参加ください。
<担当教員からのコメント>
新しい技術が開発され社会に導入されると、現行法で違法ではないにしても、「何かおかしい」と感じられ社会的に「炎上」を引き起こすことがあります。それに対処するために哲学や倫理を手掛かりとして検討する余地があります。さらに、利便性や無料サービスと引き換えに、携帯のアプリ等を通じて、日常的に利用者の入力情報や閲覧記録が巨大テック企業によって吸い取られて収益化されたり政治利用されたりする構図は、領主がAIによる監視に基づいて、農奴から無償労働とプライバシーを上納させる「テクノ封建制」とも表現されます。
加えて「G A F A分割論」に対抗して、ルールメーカーの独占的地位をデータ倫理や責任感の強調で乗り切ろうとする巨大テック企業の動きは、「最強の権力を持つ者は誰でも、その権力を過剰に行使する誘惑にますます駆られていく」というJ. S.ミルの言葉や、「権力は腐敗しがちであり、絶対的権力は絶対的(無条件的=必然的に)腐敗する」としたアクトン卿の言葉を重ね合わせると、楽観視できないものであることも分かるでしょう。


