Think&Act! 関大生 行動するたび、問いが増えていく―実践で生まれた問いを、関西大学で深める 社会学部 1年次生
池田いけだ 朱里あかりさん 

 高校時代、北海道農業の後継者不足という地域課題に向き合い、農業体験バスツアーの企画や合同会社設立など、次々と実践を重ねてきた池田朱里さん。しかし活動を続けるほど、「本当に社会課題はこれで解決できるのだろうか」という新たな問いに直面します。 実践だけでは届かない答えを求め、社会学を学ぶために選んだのが関西大学でした。現場での経験と大学での学びを往復しながら、自分にできる地域課題との向かい合い方を模索する池田さんに、その歩みを伺いました。

地域課題との出会い

—幼い頃から、興味を持ったことには積極的に挑戦する子どもでしたか?

 人見知りをしない性格で、初めての場所や集まりにも抵抗なく飛び込んでいく子どもでした。好奇心も旺盛で、「なぜだろう」と思ったことは、自分で調べたり、周りの人に聞いたりして、自分なりの答えを探そうとしていました。

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 一方で、分からないことがあると不安になる性格でもありました。その不安を解消したいという思いが、調べたり、人に話を聞いたり、実際に行動したりする原動力になっていたのだと思います。今振り返ると、その性格が今の探究心や行動力につながっていると感じています。
 中学生になると、アントレプレナーシップ(起業家精神)に興味を持ち、高校生がビジネスプランコンテストや地域課題の解決に挑戦していることを知りました。「私もそんな環境で学びたい」 そう思い、起業やボランティアなど、生徒の挑戦を積極的に応援してくれる札幌新陽高等学校へ進学しました。
 校長先生をはじめ、会社を経営しながら教壇に立つ先生方の姿を身近で見て、「まず行動してみる」という姿勢を自然と身に付けることができました。挑戦を応援してくれる環境が、その後の私の活動の原点になっています。

—北海道農業への関心を、行動へ

—なぜバスツアーを企画したのですか?

 バスツアーという実践を通して、多くの方から「農業に興味を持つきっかけになった」「参加してよかった」といった声をいただきました。活動そのものには大きな手応えがありました。

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高校での農業ボランティアの様子

 一方で、私の中には一つの違和感が残りました。「一度のイベントだけで、本当に北海道農業の課題は解決できるのだろうか」。イベントは成功しても、それだけで農業に関わる人が増えたり、地域の未来が変わったりするわけではありません。私が目指したかったのは、一時的な盛り上がりではなく、北海道農業の未来につながる変化を生み出すことでした。
 その後も農家の方や現地で働く外国人労働者の方々と話を重ねる中で、農業が抱える課題は人手不足だけではなく、後継者不足や流通、経営など、さまざまな問題が複雑に関わっていることを実感しました。活動を続けるほど、「社会課題を変えていくには、一度きりのイベントではなく、持続的な仕組みが必要なのではないか」と考えるようになりました。
 そこで、「農業と人を継続的につなぐ仕組み」を形にするため、自分たちの事業計画を客観的に評価してもらい、さらにブラッシュアップしたいと考え、高校生も参加できるビジネスプランコンテストに挑戦しました。最優秀賞をいただくことができましたが、それはゴールではありませんでした。「このプランは、本当に社会の中で実現できるのだろうか」。受賞によって自信を得る一方で、新たな問いも生まれたのです。

個人活動の枠を超えて、持続可能な事業モデルに進化

—事業プラン実現のために、どのようなことに取り組みましたか?

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北の高校生会議の集合写真


 ビジネスプランコンテストを通して、「社会課題を解決するには、アイデアだけではなく、実際に事業として継続していくことが大切だ」と強く感じました。一度きりの取り組みでは社会は変わりません。活動を持続させるためには、資金調達や運営体制、そして社会からの信頼が欠かせません。
 そこで、志を同じくする友人と合同会社「みいねる」を共同設立しました。会社として活動することで、農家の方々と連携した野菜マルシェの開催や加工品の販売、消費者アンケートの実施、「北の高校生会議Ⅱ」の主催など、活動の幅も大きく広がりました。
 さらに、「DO食農」プロジェクトへの運営や、国際スタートアップカンファレンス『SHAKE H』での登壇に加え、社会的企業について学ぶため、タイでのインターンシップにも参加しました。これらの経験を通して実感したのは、「外から見た正解」と「地域の人が本当に必要としていること」は必ずしも一致しないということです。
 地域課題には、教科書どおりの答えはありません。だからこそ、地域の声に耳を傾け、多様な立場の人と対話しながら、一つひとつ考えていくことの大切さを学びました。一方で外国の方々と議論を重ねる中で、自分の英語力や専門知識の不足も痛感しました。「もっと深く対話できる力を身につけたい」。その思いは、私がさらに学びを深めたいと考える大きなきっかけになりました。

