Think&Act! 関大生 数理的な心理学の研究に励み、データサイエンティストを目指す 心理学研究科 心理学専攻
博士課程前期課程 1年次生
本田 暁空(ほんだ あきたか)さん 

心理学を数理的に探究する道 2つのゼミを両立し大学院へ

—心理学専攻として大学院に進学したきっかけは?

 社会学部では社会学科心理学専攻で、生理心理学について学んでいました。3年次には生理心理学の研究を行っている福島宏器教授のゼミに所属し、『気分と左右脳半球の非対称性が階層情報処理に与える影響』というテーマで卒業論文を執筆しました。
 現在取り組んでいる数理・統計の道へ進んだきっかけは、福島教授の勧めで山下直人准教授の講義を受講したことです。そこで、心理学を"数理的に探究する面白さ"に出合い、「もっと深く学びたい」と感じました。その思いから山下准教授に何度もお願いし、ゼミへの参加を許可していただきました。4年次には福島ゼミと山下ゼミの両方に所属し、卒業後は大学院へ進学。現在は、数学を用いて既存の統計分析手法を拡張し、推定精度を向上させるための統計解析手法を開発しています。

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—所属する山下ゼミの研究内容を教えてください。

 山下ゼミでは、「心理学的・社会学的な事象を数理・統計的に分析する」という学内でも珍しいアプローチで研究に取り組んでおり、私たちはその第1期生として活動を始めました。
 ゼミでは、心理学で一般的に用いられている統計解析法を再検討し、より効率的で実用性の高い手法の開発に挑戦しています。現在は、週に1度のゼミで研究の進捗や成果を発表し合い、それ以外の時間には学会・発表会の準備やサポート、自主学習に励んでいます。

 私の研究テーマは「構造方程式モデリング」です。これは、数値化が難しい複数の概念の間にある因果関係を推定し可視化する手法です。例えば、テストの成績をもとに「文系力」や「理系力」といった抽象的な能力を捉えようとする場合、国語や数学の点数=データを用いて、「国語の点数が高い人は、数学の点数も高い傾向がある」と推定し、「理系力を伸ばすためには、国語力を高めることが重要である」といった因果構造を導き出します。こうした分析は、教育現場や人材評価などにおいて、数値に現れにくい能力を理解し課題解決に活かす上で上で有用だと考えています。

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「夢中になれること」を求めて試行錯誤した大学生活

—2つのゼミを両立するのは大変だったのでは?

 そうですね。大学生活の中で、最も忙しかったのが4年次でした。特に山下ゼミでは、3年次に学ぶべき基礎知識が自分には不足していたため、それらを独学で補う必要がありました。高校時代は数学が得意ではありませんでしたが、大学で数学の定義・理論・証明といった数理的な考え方に触れるうちに、「数学は楽しい」と感じるようになりました。

 ただ、数理の勉強はさまざまな書籍を使って独学で進めてきたため、「これはいける!」と思ったアイデアが既存の手法に含まれていることに気づき、悔しい思いをしたこともありました。また、研究に必要なシミュレーションのプログラミングにも苦労しました。 一時はIT系企業を中心に就職活動を行っていましたが、「多変量分析手法など数理・統計の研究により深く没頭したい」という思いが強まり、大学院進学を決意しました。

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—本田さんにとって数理の魅力とは?

 数理研究の醍醐味は、「完璧な手法が存在しないからこそ、自分の視点で自由に探究できること」にあると感じています。独学で学んできたために知識の偏りが生じ、何を学ぶべきか分からなくなることもあり、たびたび壁にぶつかってきました。

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 そんなときは、「興味のあることにはとにかく挑戦し続ける」という姿勢で、一つひとつの困難を乗り越えてきました。また研究を通じて、物理現象から人間の行動といった人文科学的な現象まで、数式で近似し説明できるという面白さに気づき、身のまわりのさまざまな出来事をシステマティックに捉える視点が養われました。

 関西大学に入学してからは、1年次の頃から「何か夢中になれること」「意味のあること」を見つけなければならないという焦りを感じていました。 常に「自分のためになる何か」を求めて、サッカーや音楽など、さまざまなことに挑戦してきました。 そうした試行錯誤の末に、最終的に「数理の研究」という自分の情熱を注げる対象に出合うことができました。

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データサイエンスで社会課題の解決に挑む

—今後の目標は?

 現在は、11月に開催される分類学会での発表に向けて準備を進めており、まずは「研究成果を出すこと」を当面の目標にしています。研究発表を通して、査読(専門家による評価や検証)付きの学会誌に自分の論文を掲載できればと考えています。
 私の将来の夢は、データサイエンティストとして社会に貢献することです。データを活用して、身近な課題や社会的な問題に対する解決策や改善策を導き出し、社会に役立つデータ解析に携わりたいと考えています。特定の企業や団体に限定されることなく、例えば電力・エネルギー分野における需要予測など、暮らしや社会システムの最適化を追求する分野で活躍したいと思います。

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—後輩へのメッセージをお願いします。

 興味のあることにはぜひ積極的にチャレンジしてください。さまざまなことを試す中で、自分の「好きなこと」や「熱中できること」が見つかれば、きっと充実した学生生活を送ることができるはずです。私自身も数理の研究を通して、「目標に向かって試行錯誤すること」の大切さを実感しました。皆さんにも、自分にとっての「何か」を諦めずに探し続けてほしいと思います。

心理学研究科 心理学専攻
博士課程前期課程 1年次生
本田 暁空(ほんだ あきたか)さん