Think&Act! 関大生 陸上の魅力は「自分に勝つ」こと ライバルはいつも自分自身 商学部 3年次生
前田 彩花(まえだ あやか)さん 

 「走ることは自分との戦い」と語る前田さん。関西大学陸上競技部でストイックに努力を重ね、入学当初から抱いていた夢 — 学生のオリンピックとも称される「FISUワールドユニバーシティゲームズ2025」への出場を果たし、団体戦で金メダルを獲得。挫折を乗り越え、大きく飛躍した彼女の強さの源に迫ります。

父と走った楽しい時間が陸上人生の原点に

—陸上競技を始めたきっかけは?

 子どもの頃、ジョギングが趣味の父と毎日のように走っていました。父との日課で育まれた「走ることが大好き」という気持ちが、私にとっての原点です。
 中学時代はバスケ部に所属していましたが、陸上の県大会に出場する機会がありました。そのときに競技としての楽しさを実感し、高校から陸上を本格的に始めて「もっと強くなりたい」という思いが芽生えました。

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—陸上競技の魅力はどんなところですか?

 中・長距離は「走る」というシンプルな競技だからこそ、自分との闘いです。妥協せず練習に向き合い、タイムや順位として結果が出たときには、自分に勝てた喜びを味わうことができます。その喜びが次の挑戦への原動力です。常に、「まだ結果も残せていないのに、ここで妥協するのか!?」と自分に問いかけながら走っています(笑)。

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学業と競技の両立を目指した関西大学での挑戦

—関西大学の陸上競技部を選んだ理由を教えてください。

 大学で陸上を続ける際、学部が限定されるケースも多い中、関西大学では学業と競技の両立を目指す「SF入試制度(スポーツ推薦)」がありました。将来、組織管理やマネジメントに関わる職業に就きたい思いがあったので、商学部で学びながら競技に打ち込める環境があることが決め手になりました。陸上競技部の体験練習では、引き締まった雰囲気の中で練習する先輩たちの姿に憧れ、自分自身も成長できる可能性を強く感じて入部を決意しました。

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—高校と大学の陸上競技の違いは?

 高校時代に決めた「誰よりも長い時間、練習をする」という自分なりのルールは、今も変わらず守り続けています。大学では、メイン種目の走行距離が倍以上に増えたので、食事管理や体づくりの重要性がより高まりました。国内外への遠征による環境の変化や、大会前の体調管理も特に意識しています。大会後に、大好きなお刺身を食べることがいちばんの楽しみですね。

251003_kt_think03.png 武田夏実 中長距離ブロック統括コーチ 兼 駅伝監督と

—学業にはどのように取り組んでいますか?

 大会と試験期間が重なる際は、現地にテキストを持参し勉強するなど工夫しています。現在は商学部・マネジメント専修の原拓志教授のゼミで、組織やイノベーションに関する研究を進めています。組織運営やモチベーションについての研究は、チームの士気向上や自身の競技への向き合い方にも役立っていると感じています。

—競技を続ける上で心がけていることはありますか?

  「身体を休めること」も大切にしています。休日は寮で体を休めつつ、DIYをしたり、100円ショップのグッズを使って友人の誕生日プレゼントを作ったり、YouTubeでドラマを見たりしてリフレッシュしています。

挫折を越えて掴んだ、代表の座と未来への一歩

—これまでで一番印象に残っている試合について教えてください。

 今年1月に開催された、関西学生ハーフマラソン選手権大会です。優勝を狙って臨むも、4位という悔しい結果に終わりました。加えて、大きなケガで2週間走れなくなり、精神的に燃え尽きてしまいました。私の中で、「優勝して、ワールドユニバーシティゲームズへの出場を決める」という想いが強すぎて、焦りから無理な練習を重ねてしまったことが原因でした。

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—どのように気持ちを切り替えたのですか?

 走れない日々は、これまでにないほど辛いものでしたが、同時に心を休める時間にもなり「もう一度走りたい」という気持ちが芽生えました。大きな支えとなったのは家族の存在です。どんなに忙しくても走り続けてきた父の姿は、私にとって原点そのもの。心が折れそうなときにかけてもらった「辞めてもいいよ」という言葉が、私の心を軽くし、また頑張りたいと思わせてくれました。

251003_kt_think08.png 親子で初めて襷をつないだ「愛知駅伝」での思い出の写真

—精神的に大きく成長できた時期だったのですね。

 挫折を乗り越えたことで、焦らず「今できる最善を尽くす」ことを意識できるようになりました。

  実は、不本意な結果に終わった選手権で履いていたシューズは、両親がプレゼントしてくれたものだったんです。その後しばらくは封印していましたが、「苦しい思い出ではなく挑戦を乗り越えた証にしたい」と自分を奮い立たせ、4月の大会本番で履くことにしました。
 そして迎えた、ワールドユニバーシティゲームズの代表選考を兼ねた日本学生陸上競技個人選手権大会。10,000mで優勝して日本代表への選出が決まり、達成感と喜びはこれまでにないものでした。信じて待っていてくれた監督、友人、家族、すべての人への感謝の気持ちでいっぱいです。

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 大学進学後、実家を離れたため父と走る機会は減りましたが、ワールドユニバーシティゲームズの後に、母と兄も、父と一緒に走り始めたと聞き胸が熱くなりました。家族が「走ること」でつながっていることに、大きな喜びを感じています。子どもの頃、父とラストスパートを競い合った中で培われた負けず嫌いな性格が、今の自分の強さにつながっていると思います。

251003_kt_think09.png 家族との時間でリフレッシュ!

まだまだゴールは先 さらなる挑戦は続く

—世界の舞台を経験したうえで、今後についてどう考えていますか。

 ワールドユニバーシティゲームズでは、日本代表チームの一員として金メダルを獲得できたものの、個人としては満足のいく結果を残すことはできませんでした。世界大会を経験し、海外の同世代選手との差は能力そのものではなく、日々の練習量や競技への向き合い方にあると実感しました。その現実を真摯に受け止め、次は個人でのメダル獲得を目標に、さらに成長したいと考えています。

 また、10,000mでの優勝を経て、次のステップとしてフルマラソンに挑戦することも視野に入れています。長距離に耐えられる体づくりを進めるとともに、卒業後も競技を続けていく道を探っていきたいです。

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FISUワールドユニバーシティゲームズ2025で、男女ともに団体金メダルを獲得したハーフマラソンチーム(前列左端が前田さん)

—後輩へのメッセージをお願いします。

 「強くなりたい」という気持ちがあれば、いつからでも変わることができます。自分に必要なことを分析し、一歩ずつ着実に進んでください。私自身もまだゴールにたどり着いたわけではなく、葛藤しながら走り続けていきます。みなさん、ぜひ諦めず挑戦し続けてください。

商学部 3年次生
前田 彩花(まえだ あやか)さん

愛知県 愛知高等学校出身