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(左)高校時代のタイ留学(社会的企業を学ぶためのインターン)(右上)合同会社みいねるを設立したお二人(右下)国際スタートアップカンファレンス『SHAKE H』


—池田さんが活動に取り組む中で大切にしていることは?

 人と人がつながり、お互いに学び合える場をつくることです。それが私の活動の軸になっています。
 高校時代は「まずは行動してみよう」という気持ちで、目の前の課題に飛び込み、援農ボランティアをはじめ、さまざまな活動に取り組んできました。その中で私が一番大きく変わったのは、多くの人との出会いでした。 農家の方、地域で活動されている方、企業の方、行政の方、大学の先生、同世代の仲間──。

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北の高校生会議、会議風景

 それぞれ立場が違うからこそ、同じ課題に対する見え方や考え方も違います。話を聞くたびに、「そんな考え方もあるんだ」と、自分の視野が少しずつ広がっていきました。
 そして、不思議なことに、人と出会えば出会うほど、新しい問いも次々と生まれるようになりました。だから私は、課題を一人で解決しようとは思っていません。人とつながり、お互いに学び合うことで、新しい視点や可能性が生まれる。そんな場をこれからもつくっていきたいと思っています。

—高校時代の活動から得られた学びはありましたか?

 現場には本や教室では得られない多くの学びがありました。一方で、実践を続けるほど、『社会課題の解決策は簡単には見つからない』ということも実感しました。
 北海道農業の人手不足という一つの課題にも、少子高齢化だけでなく、外国人労働者との言葉や文化の違い、流通や経営など、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。だからこそ、地域の人だけでも、外部からの支援だけでも解決できません。異なる立場や背景を持つ人たちがつながり、お互いの考えを持ち寄りながら、一緒に答えを探していくことが大切なのだと感じました。

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 高校時代は、「まず行動すること」を大切にしてきました。しかし、その経験を重ねる中で、行動するほど新しい問いが生まれ、自分の知らないことの多さにも気づくようになりました。だから私は、実践を続けるだけでなく、社会学という理論的な視点から地域課題を学び、現場での経験と結び付けながら考えを深めたいと思うようになりました。

「もっと学びたい」――関西大学進学を決意

—地元北海道を離れ、関西大学に進学した理由を教えてください。

 高校時代の実践を通して、私の中には一つの確信が生まれました。「地域課題は、行動するだけでは解決できない。」人手不足、後継者不足、外国人労働者との共生、流通や経営など、北海道農業が抱える課題は想像していた以上に複雑でした。だからこそ、現場での経験だけでなく、社会学という理論的な視点から課題を捉え直し、実践と結び付けながら考えたいと思うようになりました。

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 そんな時に出会ったのが、関西大学社会学部社会システムデザイン専攻の草郷孝好教授でした。実践活動と研究を往復しながら地域課題の解決に取り組む「アクションリサーチ」という考え方は、私が目指していた学びそのものでした。「この先生のもとで学びたい」。そう思い、自分が抱えていた疑問やこれまでの活動について草郷先生へメールを送りました。丁寧な返信をいただき、この先生のもとなら、自分が抱え続けてきた問いをさらに深められると感じ、関西大学への進学を決意しました。また、北海道農業は北海道だけの問題ではなく、日本の食や地域社会全体につながる課題です。だからこそ、北海道という地域を一度外から見つめ直し、多様な価値観や社会問題に関心を持つ学生たちと学びたいと思いました。教職課程が充実していることや、多様な学生が集まる環境も、その思いを後押ししてくれました。

—実際に関西大学社会学部に入学してみていかがですか?

