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教員エッセイ

第30回日本語表記は難しい

商学部 教授 伊藤 健市(マネジメント専修)

 最近、The Great Workplaceという本を翻訳した(邦訳書名は『最高の職場』ミネルヴァ書房刊)。そのなかで、改めて日本語の表記は難しいと感じた。 日本語表記の難しさは、漢字、ひらがな、カタカナ、英文字を使い分けるところにある。ビジネスの世界でも、コンプライアンスやCSRが市民権を得ているが、それを法令遵守や企業の社会的責任と訳すかどうかである。日本語の場合、漢字は表意文字であるから、英語をできるだけ漢字表記にした方が意味はとりやすい。

 一方、アメリカナイズされたビジネス世界では、英語のカタカナ表記はあっという間に市民権を得る。読者を誰に想定するかによって、英語をそのままカタカナ表記するか、日本語訳を使うか、考えなければならない。これは、日本語訳に伴う固有の難しさであろう。

 今回の翻訳で難しいと感じた単語はcommitmentであった。コミットメントは、ごく一般的に使われるし、「コミットする」といった用例もある。でも、それを日本語に訳す際には、約束、貢献、献身、関与、傾倒など文脈に応じて使い分けないと意味がとれない。すべてコミットメントとすると訳業は容易だが、読者が意味を解するのに立ち止まらせるのは、良い訳とは言えない。最終的に、すべて日本語訳にしたが、それで良かったかどうかあまり自信はない。

 同じことは学生諸君にもある。私は、答案の誤字は減点すると宣言している。提出の前に一読せよという意味でそうしているが、「業績」をパフォーマンスとせずに、「業積」と書いて5点減点される学生が毎年相当数いる。減点を避けるためだけではなく、これからビジネスの世界に入っていく学生にも、業績とパフォーマンス、どちらを使うか、是非とも悩んでもらいたいものである。

『葦 №150号』より

2013年05月31日更新

※役職表記は、掲載当時のものです。

     

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商学部教授 伊藤 健市

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