1. 商学部トップページ
  2. 学部概要
  3. 教員エッセイ
  4. 第3回 「規律」と「自由」と「ゼミ水準表」

学部概要

教員エッセイ

第3回「規律」と「自由」と「ゼミ水準表」

商学部教授 中邑 光男(国際ビジネス専修)

 ゼミとは、学生が、個人とグループの両レベルにおいて、「主体的に学ぶ場」だと言えるでしょう。同時に、ゼミは「約束事に従って学ぶ場」としても機能しなければなりません。

 学生の主体性を重視しすぎると、彼らは自由と折り合いをつけられず、学びの方向性や焦点を見失います。他方、教師が約束事を強調しすぎれば、学生の創造性や独自性を損なってしまいます。要は「自由」と「規律」のバランスをとることなのです。

 私のゼミでは、このバランスをとるために「ゼミ水準表」なるものを用意しています。これは、ゼミの到達目標を示した表であり、私の指導の意義を学生が理解するための解説書なのです。

 例えば今年度3年生のために作成した「ゼミ水準表」は、学生が次の4つの力を身につけることを目標としています。

●ビジネスコミュニケーション力
(1)コミュニケーションの基本的な知識がある。
(2)ビジネスコミュニケーションの基本3領域に関する知識がある。

●英語力
(1)ネイティブスピーカーに通じる発声、発音ができる。
(2)シドニー・シェルダンの作品を読む力がある。

●情報処理力
(1)論理的な日本語を読み、要約し、論文に引用する力がある。
(2)達意の日本語を書く力がある。
(3)テキストエディタ、データベースなどの、文書作成で必要なソフトウェアを使う力がある。

●人間力
(1)グループ作業では、生産的に作業する力、特に段取り力がある。
(2)1人作業では、他人と異なる内容を表現する発信力がある。

 「ビジネスコミュニケーション力」については、学生は、基礎文献を読み、プレゼンテーションすることによりこれを習得します。プレゼンテーションは、ゼミの「プレゼン5原則」に従い、内容と方法の両面にわたる細かな指導を行います。ここでの指導は「規律」を強く意識したものです。

 「英語力」については、英語の音と声を出せるようにトレーニングします。語学は「座学」だけではなく、「立学」だと体感するために「ゼミ英語スピーチ大会」や同志社大学と関西学院大学の関連ゼミとの「3大学合同ゼミ」に臨みます。

 加えて、学生は、1年で20冊の英書を読み、書評をブログに書かなければなりません。ただし、本の選択は学生の自由にまかせ、ブログには、何を書いても構わないことになっています。感性豊かな文章をブログに書く彼らは、ほとんどの場合、「自由」をうまく管理する力を発揮するようになります。

 「情報処理力」については、論理的な日本語を書く練習に集中します。若者らしい感性に満ちた文章を書く彼らですが、明瞭平明なことばは、曖昧さを排除したことばを書く力は不足しています。このため彼らはブログに文章を書き続けながら、同時に、私から与えられるコメントを参考にして、長文を書き換えるという課題に取り組みます。

 「人間力」では、集団作業の際には、集団に貢献し、勤勉に、楽しく仕事できることを目指します。個人作業では、その段取りを考え実行する自己管理力、質の高い仕事を行うために創造性を磨くことを目標としています。「学生時代にできるだけ多くの間違いをすること」「他人と少しでも違う内容を言うこと」がモットーであり、のびのびとした発言が奨励されます。

 このようにわたしのゼミでは「自由」と「規律」のシームレスな融合を目指しています。しかし、学生に多くのものを求めすぎではないか、と思われるかもしれません。指導する私ですら、そう思うことがあるのですから。

 しかし、実際には、さらに多くのことを私に求める学生が珍しくないのです。彼らの情熱に応えるために、私は、毎年、ゼミ内容を更に挑戦的なものへと変更するつもりです。

 「ゼミ水準表」は毎年書き換える必要があるようです。

『葦 №134号』より

2007年12月22日更新
※役職表記は、掲載当時のものです。

教員エッセイ一覧へ戻る

商学部教授 中邑 光男

このページのトップへ戻る