 入学して改めて感じたのは、「実践と学びを行き来できる環境」が本当にあるということです。草郷先生の専門科目は1年次ではまだ受講できないのですが、週に1回の基礎研究の授業で、偶然にも草郷先生が担任となりました。4月最初の授業で「メールをくれた子だよね」と声を掛けていただき、覚えてくださっていたことに驚きました。
 そのほかにも、草郷先生が開催されている「地元ぶらぶら学」に参加し、地域づくりの考え方や実践について学んでいます。

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 また、5月には、ゼミ生の皆さんと一緒に、吹田市の地域活性化イベント「まるっとマルシェ」の運営にも携わりました。高校時代は北海道で活動してきましたが、今は関西という新しい地域で地域づくりを学ぶことで、地域が違っても共通する考え方や、人との関わり方があることに気付かされています。こうした経験を積み重ねながら、北海道での活動にも生かしていきたいと思っています。

次の挑戦、その先の未来へ

—関西大学でどのようなことを学びたいですか?

 関西大学の学びでは、異なる国や文化、世代、立場の人たちが、どのように協力しながら地域課題を解決していくのかを学びたいと思っています。
 高校時代の活動を通して、地域課題は一人では解決できず、多様な背景を持つ人たちが対話しながら、ともに考えることが大切だと実感しました。だからこそ、大学でもさまざまな価値観を持つ人と積極的に関わり、自分自身の視野をさらに広げていきたいと思っています。
 特に、北海道の農場で外国人労働者の方々と接する中で、言葉や文化の違いから生まれるすれ違いを目の当たりにしました。
 「もっと直接対話できる力があれば、見えてくるものがあったのではないか。」そんな思いから、ESSで英語力を磨くとともに、ドイツ語にも挑戦したいと考えています。

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2026 Do食農イベントレポート

 また、大学では理論だけでなく実践も大切にしたいと思っています。関西の地域を実際に訪れ、地域課題に取り組むプロジェクトや研究活動に参加しながら、現場で得た経験を学びへ、学びをまた実践へとつなげていきたいです。
 北海道を離れたことで、地元の課題を少し距離を置いて見つめられるようにもなりました。
 その視点を生かしながら、「北の高校生会議Ⅱ」や「DO食農」の活動も継続し、北海道と関西、実践と学びを往復しながら、自分なりの地域課題への向き合い方を探していきたいと思っています。

—最後に今後の目標をお聞かせください。

 高校生の時は教師になりたいと思っていました。しかし途中から大学卒業後すぐになるのではなくて、地域の問題や研究を深めるために大学院への進学やなども考えるようになりました。 私なりの専門性を身につけた上で、いつか学校で誰かが学びや行動を始めるきっかけをつくれるような仕事に携わりたいと思っています。その一つの形として、教員免許も取得したいと考えています。一方で、北海道農業の課題解決は、私の原点でもあります。
 これまで出会い、支えてくださった農家の皆さんや地域の方々とのご縁は、これからも大切にしていきたいです。

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「北海道どうするコンソーシアムワークショップ」の第1回目。
テーマは、北海道の食課題を担う若手のプレイヤーを育てること

—関西大学を目指す皆さんへのメッセージをお願いします。

 この記事を通して、北海道農業や地域課題に少しでも興味を持ち、「自分も何かできることがあるかもしれない」とか「一緒に課題解決に取り組んでみたい」と思ってもらえるとうれしいです。地域課題は、誰か特別な人が解決するものではなく、一人ひとりが自分事として関心を持つことから始まると思っています。私自身も、高校時代に「まずはやってみよう」と一歩踏み出したことが、たくさんの出会いや学びにつながり、新しい問いを与えてくれました。関西大学には、自分の興味や関心を深め、多様な人と出会いながら挑戦できる環境があります。

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 答えを見つけるためではなく、新しい問いと出会うために学ぶ。これからも現場で生まれた問いを大切にしながら、自分らしい形で関わり続けていきたいと思います。
 そんな大学生活も、とても面白いと思います。だから皆さんも、今ある興味や疑問を大切にしながら「まず一歩踏み出してみること」を大切にしてください。その一歩が、思ってもみなかった未来につながっているかもしれません。

社会学部 1年次生
池田いけだ 朱里あかりさん

北海道 札幌新陽高等学校出身